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CSRとは?企業の社会的責任の意味や活動内容、コンプライアンスとの関係を解説

2024.10.25 その他

企業がただ利益を追求するだけでなく、社会や環境にも責任を持つべきであるという考え方を「CSR(Corporate Social Responsibility)」、すなわち「企業の社会的責任」といいます。

近年、このCSRは社会問題や環境問題が注目される中で、ますます重要視されています。特にSDGs(持続可能な開発目標)やコンプライアンスといった概念と並び、企業活動における不可欠な要素となっています。

CSRを適切に行うことのメリットは多岐にわたります。企業信頼の向上、人材の採用と定着率のアップ、さらには法令違反リスクが減少するといったことが挙げられます。CSRの活動は環境配慮、ボランティア、寄付といった形で行われ、それぞれが企業価値を高める要素となります。

本記事では、CSRとはどういったものか、企業がCSRに取り組むメリットやデメリットについて詳しく解説します。

CSRとは

CSR(Corporate Social Responsibility)とは「企業の社会的責任」とも呼ばれており、企業がビジネスを展開する上で持つべき多面的な責任の総称です。

CSRの主な対象は、顧客、従業員取引先、投資家、さらには環境や地域社会など、企業活動が影響を与える全ての「ステークホルダー」です。

では、具体的に何に責任を持つべきかというと、それは企業の性質や業界、地域などによって変わってきます。例えば、ある企業は環境に配慮した製品作りを進め、別の企業は地域社会との連携を深めることで社会貢献を果たすかもしれません。

このように、企業ごとに「これだけはやっておかないと」というCSRのポイントがあります。

しかし、どの企業も共通して求められるのは、利害関係者に対して「説明責任」を果たすことです。

たとえば、製品に不具合があった場合、それをしっかりと公表し、どのように解決していくのかを明示する。これは顧客だけではなく、投資家や従業員、地域社会に対しても同じです。そういった対応により企業は信頼され、さまざまなステークホルダーと良好な関係を築き、ビジネスも持続的に成長するからです。

これからもCSR活動はますます重要になっていくでしょう。企業はこの考えを軸に、どのようにビジネスを展開していくべきかを常に考え、行動していく必要があります。

CSRが日本で受け入れられるようになった背景

CSR(企業の社会的責任)が日本で広く受け入れられるようになった背景には、主に下記のような理由があります。

・企業の不祥事やスキャンダルの増加
・環境問題の深刻化

・企業のグローバル化の進展
・消費者や市民による企業の社会的責任に対する見方の変化

それぞれ詳しく解説していきます。

企業の不祥事やスキャンダルの増加

近年、企業の不祥事やスキャンダルが目立って増加しています。具体的には、食品の産地を偽装する事件、賞味期限を不正に変更するケース、さらには会計の粉飾決算など、多岐にわたる問題が社会に露呈しています。

このような状況が引き起こす影響は大きく、企業に対する信頼は確実に崩れつつあります。

これらの不祥事が発覚した際に最も損なわれるのは、もちろん企業のブランドイメージと信用性です。消費者はより慎重に企業選びをするようになり、一度失った信頼を回復するには時間と労力が必要となります。

また、ステークホルダー、すなわち消費者だけでなく、株主、取引先、地域社会、従業員に至るまで、多くの人々がこのような企業の行動に対して不信感を抱くことになります。

加えて、不祥事が発覚すると、それが大々的に報道されることも多く、企業の株価にも直接的な影響を与えるケースがあります。株主からの信頼を失い、資本調達やビジネスパートナーシップの形成も困難になる可能性が高まります。

このような事態を受けて、企業がどれだけCSR(企業の社会的責任)を果たすか、ということが一段と重要視されるようになっています。不祥事を未然に防ぐため、そして万が一発生した場合に備えて、より厳格なコンプライアンス体制を整え、社内文化を改革する企業が増えています。

