導入事例
クオリカ株式会社様
経営理念の浸透のために、トップ自ら実践。回答者が安心してフィードバックできる仕組みをつくる
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クオリカ株式会社
経営企画本部 人事部長 林 奈津子様(左) 主査 津留 佳代子様(中央)執行役員 倉谷 有紀様(右)
- 経営理念の浸透
クオリカ株式会社様は世界的建設・鉱山機械メーカーであるコマツ(株式会社 小松製作所)の情報システム部門からスタートし、現在はTISインテックグループの一員となり、製造業や外食/小売業、サービス業の顧客を中心に情報システムの企画・設計、コンサルティングから運用・保守までを担っています。2023年、社長に就任した阿久津晃昭氏の方針で360度フィードバックを導入。2度の実施を経て見えてきた社内の変化と、率直なフィードバックを得るための工夫を伺いました。
職位間の働きがいに対するギャップを解消したい
——360度フィードバックを導入された背景をお聞かせください。
2023年に現社長の阿久津が就任し、360度フィードバックをやろうと呼びかけたことがきっかけです。もともとあった社内の課題として、上司に対して意見を言ったり意思表示をする場面が少なく、部下からのフィードバックが分かりづらい、という点がありました。部下がどう感じているのか分からないので、マネジメントの質の向上にもうまく繋げることができなかったのです。
実際に調査してみると、部門長層以上は「働きがい」のスコアが高いのですが、その下の層は大きくポイントが下がっていました。まずは率直にものが言えるオープンな環境をつくり、上司と部下の信頼関係を構築し、部門長層以下のメンバーの働きがいスコアを上げていくことが必要だと感じました。
——調査結果としてスコアにギャップがあったのですね。実際に社内の様子を見ていて、上の立場の人に意見が言いづらいのではないか、と感じる場面はあったのでしょうか?
津留様:
部署によって雰囲気は様々ですが、業績状況や慣習によって、全体方針を共有する場などでメンバーからの質問や意見・声を挙げにくい雰囲気を感じる印象はありました。
「360度評価」という言葉が招く誤解
——360度フィードバックを導入するにあたって意識していたことは何ですか?
津留様:
気を付けたのは、運営側からのメッセージとして「これはフィードバックであって、評価ではない」と繰り返し伝えたことです。トップが発信するコメントや事務局からの案内、サーベイ中の案内文などでは必ず書くようにして、かつ事前の説明会においてもその点は強調して伝えていました。一般的に「360度評価」という言葉の認知度が高く、社内でも何度か聞くことがあったので、「これは評価ではない」と言い続けていく必要があると感じたのです。
——津留さんが説明会の冒頭で必ず「これは評価ではない」と強調されていたのが私も印象に残っています。そのほか運営面で工夫された点はありますか?
津留様:
工夫したのは、回答の匿名性を強めたことです。回答者の人数が少ないと、誰が答えているのか絞りやすくなり、匿名性が薄れてしまいます。そこで、初年度から回答者の人数をミニマムよりも多めに設定して案内しました。
2年目はフィードバックを受ける対象者を拡大したので、それにともない回答者も増えて少し負担になってしまったかもしれないのですが、やはりできるだけ安心して回答してほしいですし、フィードバックすることにリスクがない仕組みにしたい、という思いがありました。回答率は98%と高かったので、皆さん真摯に受け止めて対応してくださったな、と感謝しています。
役職を問わず、業務の様子をよく知る人を回答者に
——2年目を迎えて、運営面で工夫されたことや改善されたことがあれば教えてください。
津留様:
初年度に驚いたのは、回答者の設定について「職位は自身から2階層以内」という目安を出したところ、2階層以上離れたメンバーは回答者の対象に入らないのか、と問い合わせがあったことです。つまり「私もフィードバックを返したいが、回答できないのか」という声が挙がったんですね。360度フィードバックに対する社内の関心の高さを感じました。
そのような経緯があり、2年目は「実務の様子をよく知っている人であれば役職は問わない」とあらかじめ案内しました。職位に関係なく、普段の業務をしている姿を知っている人を回答者に選べたことで、縦・横・斜めのフィードバックを送り合えるようになりました。「私も回答したかった」という声は2年目には挙がりませんでした。
——林さんはご自身も回答者としてフィードバックをされていますが、回答する側になって気づいたことや感じたことはありましたか?
