360度評価のコメント例文を紹介!立場別や職種別、評価項目別で解説
360度評価を導入したものの、相手の気持ちを考えながらも建設的なフィードバックができるコメントとはどのようなものなのか、実際に評価コメントを書く際に悩んでしまう方は多いのではないでしょうか。
本記事では、360度評価におけるコメントの書き方のポイントと実際の例文を解説します。特に360度評価は多角的な評価が特徴であるため、立場別や職種別といった視点でのポイントとコメント例文を紹介していきます。
併せて評価項目別の例文もご紹介しますので、評価制度設計や日々の運用の際に参考にしてください。
目次
360度評価での立場別のコメント例文
360度評価の大きな特徴は、上司から部下、部下から上司、同僚間と、立場を超えて多角的な評価ができる点です。
しかし、立場によって評価の視点は異なります。例えば、部下から上司への評価ではマネジメント力が問われますし、上司から部下への評価では業務処理能力が主な焦点となります。
下記では、立場別のコメント例文を解説していきます。
・部下から上司へのコメント例文
・上司から部下へのコメント例文
・同僚へのコメント例文
部下から上司へのコメント例文
上司のマネジメント力や育成力を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「個々の部下の特徴を理解したうえで、適材適所の人員配置ができている」
・「定期的なミーティングでメンバーの状況把握ができており、正しいサポートが行われている」
・「部下の意見を取り入れながら、業務効率化につながるシステム変更を提案してくれた」
上司のフォロー体制を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「担当外の案件でも丁寧にケーススタディをしてくれるため、迷うことなく仕事ができる」
・「休暇中でも必要な判断材料を事前に用意してくれていたので、業務に支障がなかった」
・「急な案件でもスムーズに対応してくれる体制が整っており、頼もしい」
360度評価では、普段評価する立場にない部下が上司を評価できる貴重な機会です。この時のポイントは、上司の仕事ぶりではなく、部下やチーム全体をマネジメントできているかを判断することです。
例えば、上司が部下一人ひとりの特徴や得意不得意を把握し、適材適所の配置ができているかを確認します。ある部下はデータ解析が得意だが顧客対応は苦手、逆にある部下は顧客対応が上手いがスピードが遅い、といった具合です。
こうした傾向がある場合、適切な業務の割り振りとサポートができているかどうかがポイントになります。
また、上司が定期的なミーティングを開き、メンバーの状況把握をできているかも重要です。進捗状況の確認に加え、悩みごとの聞き取りやアドバイスをしているかが評価軸となります。
このように、マネジメント力という観点から上司を評価することが重要です。
上司から部下へのコメント例文
部下を成果だけでなく行動も評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「目標達成率は80%と低かったが、営業スキル向上のため積極的に研修を受講している点は評価できる」
・「結果を出すことは大切だが、チームとのコミュニケーションをより重視してほしい」
部下の改善点を具体的に指摘して評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「基本動作の定着がまだ不十分なので、規定に沿ったサービス提供を意識してほしい」
・「損益分岐点を意識した価格設定ができていないので、収益管理の勉強をしてほしい」
下記のように、褒めるコメントも一緒に行いましょう。
・「新メニューを企画した点は高く評価している。今後の売上拡大が期待できる」
・「顧客対応のスキルが高いので、今後は後輩の指導役も期待したい」
上司が部下を評価する場合、成績や結果だけで判断するのではなく、日頃の取り組み方も評価することが大切です。
例えば、売上目標達成率が80%と低かった部下がいた場合、単純に「目標未達だ」と指摘するのではなく、目標達成のためにどのように努力していたかも確認する必要があります。資料作成を熱心に行っていたり、営業スキル向上のため研修を受講していたりしたのであれば、その点は評価できます。
逆に、表面的には目標を達成したようでも、定期的な報告書の提出が行われていない、チームでのコミュニケーション不足が指摘されている、といった日頃の業務への取り組み方に課題が見られる場合には、そちらを優先して指導することが大切です。