環境問題の深刻化

地球温暖化、大気汚染、資源の過剰利用など、解決を急がなければならない課題が増えています。

特に日本では、過去の高度経済成長が公害問題を引き起こし、その結果として環境に対する企業の責任が厳しく規制されるようになりました。

企業のグローバル化の進展

多国籍企業が増加し、その活動は国内だけでなく世界中に広がっています。

企業が海外でビジネスを展開する際には、その進出先の社会や経済にも影響を与えることから、CSR(企業の社会的責任)の対象とされる「社会」が、ますます広がっているのです。この点を補う形で、国際的な統一基準としてISO26000も登場し、CSR(企業の社会的責任)の普及を一層後押ししています。

消費者や市民による企業の社会的責任に対する見方の変化

近年、消費者や市民の企業に対する認識は大きく変わっています。インターネットやSNSが広く普及した現代では、企業の行動やスキャンダル、環境への影響などの情報が一瞬で広まります。このような背景から、多くの人々は企業に対して厳格な監視の目を持つようになっているのです。

そのため、CSR(企業の社会的責任)に取り組まない場合、その企業は「時代遅れ」とまで評価され、消費者からの信頼を失う可能性が高まります。企業に求められるCSRの重要性は、今では選択肢ではなく必須の条件になっているとまで言えます

特に若い世代は、価格や品質だけでなく、企業が持続可能な社会に貢献しているかどうかも重視する傾向にあり、そのような視点で企業を選ぶことが増えています。

こうした消費者の意識の変化は、企業が今後どのようにビジネスを展開していくかにも大きな影響を与えています。CSRを真剣に取り組む企業は、社会全体からの評価が高まり、長期間での成功が期待されます。

一方で、CSRに対する取り組みが不十分な企業は信頼を失い、ビジネスそのものにも影響が出る可能性が高くなっています。

CSRと類似した用語の違い

CSR(企業の社会的責任)と関連が深く、意味が似ている類似した用語として主に下記のような言葉があります。

・サステナビリティ
・SDGs
・コンプライアンス

・CSV
・ボランティア

CSRとそれぞれの用語の違いについて、詳しく解説していきます。

CSRとサステナビリティの違い

CSR(企業の社会的責任)とサステナビリティは密接に関わっているものの、まったく同じというわけではありません。

というのも、 「サステナビリティ」は、企業が環境や社会に与える影響を最小限に抑えつつ、長期的にビジネスを続けられるような状態を目指します。一方で、CSRは、企業が社会に対してプラスの影響を積極的にもたらす活動も含む、といったようにより幅広い概念です。

例えば、廃棄物のリサイクルを推進することは、環境負荷を軽減する「サステナビリティ」の一環です。しかし、地域社会に教育プログラムを提供する活動は、積極的な社会貢献として「CSR」に分類されます。

サステナビリティは企業の「防御策」、CSRは「攻めの戦略」でもあります。どちらも異なりますが、ビジネスにおいてはどちらも重要な要素です。

ほかにも、文化や国によってそれぞれの言葉に特定のニュアンスが含まれています。

アメリカでは「サステナビリティ」がよく用いられ、イギリスでは「CR」が一般的です。日本では、「CSR」または「CSV(企業価値と社会価値の創造)」がよく用いられています。

同じように見えるこれらの用語も、文脈や地域によっては違いがあります。用語の選び方一つで、企業の社会貢献活動への姿勢が伝わることもあるので、注意が必要です。

CSRとSDGsの違い

CSR(企業の社会的責任)とSDGsの基本的な違いは、CSRは企業が経済活動を行う上で持つべき「社会的責任」です。これは地域社会やステークホルダー(顧客、従業員、投資家など)と良好な関係を築くためのものとなります。

一方で、SDGsは地球規模での持続可能な開発を目指す17の国際的な目標であり、企業だけでなく、政府や個人にも関わる課題です。

企業がCSRに取り組む主な理由は、社会からの信頼を得て、持続的な成長を促進するためです。実際、社会的責任に注力している企業に投資する「CSRファンド」も存在し、商業的な成功とも連動しています。