林様:
自分自身が回答する側にもなったことで、どんな人に回答を依頼するとより的確なフィードバックがもらえるのか、コツを掴めたところはありますね。やはり普段一緒に仕事をしていない人に対しては具体的なフィードバックができないですし、漠然とした印象で回答するのはよくないと感じました。2年目は自分の働く姿をよく知っている人に回答を依頼できたので、的確なフィードバックを得られるようになったと思います。
津留様:
長光さんとも何度かお話ししたことがありますが、本当はこうした施策がなくても、言いたいことを適切な表現で、面と向かって伝え合える風土が理想ですよね。日常業務の中でお互いの改善点を伝えあうようなコミュニケーションはなかなか取れないので、360度フィードバックがその練習や経験になり、やがて社内に定着したらいいなと考えています。
——皆様のそうした思いは、施策の細部に宿っていると思います。私たちもその思いを念頭において、今後も支援させていただきます。
前年のフィードバックの効果が見えてきた
——360度フィードバックの導入後、社内にはどのような変化がありましたか?
倉谷様:
フィードバックを受けたことで、行動を変えようとする意識が芽生えたのは間違いありません。いきなり全てを変えられるわけではないし、どの程度の変化があるかは人にもよりますが、少なくとも意識するようになった。360度フィードバックを実施した効果だと思います。
初年度のフィードバックを受けて、周囲から「変わったよね」と言われる人が出てきています。2年目はフリーコメントに初年度からの変化を問う設問を追加したので、そのコメントの内容からも行動変容の傾向がうかがえます。
——行動変容の兆しが見られるのは嬉しいですね。フィードバックを受けて、対象者の皆さんの内面に変化があった証です。
倉谷様:
おっしゃる通りです。グループの基本理念である「OUR PHILOSOPHY」の中で、私たちはオープンであることを掲げています。他者に対して寛容・寛大であること、率直であること、自身に不利益なことであっても明らかにすべきことは決して隠し立てしないこと。会社全体がオープンであるためには、社長を筆頭に経営層がその姿勢を示さなければなりません。そこで、まずは経営層の行動変容を促すことを目的に360度フィードバックを導入したわけです。
施策を始めて2年目になり、1年目にフィードバックの対象だった役員・部門長層に変化が起こり始めています。2年目は対象者を統括マネジャー層にまで拡大したので、その人たちが行動変容を起こせるかどうかは次の3年目に見えてくるでしょう。ここで効果が出ると、上層部の雰囲気がかなり変わってきます。
マンネリ化を防ぎ、行動変容に繋がる工夫を
——今後の展望や、私たちシーベースに期待していることがあれば、ぜひお聞かせください。
津留様:
3年目も引き続き取り組んでいく場合、一番大事になってくるのはマンネリ化の防止です。行動変容に繋がらないと、「今年も同じことをやっているな」と思われてしまいます。たとえフィードバックのコメントに大きな変化がなかったとしても、対象者が前向きに捉えて行動を変えていこうと思えるような動機づけがより一層必要になってくると思うのです。その点は、さまざまな知見を持っていらっしゃるシーベースの皆さんに伴走していただけるとありがたいです。
——フィードバックに慣れてくると、制度に対する新鮮味が薄れていって形骸化してしまうのではないか、という懸念はありますよね。より良い施策になるよう、私たちも知恵を絞ってまいります。最後に、360度フィードバックの導入を検討されている皆さんにアドバイスをお願いします。
倉谷様:
トップが実践すること。それが理想的な形だと思います。もし経営層を除外して部長から始めていたら、部長層は冷めていたと思うんです。トップが実践することで、全員が取り組むようになるのでおすすめです。
——非常に大事なポイントですね。施策が浸透している組織の多くは、やはりトップが自ら対象者となり実践されていると思います。貴重なご意見をお聞かせいただきありがとうございました。
インタビュアー
長光 将志 コンサルティンググループ コンサルタント
首都大学東京都市教養学部卒業後、大手ホテル運営会社、オーダーメイド型研修会社でのコンサルティング営業経験を経て、シーベースに参画。
現在は360度フィードバック施策に特化したコンサルタントとして、説明会・読み解き会・課題別研修を提供。
1社1社の想い・らしさを大切にしたアプローチで人材開発・組織開発の支援を行なっている。
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- クオリカ株式会社
- 事業内容:クラウドサービス、業務用システム開発、パッケージソフト開発・販売、情報端末製造・販売、システム運用管理、基盤構築サービス
設立:1982年(昭和57年)11月1日
従業員数:975人(2024年4月現在)