このように上司は成績だけでなく日頃の様子も評価し、部下一人ひとりの成長に向けたコメントをしていくことが重要です。
同僚へのコメント例文
同僚のコミュニケーション面を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「積極的にあいさつをしてくれるので、明るい雰囲気づくりに貢献している」
・「仕事の優先順位を考えずに相談してくるので、もう少しタイミングをみてほしい」
同僚の業務支援面を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「分からないことがあれば、丁寧に教えてくれるので助かっている」
・「相談しづらい雰囲気なので、もう少しフォロー体制を整えてほしい」
同僚の成長意欲を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「資格取得のために勉強している姿勢は手本となる」
・「自分から進んで新しいことにチャレンジする姿勢がみられない」
360度評価では、同じ部署の同僚同士も評価をし合います。立場の違いがない分、気兼ねなくフィードバックできるメリットがあります。
例えば、積極的に周囲の同僚とコミュニケーションをとっている人は「チーム全体の雰囲気づくりに貢献している」と褒めるコメントができます。逆に、仕事はできるが人付き合いが苦手な人は、もっと周囲と関わる努力をするようアドバイスすることも可能です。
新入社員に対して丁寧に仕事を教えている先輩社員を見かけた場合も、その行動を評価するコメントを送るとよいでしょう。後輩育成は自分への投資にもつながることを実感できます。
このように、同僚への評価では普段の些細な行動から判断し、時には指摘を、時には励ましの言葉をかけることが大切です。
360度評価での職種別のコメント例文
360度評価を実施する際、営業職や技術職、管理職といった職種によって評価の視点や着眼点を変える必要があります。
下記の代表的な職種における評価コメントの例文を紹介します。
・営業職
・事務職
・企画職
・技術職
営業職のコメント例文
営業職の行動面を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「目標達成率は80%だが、営業スキルを磨くために研修を受講している点は評価したい」
・「提出書類のミスが目立つので、確認をもう一度してから提出する習慣をつけてほしい」
営業職のマインド面を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「結果が思うように出なくても前向きな姿勢で臨んでいることが大切」
・「数字が伸び悩んでいるが、意欲とポジティブさを失わずに」
営業職の改善点を上手に指摘する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「基本動作が不十分なので、報連相をもう少し意識してほしい」
・「商品知識が足りないので、勉強会への参加をさらに促したい」
営業職の360度評価では、数字の成果にとらわれずに評価することが大切です。営業の仕事はノルマのプレッシャーが大きいため、評価でそれを助長しないことが重要だからです。
例えば、目標未達成の営業マンでも日々できる限りの努力をしているのであれば、その行動力や取り組みは評価できます。「結果が出なかったがマインドを保つことが大切」といった前向きなコメントを送ることで、本人のモチベーションアップにつながります。
一方で、表面上の行動は積極的でも日々の基本動作が定着していない場合は、そちらを優先して指摘しましょう。例えば、報告・連絡・相談が不十分だと感じているのであれば、その旨を伝えることで、本人の行動変容につなげることができます。
このように営業職の360度評価では、数値目標だけで判断するのではなく、日々の基本動作も重視することが大切です。
事務職のコメント例文
事務職の処理スピードを評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「大量の入力業務を速やかに処理できている」
・「決裁書類の回付に時間がかかるのでもう少し意識してほしい」
事務職のミスの少なさを評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「入金データの照合ミスがほとんどない素晴らしい実務力」
・「領収書と内訳書の金額が合っていない場合があるので注意が必要」