SDGsの場合、その取り組みが企業のCSR活動と連携し、更なる信頼を築く素材となるため、こちらも無視できません。

例えば、食品ロス削減に取り組む企業があったとします。この活動は、SDGsの「責任ある消費と生産」に関連し、資源の有効活用や流通の合理化など、社会全体に貢献します。このような企業は、顧客や地域社会からの評価が高まり、それが結果としてCSRとしても高く評価されます。

最終的に、CSRとSDGsは互いに補完し合いながら、企業と社会、そして地球環境の持続可能な成長を促しています。ただし、CSRは企業が自主的に方針を決める場合が多いのに対し、SDGsは具体的な目標とターゲットが設定されています。

これにより、企業は社会課題解決の方向性をより明確に、かつ国際的な視点で考えることができます。

CSRとコンプライアンスの違い

CSR(企業の社会的責任)とコンプライアンスも深い関わりがありますが、それぞれ独自の役割と意義があります。

コンプライアンスとは、基本的には法令や社会的規範を遵守することです。その遵守は、ISO26000に示されるCSRの7つの原則にも関係する要素であり、企業が社会的責任を果たすための基盤を作ります。

しかし、ここで肝心なのは、コンプライアンスをしっかりと遵守したとしても、それだけでは十分なCSR活動とは言えない点です。CSRは、法令遵守を超えて、企業が持っているリソースや能力を活かし、社会貢献を目的とした幅広い活動を指します。

そのため、企業は利害関係者や社会全体に対して責任を果たすための独自の方針や規範を設定し、それを遵守する取り組みも行う必要があります。

具体的な例として、新しい事業分野で法令がまだ整備されていない場合も考えられます。このようなケースでは、仮想通貨取引の「コインチェック問題」のように、業界自体が自主規制ルールを設けることで、先行してコンプライアンスを確立する場合もあります。

つまり、コンプライアンスはCSRの「土台」であり、その上にさらなる社会貢献活動を築いていくべ必要があります。企業は、法令だけでなく、自社の価値観や方針に従って、持続可能な社会作りに貢献する取り組みを進める必要があります。

企業が本当の意味で社会に貢献するには、両者をバランスよく組み合わせ、積極的に行動することが求められます。

CSRとCSVの違い

CSR(企業の社会的責任)は企業が「社会的責任」を果たす活動を指し、主にイメージ向上や法令順守、環境保全などに焦点を当てます。これに対して、CSVは企業活動自体を通じて社会課題を解決し、同時に企業価値も高める新しい経営フレームワークです。

具体的には、CSRは企業が「責任を果たす」という観点からスタートします。一方で、CSVは企業の「戦略的展開」が前提となるため、企業価値と社会価値の両方を高めようという考えがあります。

例えば、CSRではISO26000などの国際基準に沿った社会貢献活動が行われることが多いです。しかし、CSVではその企業が持つ特定の強みや専門性を活かし、社会的な課題解決にビジネスとして取り組みます。

さらに、CSR活動は多くの場合、企業の本業とは無関係な奉仕活動なども含まれることが多いです。一方で、CSVは事業戦略の一環として社会的課題と直結した活動を行います。

環境問題に取り組むCSR活動では、海岸のゴミ拾いなどが行われることがありますが、これは企業にとってコストとなる場合が多いです。一方で、CSVの場合は、例えばリサイクル技術を使って廃プラスチックから新しい製品を作るなど、企業の核となるビジネスで社会貢献を実現します。

つまり、CSRは企業が「責任を果たす」ための方法論ですが、CSVは「戦略的な価値創造」を目指します。これが、CSRとCSVの最も本質的な違いと言えるでしょう。

このように、CSRとCSVはそれぞれ異なるアプローチで社会的課題に取り組みますが、CSVは企業価値と社会価値の双方を向上させる可能性が高いと言えます。

CSRとボランティアの違い

社会貢献に関する取り組みといえば、ボランティア活動と企業のCSR(企業の社会的責任)活動を比較する人も多いと思います。これら二つは、一見似ているように感じるかもしれませんが、実際には目的からアプローチまで大きな違いがあります。

