導入事例
静銀ティーエム証券株式会社様
業務効率化のためペーパーベースからオンラインに切り替え。評価のしやすさが前向きなフィードバックを生む一因に
静銀ティーエム証券株式会社
静銀ティーエム証券 人財開発部 丹羽様 (写真)・清水様
- 運用業務の効率化
静銀ティーエム証券株式会社様は、さまざまな投資信託を扱うしずおかフィナンシャルグループ傘下の証券会社です。2000年12月に設立し、静岡県を中心に、神奈川、山梨、愛知と拠点を展開されています。もともとアセスメントテストの一環として360度フィードバックを実施されていましたが、業務効率化の観点からオンラインで完結する360度フィードバックを導入。フィードバックを前向きに捉えてもらうための工夫や、紙からオンラインになって変わったことについて伺いました。
手書きの仕組みを効率化するために導入
ーー360度フィードバックを導入された背景をお聞かせください。
丹羽様:
弊社では10年以上にわたって紙ベースで360度フィードバックを実施していました。ただ、一人の評価者が4〜5名分をすべて紙に書くとなるとかなりの時間を要するので、業務効率化という観点からオンラインでの実施を視野に入れてはいたのです。そんな中、グループ会社ですでにオンラインの仕組みを取り入れているという話を聞き、そこからさまざまなご縁をいただいて、CBASEの360度フィードバックが最も効率化を図れるのではないかと判断し、導入に至りました。
ーー紙ベースで360度フィードバックを続けてこられた長い歴史があるのですね。当時の目的や活用方法はどのようなものでしたか?
丹羽様:
目的は基本的に今も同じで、昇格時のアセスメントテスト(能力や性格の特性を客観的に評価するもの)として活用しています。業績さえよければ昇格できるような時代もありましたが、結果としての数字だけでなく、日頃の行動や人柄、マネジメント能力など、総合的に見て判断していきたいと考えているからです。
当時はマークシート方式で、5段階のどこに該当すると思うかを手書きで記入してもらっていました。フリーコメントについては、マス目のある用紙に「何文字以内で書いてください」といった形で依頼していました。
適切な評価には人数と匿名性が必要
ーー初回の実施時に意識したことや、工夫したポイントを教えてください。
丹羽様:
意識しているのは、匿名であることをうまく活用することです。評価の公平性や客観性を担保できるよう気をつけています。難しいのはコメント欄で、あまりにも本人と近しい方のエピソードですと、評価者が特定されてしまう可能性があります。ポジティブなコメントであれば良いのですが、弱みや課題を指摘するエピソードが具体的すぎると匿名の意味がなくなってしまうので、注意が必要だと感じています。
360度フィードバックを実施するにあたり、「率直な意見を書くことがその人の成長につながるので、対象者のことを思って書いてください」という旨をあらかじめ記載しておきました。それが功を奏したのか、以前までは「この人に昇格してほしい」「がんばってほしい」というコメントはそれほど多くなかったのですが、今回はポジティブなコメントがたくさんありましたね。
ーー静銀ティーエム証券様は、強みに対するコメントの量が非常に多い印象です。コメント欄に目的を記載されたこと以外にも、何か影響していると思われますか?
丹羽様:
2023年から社内のエンゲージメントを高める活動を実施しています。経営層が会社の方向性をしっかり伝えたり、そのための人材育成に力を入れたりと、浸透活動を通して現場の意識が今まで以上に変わってきているのかもしれません。
ーー反対に、苦労された点はありますか?
清水様:
苦労したのは評価者の選定です。客観性のある評価をしようとすると、ある程度の人数が必要になります。弊社の規模ですと、かなり年月をさかのぼらないと人数が確保できなかったので、結構苦労していましたね。また、時間が経つほどその人に対する印象もぼんやりしてしまうので、評価者の数と評価の質のバランスを取るのが難しかったです。
自ら周囲に働きかける社員が出てきた
ーー360°フィードバックを紙ベースからシステムでの運用に変えたことで、社内の反応に変化はありましたか?
丹羽様:
まず、オンラインになって記入が楽になった、取り組みやすくなった、という声は聞いています。CBASEのシステムは同時に複数人を評価することができますよね。紙ベースのときは、評価も三人目くらいになると「最初の項目でどんなことを書いたんだっけ」「あの人のときは何て書いていたかな」という風に、思い出しながら記入するので大変でした。また、評価を受け取る側も、オンラインで簡単に見返すことができるので結果を受け止めやすくなった気がします。
運営の観点では、システム内の組織ごとの集計データを通して、フィードバックの結果から自社の特徴を知ることができるのが非常にありがたいです。さきほどおっしゃっていただいたような「他社と比較したときにポジティブなフィードバックが多い」といった点は、自分たちだけで運営していると分からないことですから。
ーーありがとうございます。フィードバックを受け取った対象者の皆さんの反応はいかがでしたか?
丹羽様:
フィードバック実施後に、「上司の行動がちょっと変わってきた」という話を聞きました。その方はプレイヤーとしてがんばっていて、マネジメントにはあまり関心がないタイプだったそうですが、「役職者としての意識を持とう」「これから自分を変えていこう」とフィードバックを前向きに捉えてくれたようです。
ほかにも、職人気質といいますか、背中で語るタイプだった方が、フィードバックを受けて自分から周囲に働きかけるように変わりましたね。もともと「教えてください」と声をかけたら優しく教えてくれるような方だったのですが、自ら率先して周囲に関わっていく姿を見かけるようになりました。
ーー素晴らしい変化ですね。施策が紙からオンラインになり効率化されたことで、360度フィードバックに対しても前向きなイメージが醸成されたのかもしれませんね。
フィードバックの質を上げることが社員の行動変容につながる
ーー最後に、今後、360度フィードバックの導入を検討されている人事担当者の皆様へ、ぜひアドバイスをお願いします。
丹羽様:
評価の客観性や公平性は、紙で実施していたときよりも精度が上がりましたし、実施後の効果も増したと感じています。匿名にすることで率直な意見を引き出せるのも良い点です。その上で、「何のために実施するのか」という目的を事前に伝えておくことが重要だと思います。なぜ360度フィードバックを行うのか、この施策が何につながるのか、人事からしっかり社内に浸透させておいた方が、建設的なコメントが出やすくなりますし、評価を受け取る側も自分の能力開発にしっかり活かすことができるはずです。
清水様:
評価される側だけでなく評価をする側にも素養が求められますから、フィードバックの方法を個人の判断に委ねるのではなくて、会社として客観的な評価の考え方や目的意識を根付かせていかないといけません。フィードバックの質を上げることが、ひいては社員全体の意識を底上げし、行動変容につながっていくのだろうと期待しています。
ーー意識の啓蒙が、アセスメントの質の向上とポジティブかつ建設的なフィードバックを伝え合える風土の醸成につながっていきそうですね。とても参考になるお話をお聞かせいただきありがとうございました。
インタビュアー
大川 徹 コンサルティンググループ コンサルタント
神戸大学国際人間科学部卒業後、メーカー系SI企業、総合人材サービス企業、大手私鉄、人材開発コンサルティング企業を経てコンサルティング事業の責任者としてシーベースに参画。多様な業界・職種での経験を活かし実践的なソリューションを提案。
- 静銀ティーエム証券株式会社
- 事業内容:金融商品取引業。資産状況や投資スタンス等に基づき、一人ひとりのライフスタイルに合った資産運用を提案し、将来の資産形成をお手伝いします。
社員数:344名(2023年10月30日現在)