事務職の業務改善意欲を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「効率アップのためアイデアを提案してくれる前向きな姿勢が好印象」
・「自分から業務改善案を出すという意識がやや薄れている感じがする」
事務職の360度評価では、ミスの少なさや処理スピードなどの定量面だけでなく、業務改善への取り組み意欲などの定性面も評価しましょう。
例えば、決算業務で2件の入力ミスがあった場合、単純にミスを指摘するだけでなく、「双照合の徹底など再発防止策を提案してほしい」とコメントすることで、建設的な改善につなげられます。
逆に、ミスが全くない上手な仕事ぶりをしていても、自分から進んで業務効率化を提案していないならば、「自分のアイデアを積極的に出していってほしい」とコメントすることも大切です。
このように、事務職の360度評価は定量面と定性面の両方をみて、バランスの取れた評価コメントをすることがポイントです。
企画職のコメント例文
企画職のアイデア力を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「商品企画においてユニークな発想のアイデアを出してくれている」
・「もっと使用者視点での提案を意識してほしい」
企画職の実行力を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「企画段階だけでなく、実際の準備作業をリードする姿勢が良い」
・「作業フローが明確でない場合が多いので、段取り力を身につけてほしい」
企画職の協調性を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「他部署とコミュニケーションを取りながら、円滑に業務を遂行している」
・「自分の案にこだわりすぎることがあるので、柔軟性を意識してほしい」
企画職の360度評価では、アイデアの斬新さだけでなく、実行力や協調性など、より実務的な視点からの評価が重要です。
例えば、非常にユニークな企画案を提案した社員がいたとしても、作業手順が明確でなかったり、進捗状況の共有が不十分だったりする場合には、その点を改善点として指摘します。
机上の空論に終わることなく、確実に遂行できることを優先しましょう。
一方で、地味ながら確実な企画立案を行う社員に対しては、より斬新さを意識するよう促すコメントを送ることも大切です。新しいアイデアを評価しつつ、着実な実行を心がけることの両立が理想的といえます。
このように、企画職の360度評価は創造性と実務力のバランスを考慮してコメントをすることがポイントです。
技術職のコメント例文
技術職の技術力を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「新技術を積極的に学び、業務に活用できるレベルにしている」
・「技術動向を敏感にキャッチアップする姿勢がやや弱い」
技術職のチームワークを評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「ソースコードのレビューを真摯に受け止め、品質向上に努めている」
・「学びをチーム内で共有する視点に欠けるので、もっとアウトプットを」
技術職のドキュメント作成を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「丁寧なドキュメント作成で、業務を後進にスムーズに引き継げる」
・「ドキュメントが随時更新されておらず、情報共有が不十分である」
技術職の360度評価では、開発技術力だけでなく、チームとしての開発速度や品質管理への貢献度といった点も評価しましょう。
例えば、個人のプログラミングスキルが高くとも、ソースコードの共有やレビューを怠っているようであれば、その点を改善点として指摘します。技術力をチームの知的財産として活かしていくことが大切です。
反対に、技術力は平凡でも丁寧なドキュメント作成を心掛け、後進の育成に努めているメンバーに対しては、その見本となる行動を評価するコメントを送ることが大切です。
このように、技術職の360度評価のコメントは個人技術とチーム貢献の両面から行うことがポイントです。
360度評価での評価項目別のコメント例文
評価項目とコメントの着眼点は評価軸によって異なりますが、適切なコメントをすることは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
下記3つの主要な評価軸を取り上げ、それぞれに適したコメント例文をご紹介します。
・成果評価
・能力評価
・情意評価