まず共通している点は、両者とも社会貢献を目的とする活動であるという点です。例えば、企業が地域の清掃活動を行う場合、これはCSR活動でもあり、参加する従業員にとってはボランティア活動とも言えます。

しかし、ボランティア活動は基本的に無償で行われるものであり、その活動自体が報酬を求めずに行われることが多いです。一方で、CSR活動は無償でも有償でもあり得ます。特に「ESG投資」のように、企業が環境や社会、企業統治に関する取り組みを行う場合、投資リターンが期待されることもあります。

ボランティア活動は純粋な社会貢献が主な目的ですが、CSRはその活動を通して企業価値を高めるという目的も大きく、戦略的な要素が強いです。つまり、CSRはただのイメージ戦略や一過性の社会貢献活動ではなく、企業が社会に与える影響に責任を持ち、持続可能な方向に舵を取る必要があります。

さらに、CSRは企業の全体戦略に組み込まれ、サステナビリティやSDGs、ESGといったより広範な社会貢献の枠組みと連動しています。それに対し、ボランティア活動はより局所的、個々の問題解決に焦点を当てた活動が多いです。

つまり、ボランティア活動は基本的に無償で、社会貢献そのものが目的です。一方で、CSR活動は企業価値向上をも狙い、無償・有償を問わず多角的な社会貢献を目指します。このように明確な違いがあるため、CSRとボランティア活動混在させないように注意が必要です。

CSR活動を行うメリット

現代のビジネス環境は、単に利益を追い求めるだけではなく、持続可能な成長と社会貢献が求められる時代になっています。

企業がCSR(企業の社会的責任)活動を積極的に取り組むことは、この2つの目標を同時に達成するための要素にもなります。CSR活動には、企業イメージの向上から社員のモラル向上、さらには優秀な人材の採用といった様々なメリットが存在します。

次の内容で詳しく解説していきますが、CSRは単なる社会貢献ではなく、企業にとっても多くのメリットを生む重要な要素となっています。

企業のイメージ向上やブランディングに繋がる

企業がCSR(企業の社会的責任)活動に取り組むことは、様々な面で大きなメリットあります。特に注目されるのは「企業イメージの向上」です。

企業が環境や社会問題に真剣に取り組むことで、一般消費者や投資家からの評価が高まり、企業イメージが向上します。

現在の社会では、経営方針やCSR活動に目を向ける人が増えています。環境問題に対する意識が高い消費者や、企業の倫理的なスタンスを評価する投資家は、CSRに前向きな企業に対して好印象を持ちます。

東京商工会議所の調査によれば、大企業の98.3%、中小企業の79.7%がCSR活動によって企業イメージが向上したと報告しています。

また、高くなった企業イメージは、企業のブランディング戦略にも影響を与えます。イメージ向上によって商品やサービスの利用率が上がり、結果として企業の利益も上がります。これにより、投資家からの印象もよくなるため、資金調達も容易になります。

加えて、メディアでの取り上げやPR効果も高まり、それがさらなる企業のイメージ向上に繋がる可能性があります。

社員や従業員のコンプライアンス意識が高くなる

CSR(企業の社会的責任)活動は、社員や従業員のコンプライアンス意識を高める点も大きなメリットとされています。

コンプライアンスとは、簡単に言えば、企業が法律や社会的規範にもとづき、公正かつ公平な業務遂行を行うです。コンプライアンス意識が全社員に浸透すると、企業全体がより良い方向へ進める可能性が高まります。

CSR活動を積極的に行うことで、企業は社会責任を果たす重要性が社内全体での共通認識となります。その結果、不正行為などを行うべきはないという社内文化が作られるようになります。

