導入事例

株式会社 平沢製餡所様

360度フィードバックは経営の「ツール」。使い方次第で厳しいコメントも従業員の成長に繋げられる

株式会社 平沢製餡所

取締役 平沢 公教 様

  • 次世代リーダー育成

昭和25年創業の株式会社平沢製餡所様は、素材と製法にこだわった生あん・練りあんと和菓子の製造販売を中心に事業を展開されています。2024年には、新製品の開発により新たに洋菓子店との販路を構築し「東京都経営革新優秀賞」の奨励賞を受賞されました。これは東京都の「経営革新計画」に基づいて積極的に新事業に取り組み、経営の向上を果たした企業を表彰するものです。2023年、初めて360度フィードバックを導入するにあたって「CBASE 360°」を選んでいただき、2年連続で実施されました。文化になかった仕組みを導入する上で大変だったこと、工夫されたことを伺いました。

経営者の言葉より、身近な人の言葉の方が届くことがある

ーー360度フィードバックを導入された背景をお聞かせください。

平沢様:
時代とともに従業員の意識が変わって、職場でのコミュニケーションの取り方に変化が生じています。昭和・平成のころにあった「飲みニケーション」のような、仕事とプライベートが一緒くたになった感じは好まれなくなってきています。従来の方法でコミュニケーションが取れなくなると、部下や従業員の気持ち、日頃どんなことを考えているのか、仕事に何を求めているのか、といったことが理解しづらくなります。それは会社の定着率だったり、期待していた若手が長く続かずに辞めてしまうなどの事象として現れていたので、問題意識を持っていました。

ーー従業員の皆さんが「今、何を感じているのか」「仕事に対してどう思っているのか」を浮き彫りにするために導入されたのですね。それは会社に対しての気持ち、ということでしょうか?

平沢様:
会社に対してもありますが、従業員同士、お互いにどう思っているか、ですね。星野リゾートの星野佳路さんは、上司に褒められるよりもお客様に褒められた方が素直に受け止められるし、モチベーションにつながる、と話しています。厳しいフィードバックについても同様で、例えば経営者が旅館の料理の質を改善しようと思ったら、お客様アンケートを取って、「お料理のこういう点を改善してほしい」というアンケート結果を見せた方が、経営者が指摘するより素直に改善に励んでくれる、と。

この話を自社に置き換えると、私が直接指摘して従業員の成長を促そうとするよりも、周囲の仲間が「あなたのことをこう思ってるよ」と言い合う方が、みんな素直に受け入れて行動に移しやすいのでは、と思ったのです。お客様アンケートではなく、従業員同士のアンケートのようなものとして考えてみたのが始まりですね。

拒否反応が出てしまう人を無理に参加させない

ーー360度フィードバックを導入するにあたって、どんな点に留意されましたか?

平沢様:
初年度は趣旨をしっかり伝えました。より働きやすい、よりよい会社にするために、360度フィードバックをやろうと思うんだ、と。ただ、会社としても初めての試みで、従業員のみんなもやったことがないものだから、どうなるかは分からない。それでも賛同してもらえるのであれば一緒にチャレンジしよう、と話しました。その時点で不安を感じたり、拒否反応が出てしまう人は、無理にフィードバックの対象者にならなくてもいいことにしました。

2年目は、スタンスはそのままで、対象人数を増やしました。全社的な取り組みとして一律で実施したわけではないので、フィードバックを受け取った人たちはみんな前向きに捉えて業務に励んでいますね。

ーーフィードバックの対象者を、部署や役職などではなく「趣旨に賛同できるか否か」という個人の基準で絞っている点がユニークですね。

平沢様:
もともと多面的な評価が会社の文化として根付いていたら別ですが、私たちの場合は途中から取り入れた仕組みなので、馴染めない人も当然いるだろうと思いました。馴染めない人を無理やり動かそうとするのではなく、この時点で趣旨に賛同できる人を次世代のリーダーとして育てていく、という選択をしたのです。

急には馴染めない人たちも、業務はしっかり担ってくれているわけです。それをここで否定する必要はないですし、この取り組みをすぐに受け入れられなかったとしても、それぞれのできる範囲でがんばってくれればいい、という考えです。