成果評価のコメント例文
成果評価で目標達成度を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「年度売上目標の110%を達成したことは高く評価できる」
・「案件獲得数が目標を下回ったため、営業活動の改善が必要」
成果評価で要因を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「新規顧客開拓の成功はプレゼン力の高さが大きく影響している」
・「商品知識不足で失注につながったため、学習を尽くすことが重要」
成果評価で次への期待を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「目標達成おめでとう。今後も自主的な行動力でさらなる成果を」
・「結果に結びつかなかったのは残念。原因を分析し次に活かしてほしい」
360度評価の成果評価では、売上実績の達成率や新規顧客獲得数などの数字で表すことができる目標の達成度を扱います。
例えば、目標の年間売上を100万円と設定していた営業担当者が、実際には80万円しか達成できていない場合、その点を指摘することは重要です。ただし、目標未達を理由に諦めるようなコメントは避けましょう。「行動面での反省点を次に活かしてほしい」といった前向きなコメントが大切です。
反対に、目標を大幅に上回る顕著な成果を出している社員に対しては、数値面の評価に加え、その要因となった行動の背景まで触れることで、更なる成長の余地を引き出すことができます。
このように成果評価のコメントでは、数字と行動を関連づけて考えることがポイントです。
能力評価のコメント例文
能力評価で知識やスキルを評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「専門用語や業界知識を豊富に持ち、提案力が高い」
・「商品知識が不足しているので、研修で知見を深めることを期待する」
能力評価で資格や検定を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「検定に合格し、業務で活かせている」
・「簿記2級取得を目指し、勉学意欲が高いことが評価できる」
能力評価でスキルと実務の関連性を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「Excelのスキルを活かし、業務効率化に貢献できている」
・「技能はあるので、もっと積極的に業務提案を行うことを期待したい」
能力評価は、業務を遂行するうえで必要な知識やスキルを評価します。資格取得状況や専門用語の理解度などです。
例えば、営業担当者が新商品の訴求力を高めるため、自主的に商品知識を深める研修を受講しているようであれば、その向上心を評価するコメントを送ることができます。一方で、業界用語をちゃんと理解できていないなど、能力面で不安がある場合は、その点をアドバイスすることが大切です。
技術職の能力評価においても、新技術の習得レベルや検定合格など、スキル面での達成度だけでなく、知識をどれだけ業務で活かせているかを確認する視点が必要です。
情意評価のコメント例文
情意評価で前向きさを評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「新商品の企画に意欲的に取り組む前向きな姿勢が好印象」
・「失敗を恐れすぎているので、もっと挑戦する心を期待する」
情意評価でコミュニケーションを評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「会議での活発な意見交換がチームのパフォーマンスを向上させている」
・「もっと他者とコミュニケーションを取ることで視野が広がるはず」
情意評価で協調性を評価する場合のコメント例文は下記の通りです。
・「業務分担や助け合いがスムーズで、とても協調性が高い」
・「自分の意見を押し通そうとすることが多く、協調性に課題を感じる」
360度評価での情意評価は、業務への取り組み方や積極性、協調性などを評価します。具体的にはチャレンジ精神やコミュニケーション態度が対象となります。
例えば、日頃から新しいことに積極的に取り組んでいるメンバーに対しては、その前向きさを褒めるコメントを送ることができます。
一方で、仕事の打ち合わせ時にも発言する機会が多いにも関わらず、意見を言うことを避けているようであれば、もっと主体性を持つよう促すなど前向きに接することが大切です。
このように、情意評価のコメントを通じて変容を促すことが可能ですが、感情的な表現は避けるようにしましょう。