社員が法令を守る習慣が身につけば、違法行為や倫理的な問題を未然に防ぐことができるようになります。これが企業の業績にも良い影響を与え、企業が受ける可能性のある社会的なバッシングや罰則を避けることができます。

社員一人ひとりがコンプライアンスを意識するようになると、それが企業全体のリスク管理につながります。

法令を守れていないと、企業が社会に対して責任を果たしているとは言えません。この意識が根付くことで、社員が業務の際に社会の常識や法令を意識するようになります。社員が業務で社会的な常識や法令を遵守する習慣が身につくと、企業としてのレピュテーションリスクも大幅に減少します。

従業員の定着率と満足度が向上する

企業がCSR(企業の社会的責任)活動を積極的に行ったときの社内へのメリットとして、「従業員の定着率と満足度の向上」が挙げられます。

CSR活動を推進すると、労働条件や労働環境が改善される可能性が高くなります。中小企業にとって、特にスキルが高い人材を確保し続けることは、事業を続けるうえでは非常に重要です。CSRによる労働環境の改善は、従業員が企業に長く働き続けることのメリットになります。これが企業全体の成長にも繋がります。

従業員が安定して働ける環境が整えば、人材の流動性が減少し、企業としても安定した成長が見込めるようになるのです。

CSR活動の影響は、従業員自身の満足度にも大いに関わっています。社会貢献をしているという意識を持つことができるのです。従業員が企業活動を通して社会に貢献していると感じると、その仕事に対する誇りや満足感が高まります。

生産性が向上する、離職率が低くなるといった、従業員満足度の向上がもたらす効果もあります。

従業員の定着率と満足度を高めることは、企業が持続的に成長するためには必要な要素です。特に新世代の労働者は「働く目的」を重視する傾向にあるため、社会貢献を意識した企業が人気となる傾向にもあります。

優秀な人材を採用しやすくなる

CSR(企業の社会的責任)活動に力を入れることにより、「優秀な人材を採用しやすくなる」こともメリットです。

年々、労働人口が減少する中で、企業が行う採用活動の重要性が増しています。CSR活動をしっかりと行うことで企業イメージが向上し、それがまた採用の際の強力な武器となります。特に中小企業は、大企業と比べて一般的な労働条件で劣る可能性があるため、社会貢献などのCSR活動で差別化を図ることが可能になります。

CSR活動は社内の雰囲気を良くし、従業員の満足度を高めるとともに、そういった活動の情報が外部にも広がります。口コミサイトなどで企業の良い評価が共有されることで、新卒採用や中途採用の際に競合他社よりも有利になる可能性があります。

また、特に若い世代は、企業の社会貢献活動を高く評価する傾向があり、CSRに力を入れている企業に対して好印象を持つことが多いです。

今の時代、優秀な人材を引き寄せるための活動は必要不可欠です。社会貢献によって企業イメージを高め、それが従業員満足度や口コミによってさらに拡大していくといったサイクルによって、企業の採用活動も効率的になります。

CSR活動を行うデメリット

多くの企業はCSRをビジネス戦略の一部として取り入れ、より良い社会作りに貢献しています。しかし、こういった目的を持つCSR活動にも、デメリットとなる側面が存在します。

CSRのデメリットには主に下記のようなものが挙げられます。

・品質管理コストや福利厚生費が増える
・人手不足になる


経営資源や人手が限られている中小企業にとっては、CSR活動を進めるうえでのデメリットは無視できない要素となりえます。

それぞれのデメリットについて、下記で詳しく解説していきます。

品質管理コストや福利厚生費が増える

CSR活動を行うことで、業績に影響が出る可能性が高まります。これは、人件費の増加や、エコフレンドリーな材料の使用による製造コストの上昇、販売や流通コストの増加などが主な理由です。

取引先や消費者に安心・安全な製品を提供するための品質管理コストが増加したり、従業員が働きやすい環境を作るために福利厚生費が増える場合があります。

従業員がCSR活動に参加する時間は、本来の業務に充てられる時間が減少します。その結果、短期的には売上が減少する可能性があります。社内での環境保全活動や地域社会への貢献活動など、本業とは別の業務に従業員が時間を割く必要が出てきます。