2度の実施を通じて、360度フィードバックは経営者の理想を実現するための「ツール」だと思いました。なので、経営者が意図を持って実施することが重要ですね。

周囲からの指摘とは別に「働きぶりに感謝している」と伝える

ーー「ツール」として有効だな、と感じたエピソードを教えてください。

平沢様:
さきほどフィードバックを受け取った人はみんな前向きに捉えている、と話しましたが、中には厳しい指摘も含まれています。対象者の中で一人、みんなから厳しい指摘をもらって精神的に閉じこもってしまった従業員がいたのですが、菊地さんにも面談してもらって、その後で私も直接話して、そこで変化が見えました。

私からは「360度フィードバックの結果、厳しい指摘があったことは知っているけれども、何よりもまず毎日休むことなくピシッと現場に来てくれる、それが素晴らしい。製造メーカーはチームだから、休まず現場にきて、自分の職務を全うしてくれる、そのことに一番感謝してる。多少厳しいフィードバックがあったって、君は合格点だからね」という話をしたのです。そうしたら、少し顔が明るくなったんですよ。

ーー上司や経営層から具体的なフォローがあると、厳しいフィードバックにも向き合えそうですね。

平沢様:
厳しいフィードバックがあった上で、どう対応するかが重要です。360度フィードバックは、あくまでもその時点での、周囲から集まったフィードバックということですから、それを使って、その後の成長をどう促すか。管理職や経営者の腕の見せどころです。

経営層こそ厳しいフィードバックを受け止めること

ーー360度フィードバックの効果は感じられましたか?

平沢様:
はい。効果はありましたし、実施できてよかったと思っています。まず、会社として費用と時間をかけて、外部から専門家にも来てもらって、ここまでして会社をよくしようとしているんだ、本気なんだ、ということが伝わったからです。この点については、360度フィードバックに対して拒否反応が出てしまった人にも伝わっていると思います。

私自身、初年度は本当に厳しいフィードバックをもらいました。あの辛辣なコメントが、2年目にはかなり軽減されました。それはやはり、1年目にあれだけはっきり厳しいことを言ったのに、それに打ちのめされることなく2年目も同じことを目指して実施するということは、この人は本気なんだ、と思ってもらえたから。その気持ちというか、共感が、少しずつ社内に波及していったのだと思います。

ーー対象者の方々の心理的変化についてはいかがでしょう?

平沢様:
より前向きに仕事に取り組んでいるように見えます。1年目はまだ慣れていないのもあって、多少ぎこちない部分もありましたが、2年目のフィードバックを終えてからは、少し角が取れたというか、「みんなで取り組むんだ」という雰囲気が醸し出されてきた気がします。360度フィードバックにチャレンジしてよかった、と強く思ってくれた人たちからの波及効果が感じられますね。

ーー対象者を絞っているからこそ、波及効果は重要ですよね。

対象者以外にもよい影響が広がっていく

ーー最後に、360度フィードバックを実施して感じたことや、私たちシーベースに期待していることがあれば、ぜひお聞かせください。

平沢様:
360度フィードバックは、社内の状況を把握する手段としてフルスペックのサービスだと思っています。年に一度の健康診断のように活用しながら、その手前の段階で、もっと手軽に、且つタイムリーに従業員の気持ちのちょっとした変化を把握できるとよりよいのではと感じました。

また、実施するにあたって、やはり全員を対象にする必要はないと実感しました。評価に連動させるのであれば全員に対して実施しなければいけませんが、目的が会社の雰囲気を変えていくことなら、まずは同じ気持ちでチャレンジしてくれる人だけで始めてみるのもいい。そこから対象者以外にもよい影響が広がっていくので、十分に効果はあると思います。

ーー360度フィードバックを導入する際に、誰を対象者に設定するのか悩まれる企業様は多いと思いますが、今回のお話が大変参考になるかと思います。本日は具体的な実施内容や社内の変化までお聞かせいただき、ありがとうございました。


インタビュアー

菊地 優作 コンサルティンググループ コンサルタント
オクラホマシティ大学大学院終了後、日系、英国系の人材育成と組織開発の会社にてマネジャーとして勤務。事前のコンサルティングからワークショップの実施、事後の報告そして今後に向けたご提案までお客様と伴走する。

 

 

株式会社 平沢製餡所
事業内容:生あん・練りあんの製造販売/フルーツ加工品の製造販売/和菓子の製造販売
設立:平成28年7月1日
社員数:25名

導入事例一覧に戻る

CBASEサービスに関するお役立ち資料・
お問い合わせはこちら

お問い合わせ
CBASEサービス導入をご検討、
ご質問のある方

お問い合わせする

お見積もり
実際にCBASEサービスを
利用してみたい方

お見積もりのご依頼

お電話でのお問い合わせ
03-5315-44779:00-18:00(土日祝を除く)