360度評価の悪いコメント例文
下記のような感情的なコメントは、360度評価の悪い例文です。
・「いつも迷惑をかける」
・「自己中心的で付き合いづらい」
下記のような漠然としたコメントは、360度評価の悪い例文です。
・「意欲が感じられない」
・「成績が悪い」
下記のような否定的過ぎるコメントは、360度評価の悪い例文です。
・「コミュニケーション能力が全くない」
・「頼りにならない」
このような誹謗中傷や漠然とした批判のみのコメントは避けましょう。前向きな改善策を提示しつつ、客観的事実に基づいた指摘をすることが大切です。
360度評価では、感情的なコメントや誹謗中傷、曖昧な表現は控えるようにしましょう。否定的すぎるコメントは相手のモチベーションを下げるだけでなく、評価者自身の印象も悪くなるため注意が必要です。
例えば「成績がよくない」「意欲が感じられない」といった漠然としたコメントです。具体的にどの点がよくないのか、どうして意欲がないと判断したのかを明確に書くことが大切です。
また、「うるさい」「迷惑をかける」などの感情的なコメントもNGです。こうしたコメントを受けると、被評価者は工作や嫌がらせを恐れて行動できなくなります。あくまで相手の行動に着目し、客観的に指摘するコメントを心がけましょう。
360度評価でコメントを行う時のポイント
適切なコメントをすることが360度評価を成功させる重要なポイントとなります。
評価コメント作成時の注意点について、下記をそれぞれ詳しく解説します。
・長所だけでなく短所も評価する
・個人的な感情や印象で評価を行わない
・上司への評価はマネジメント力に着目する
・部下への評価は実務スキルや仕事への取り組み姿勢に着目する
・できる限り具体的に評価する
・評価後に適切なフォローアップを行う
・組織の全てのメンバーを対象に評価を行う
長所だけでなく短所も評価する
360度評価の目的は、複数の視点からの評価を通じて個人の強みと弱みを明確にし、自覚を促すことです。そのため、長所だけでなく短所もしっかりと指摘することが大切です。
例えば、社内での仕事の打合せで自分の意見を主張しないAさんがいたとします。この場合、積極性には欠けるが口数の少なさが良い面でもあるといったコメントをすることで、Aさんへの気づきを促せます。
一方で、仕事のスピードこそ早いがチームでのコミュニケーションが少ないTさんには、優れた実行力を褒めつつ、チームワークの大切さをアドバイスすることができるでしょう。
長所も短所も両方備えた評価コメントをすることで、個人の成長や組織力の向上に繋がります。短所を恐れずに指摘することがポイントです。
個人的な感情や印象で評価を行わない
複数の視点で多面的な評価を受けることで、できる限り公平で偏りのない結果を得ることです。そのため、評価者の個人的な感情や印象だけでコメントを行うのは避けるべきです。
例えば、性格的に自分のタイプではないという理由で厳しい評価をしてしまうのは好ましくありません。
具体的には、相手を「いつも楽しそうに振る舞っている」などの自己流の印象論で批判するのではなく、実際どのように業務に影響が出ているかを明確に指摘することが大切です。
個人的な感情を抑えた評価だと、被評価者本人の実力や資質に応じた適正な評価に近づき、公平感のある制度設計につながります。
ほかにも、印象だけの評価は誤解を招きますが、事実関係の客観性を保つことで、人間関係のいざこざが生じにくくなります。
そのため、評価者全員が個人攻撃的なコメントを避け、事実関係に基づいた建設的なフィードバックを心がけることが重要です。
上司への評価はマネジメント力に着目する
360度評価で部下が上司を評価する場合、評価のポイントは上司のマネジメント力です。マネジメント力とは、部下が仕事をしやすい環境をつくる能力のことです。
例えば、上司が部下の得意分野や性格を理解し、適材適所で仕事を割り振っているかどうかが大切なポイントです。データ分析が得意な部下にはその業務を割り振り、創造性が高い部下には企画を任せるなどが良い例です。
また、定期的な進捗確認と適切な支援ができているかどうかも重要です。部下一人ひとりとコミュニケーションを取り、必要に応じて手厚いサポートをしているかが評価軸となります。
マネジメント力に対する部下からの評価を受けることで、上司は日頃の部下への対応の振り返りができます。気づきから行動改善につなげやすくなります。
ほかにも、部下目線での指導評価を知ることで、上司は部下の立場に立ったマネジメントができるようになり、コミュニケーションが活発になるメリットがあります。