CSRに取り組むには、従業員に対する継続的な教育やトレーニングが必要です。これには費用と時間がかかり、その分、本業に集中できる時間が減少する可能性があります。新入社員へのCSR教育、既存社員への研修などが必要になる場合もあります。

CSR活動のデメリットを減らすためには、事前にしっかりとした計画とコスト管理の体制を整えることが重要です。特に中小企業では、資金面での余裕が少ないため、失敗するリスクが高くなります。そのため、自社の経営状況をしっかりと把握した上で、CSR活動を進めるかどうかを慎重に考える必要があります。

人手不足になる

CSR(企業の社会的責任)の取り組みには一定のリソースや人材が必要となることから、特に中小企業を中心に「人手不足」になるというデメリットがあります。

日本の企業環境では、人手不足の問題が既に深刻化している中、CSR活動を積極的に推進しようとすると、それだけでなく本業の業務量や負担が増加し、結果として生産性や業務効率が低下するリスクが考えられます。

例えば、職場からCSR活動に参加する場合、その分の業務が止まってしまう可能性があり、これが継続的に行われると企業の業務全体に影響を与える可能性が高くなってしまいます。

こういった「人手不足」をCSRのデメリットとして感じてしまうため、特に中小企業ではこの問題がより切実になっています。しかし、一方でCSR活動は、中長期的には企業の価値を高め、優秀な人材の獲得にも繋がるため、総合的に判断することが必要となります。

人手不足の問題を解決するための対策として、生産性の向上、業務フローの最適化、個別の業務の見直しといった取り組みが推奨されています。本業の効率化を図ることで、CSR活動への投資も柔軟に行えるようになります。

短期的な視点では課題が多いかもしれませんが、中長期的なビジョンを持ち、適切なバランスを取りながら取り組んでいくことが重要でしょう。

CSRを取り組むうえでの注意すべきポイント

企業がCSRに取り組む際、単なる「一過性のイベント」ではなく、「持続可能な成果」を生むものにするためには、事前の計画から運用、実施後の評価まで、全体を通じて注意すべきポイントがあります。

主に注意すべきポイントは下記の通りです。

・自社に合ったCSR活動を行う
・必要なコストと得られるリターンを分析する
・本業のリソースを過剰に割り当てない
・運用体制とCSR担当者の業務を見直す
・CSRの成果やプロセスをステークホルダーに伝える
・定期的な効果検証と改善を行う


それぞれの注意すべきポイントについて、詳しく解説していきます。

自社に合ったCSR活動を行う

CSR活動を行う際には、自社の得意分野を活かしましょう。自社が取り組むべきCSR活動を選ぶ際には、社会が求めていることと自社のスキルや経験をマッチングさせることが重要です。自社の強みを生かしながら社会に貢献できるテーマを選びましょう。これにより、CSR活動がより効果的で、説得力のあるものになります。

また、自社のビジネスモデルや製品に合ったCSR活動を考えることも重要です。例えば、自動車メーカーであれば環境保護や安全運転、アパレル企業なら環境への配慮や社会支援などが考えられます。このように、自社の特性にマッチしたCSR活動を選ぶことで、企業イメージも向上します。

ただし、テーマを決めたら次はコストについてもしっかりと考えましょう。たとえ社会貢献に繋がる企画でも、予算がかかりすぎてしまうと実現が難しくなる場合があります。特に、環境対策などでは大規模な生産体制の改善が求められることもあり、そのための費用をしっかりと見積もる必要があります。

そのためには、巨大な予算や人員を必要としないCSR活動も視野に入れましょう。例えば、地域コミュニティでのイベントやSNSを使った小規模なキャンペーンなど、手軽で効果的な方法も存在します。

必要なコストと得られるリターンを分析する

CSR活動もビジネスの一環です。そのため、CSR活動にかかるコストと得られるリターンをしっかりと分析する必要があります。リターンには形に残るものから、企業イメージの向上といった無形のものまで様々ですが、この2つのバランスを取ることがCSR活動を成功させるためには必要です。

例えば、環境保護活動を行う場合、そのコストはリサイクル設備の導入費用や運営費になります。一方で、リターンとしては、製品がエコフレンドリーと認知されることで売上が伸びる可能性や、企業イメージの向上が考えられます。これらを具体的に数値で出して、どれだけの効果が見込めるのかを分析しましょう。

CSR活動に投資する以上、それがどれだけの「価値」を企業にもたらすかをしっかりと分析し、活動にかかるコストと、それによって得られる有形・無形のリターンを天秤にかけ、最も効果的な方法で取り組む必要があります。

本業のリソースを過剰に割り当てない

中小企業がCSR活動に取り組む場合、範囲を広げすぎないように注意しましょう。大企業と違って、中小企業は経営資源が限られています。人手も資金もほどほどです。そのため、CSR活動に力を入れすぎると、その他の業務に影響を与える可能性が高くなります。

例えば、地域社会との連携を強化するという目的で、いくつものプロジェクトを同時進行させようとした場合、人員が割り当てられなくなり資金も枯渇し、最悪の場合は本業にも悪影響を及ぼすことになりかねません。そうならないためにも、最初はスモールスタートで進めることが重要です。

一つ一つのプロジェクトに資源を集中させ、成功体験を積み重ねることで、経営全体にもプラスに働きます。

運用体制とCSR担当者の業務を見直す

CSR活動に取り組むには、ただ計画を立てるだけではなく、その運用体制をしっかりと考える必要があります。また、CSR担当者の業務負担も考慮しなければなりません。

まずは、具体的なCSRプランを企画した上で、それをどう広め、どう実施するかの体制を作る必要があります。これには各部門からメンバーを選び、情報管理や発信、さらには活動の推進を行います。さらに、企画が人手を必要とする場合、それに伴うコストや作業フローも詳細にまとめることが必要です。

例えば、CSRに特化した部門を新設すると、その部門が全体のCSR活動を牽引できます。もし部署設置が難しい場合は、外部の専門家、例えば弁護士や公認会計士、税理士などを探し、特定の業務を依頼する方法もあります。これによって、既存の従業員のリソースが無くなるリスクを最小限に抑えられます。

CSR活動の成功は、運用体制が整っているかどうかが大きく影響します。計画立案から実施、報告までのフローを明確にし、必要なリソースをしっかり確保することが重要です。

CSRの成果やプロセスをステークホルダーに伝える

CSR活動の成果やプロセスをしっかりとステークホルダーに伝えることで、企業の信頼性を高めることにに繋がります。

情報発信を定期的に行うことで、企業が何に取り組んでいるのか、何を重視しているのかが見えるようになり、ステークホルダーとの信頼関係が強くなります。これにより、企業価値も向上する可能性が高くなるのです。

具体的には、企業の公式サイトでの情報発信でCSRレポートを掲載し、詳細を分かりやすく説明します。

ほかにも、新聞やWebメディア、テレビ、ラジオといった様々なプラットフォームでの情報提供も可能です。社外に情報を広めるためには、社内報や公式のSNSも有効です。SNSの運用などは、従業員も活動に参加しやすくなります。

情報発信は単なる「報告」以上の価値があります。企業とステークホルダーが一体となって目標に向かう力を生むコミュニケーション方法です。多くの媒体とメディアをうまく活用し、情報を戦略的に発信することで、CSR活動自体の効果を最大限に高めることができます。