部下への評価は実務スキルや仕事への取り組み姿勢に着目する
360度評価で上司が部下を評価する際は、実務をこなすスキルと仕事への意欲という2つの視点が重要です。
例えば、新製品の訴求資料作成という業務を任せた部下がいた場合、作成された資料の完成度だけでなく、どれだけ熱心に取り組んでいたかというプロセスもちゃんと評価する必要があります。
夜遅くまで自主的に資料作成を行っていたり、担当者に質問して理解を深めていたりするなど、過程での姿勢が大切な判断材料となります。
一方で、日頃の基本動作ができていなければ、そちらを優先して評価することも重要です。例えば、上司への定時報告が不十分だと感じている場合は、その点を先に指摘し改善を促すことが大切です。
実務スキルだけでなく取り組み姿勢まで評価することで、部下は努力が報われると実感でき、やる気の持続につながります。
ほかにも、実務スキルの強みと弱みが明らかになるので、伸ばすべき部分の特定がしやすくなるため、教育体制の構築に活かせます。
できる限り具体的に評価する
コメントをする際は、漠然とした抽象的な表現は避け、できる限り具体例を交えながら詳細に記載することが大切です。
例えば「コミュニケーションが下手だ」というだけではなく、「打ち合わせ時に発言する機会があっても意見を言おうとしない」といった具体的な場面と行動を伝えたうえで、その改善策として「積極的に意見を出してほしい」とコメントをすることができます。
業務スキルに関しても、単に「できない」と表現するだけではなく、「Excelの基礎操作が不安定なため、入力ミスが多い」といった根拠を伝えながら、「Excel操作の追加研修を受講することで改善される」といった前向きなコメントをすることが建設的なフィードバックとなります。
具体的な事例があるほうが自分の行動をイメージしやすく、評価も受け入れやすくなり、納得度が高くなります。
ほかにも、抽象的な内容ではなく具体的な成功事例や失敗事例を出すことで、目標とする姿がイメージしやすくなります。
評価後に適切なフォローアップを行う
360度評価を実施しただけで終わるのではなく、評価後のフォローアップが大切です。評価結果をもとに、被評価者が自分の強みをさらに伸ばし、弱みを克服できるようにサポートしましょう。
例えば、プレゼン能力が十分でないという評価が多かった営業担当者に対しては、実際のプレゼンの様子を動画で撮影し、専門の外部コンサルタントから添削を受ける機会を与えます。
新人社員に対して商品知識が不足しているという意見があった場合には、先輩社員や上司が個別に教育する時間を作ることで、スキルの習得と自信を回復させることができます。
こういったフォローアップを行うことで、評価で得た気づきを実際の行動改善につなげやすくなり、評価を行う意味をより高めることができます。
さらに、単に評価しただけではなく改善に向けたサポートが得られるので、納得感も高まります。
組織の全てのメンバーを対象に評価を行う
会社の役職や立場に関係なく、組織の全メンバーが評価者と被評価者の両方として評価に参加できるようにしましょう。
例えば、新入社員から管理職まで全レベルの社員を対象に360度評価を実施します。階層が上がるほど日頃から評価する機会の多い上司でも、新入社員からの視点では気づきが多く、自身の行動を振り返るいい機会となります。
評価対象を全社員に広げることで、職場の問題が見えやすくなるという効果もあります。いじめやハラスメントの芽があれば、複数の評価を通じて発見できる可能性が高まります。
また、評価者として参加することで、自分も組織の一員として責任を担っているという意識を持つことができ、やる気やモラルが上がります。
すべての人が関わることで活発なコミュニケーションが生まれ、職場の活力向上につながるでしょう。
360度評価でのコメント例文のまとめ
360度評価のコメントを書くことは簡単な作業ではありません。相手の気持ちを害さないよう注意しつつ、建設的なフィードバックを心がける必要があります。
しかし、適切なコメントを行うことで、360度評価の効果は最大化されると言っても過言ではありません。
360度評価の目的を改めて考え、個人の成長や組織の活性化に繋がることを信じ、柔軟な姿勢で相手を理解するようにしましょう。時には厳しいことも言える信頼関係があって、初めて生産的な評価ができるようになります。
評価する側、される側の双方にとって、360度評価は前向きな変化をもたらす良いきっかけとなります。
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