定期的な効果検証と改善を行う

成功するCSR活動には、定期的な効果検証と改善が必ず必要になります。

企業がCSRに取り組む場合、その活動が実際にどれほど効果を上げているかを把握することが大切です。その理由は主に2つです。

1つ目は、継続的に活動を改善していくためには、PDCAサイクルに基づいて定期的にレビューすることが欠かせないということです。

2つ目は、ステークホルダーとの信頼関係を深め、より多くの人々に対する価値を提供するためです。

効果検証の方法としては、例えばイベントを開催した場合、参加者からのアンケートを通じて意見や感想を集めることができます。ほかにも、新聞やWebサイトなどでの書き込みや評価をチェックすることで評価することも可能です。

Twitterなどのソーシャルメディアでキーワードやトレンドを調査することで、一般の反応を把握するということも効果的です。

CSR活動が終わったら、その成果や反省点をしっかりとまとめ、社内外に報告しましょう。特に公式Webサイトでの報告は広く情報を共有するために重要です。

CSR活動は、一回のイベントやプロジェクトが終了したら終わりではありません。その都度効果をしっかりと検証し、反省点や改善点を明確にして次のステップに活かすことが重要です。客観的な評価によって企業自体も成長し、より多くのステークホルダーに対して価値を提供できるようになります。

CSRに取り組む企業の事例

下記の企業の具体的なCSRの事例を通して、CSR活動にどのように取り組んでいるのか詳しく解説していきます。

・富士フィルム
・ブリヂストン

富士フィルム

富士フィルムは、多岐にわたる商品を持つ企業としても知られていますが、CSR活動も非常に幅広く行っています。

富士フィルムのCSR活動は、企業理念をしっかりと実践する形で行われています。独自のCSR方針を全社員に浸透させ、日常業務でも社会貢献を心がける文化を作っています。ビジョンが明確であることで、全社員が方向性を持って取り組むことができます。

誠実かつ公正な事業活動を通じて、社会の持続可能な発展に貢献するという考え方をもっており、「自然環境」「学術・教育」「文化・芸術・スポーツ」「健康」の主に4つの分野で活動しています。

1983年に設立された「公益信託富士フィルム・グリーンファンド(FGF)」は、10億円を超える資金で自然保護活動を支援しています。その活動内容は、都市近郊の緑地保全から、研究、写真展、シンポジウムまで幅広くなっています。

また、富士フィルムは、新型コロナウィルスに対する取り組みも行っています。唾液を用いた高精度なPCR検査の開発や、フェイスシールドの防曇フィルム提供、さらにはAI技術を用いた診断支援など、幅広い製品ラインナップを活用したCSR活動が行われていました。

富士フィルムは明確なビジョンをもとに、幅広い分野でCSR活動を行っています。こういった姿勢は、CSR活動におけるモデルケースと言えるでしょう。

ブリヂストン

大手タイヤメーカー「ブリヂストン」は、持続可能な社会の実現と社会課題の解決を目指して、様々なCSR活動に積極的に取り組んでいます。

ブリヂストンは自社の強みや特性を活かして、「Mobility(モビリティ)」「People(一人ひとりの生活)」「Environment(環境)」の3つの主要なテーマに焦点を当てています。2017年には、「Our Way To Serve」というCSRの方針を掲げ、日本国内だけでなく、海外での取り組みも積極的行っています。

そのほかにも、2007年には、「22の課題」を設定し、環境、品質、安全などの根本的な問題に取り組んでいます。

これらの活動は、持続可能な社会づくりに貢献すると同時に、企業としての信頼とブランド価値も高めています。

まとめ

CSRは企業が社会や環境に対して持つ責任をどのように果たしていくか、という観点から幅広く活動を行うものです。日本でこの考え方が受け入れられるようになった背景には、企業の不祥事や環境問題の深刻化、グローバル化の進行、そして消費者や市民の企業に対する期待値が変わったことなどがあります。

CSRは単なるトレンドや一過性のものではありません。企業が持続的に成長し、社会に貢献するための重要な手段となっています。しかし、成功するためには様々な要素が影響を与えるため、効果的なCSR活動には戦略的なアプローチと継続的な取り組みが必要です。

この点を理解し、自社に合ったCSR活動を見つけて取り組むことが、最終的に企業価値を高めることに繋がります。


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