アンダーマイニング効果とは?現象の具体例と逆のエンハンシング効果も解説
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会社が社員に与えた報酬やノルマによって、モチベーションが上がるどころか、下がることがあります。これがアンダーマイニング効果です。
アンダーマイニング効果を起こしやすい環境をそのままにしていると、生産性や売上にも影響してしまうでしょう。
今回はアンダーマイニング効果とは何か、原因や対処法、注意点まで解説します。アンダーマイニング効果を起こさない制度づくりの参考にしてください。
制度や組織風どの改善をすることで、アンダーマイニング効果が起こりにくくなるでしょう。
目次
アンダーマイニング効果とは
アンダーマイニング効果は、過正当化効果とも呼ばれ、動機付けが変わることで、やる気がなくなる現象です。
子どものころ楽しくゲームをして遊んでいたら、「勉強が終わるまでゲームは禁止」のように制限された体験はないでしょうか。このように内発的に動機付けされていた行動が、外的に報酬や制約を与えられると、やる気がなくなる経験が、アンダーマイニング効果です。
ビジネスでも過剰なノルマの設定などの要因で、アンダーマイニング現象が発生します。アンダーマイニング現象が起きると、個人のモチベーションは低下し、業務効率が下がります。そのような社員が増えることで、生産性の低下につながりかねません。
そのため、アンダーマイニング現象が起きるような制度がある場合には、制度改正を通じて、生産性の向上につながります。
アンダーマイニング効果についての実験
アンダーマイニング効果を実証する実験として、1971年に実施されたエドワード・L:デシと、マーク・ R・レッパーによる実験があります。
この実験では大学生を2つのグループに分け、パズルを解いてもらいました。あるグループにはパズルを解くたびに報酬を与え、もう一つのグループには何も与えませんでした。
その結果、報酬を与えたグループは与えなかったグループと比較して、パズルに触れる時間が短くなったのです。パズルを解くことが「報酬を得る手段」になってしまったことでモチベーションが低下したことが要因として考えられるでしょう。
エンハンシング効果とは
エンハンシング効果とは、アンダーマイニング効果とは逆に、外発的動機付けによって、内発的な意欲がより高まる効果です。「尊敬している上司から認められたくて、モチベーションが上がる」などはエンハンシング効果が関わっています。
そのため、外発的動機付けがアンダーマイニング効果の原因とは限りません。内発的動機と外発的動機がうまく関連し、エンハンシング効果が起きれば、モチベーションを高められ、生産性の向上につなげられます。
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アンダーマイニング効果が起きる原因
アンダーマイニング効果が起きる原因は、内発的動機が外発的動機に変化し、自己決定感や自己優位性を損なうることです。
内発的動機とは個人の好奇心や関心、向上心から生まれる動機です。「接客業が楽しい」のようにやりがいをはじめとした自発的な気持ちが該当します。外発的動機とは、自分以外の外部から与えられる動機です。具体的には「誰かに褒められる」「報酬がもらえる」「罰則がある」などの要因があります。
動機に変化が生まれることで、自己決定の権利が奪われることがモチベーション低下につながります。そのため、アンダーマイニング効果が起きないようにするには、「他者からコントロールされている」と感じさせないことが重要です。
アンダーマイニングが起きる具体的な事例
ある仕事を「やりがい」から取り組んでいたときに、「報酬や昇進」や「罰則を回避したい」という別の動機に変わってしまったために、モチベーションが下がってしまいます。具体的には以下のようなケースがあるでしょう。
・報酬
・昇進
・周囲からの評価
・ノルマや締め切り
・やらされていると感じさせる指示
報酬や昇進などは外発的な動機付けにより、内発的動機が損なわれると、アンダーマイニング効果が発生します。
周囲からの評価はそれ自体がアンダーマイニング効果に直結しません。しかし、業績や業務効率、能力からの評価がしかされない環境であれば、アンダーマイニング効果が起きてしまうでしょう。
ノルマや締切は、短期的な外発的要因としては効果がある場合もあります。しかし、その効果は短期的で、厳しすぎるものは、アンダーマイニング効果につながってしまいがちです。
また、社員にやらされていると感じさせてしまうと、本人の自己決定感を損ない、積極性や自主性が下がってしまいます。
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アンダーマイニング効果を防ぐ方法
アンダーマイニング効果を防ぐためには、「やらされている感」をなくし、アンダーマイニング効果につながる働きかけをなくすことが重要です。具体的にどのような取り組み方があるか解説します。
自発的な行動を促す
アンダーマイニング効果を防ぐためには、自発的な行動を促すことです。
具体的には、上司から過剰な指示や管理を避け、社員本人にある程度の決裁権や裁量を与えることがあるでしょう。社員が自分で決められれば、社員の自己決定感や有能感を損ないません。
行動を褒める
社員を褒めるときは、行動を褒めるようにし、本人に直接伝えるようにしましょう。褒めるときには、取り組みや努力などを褒められることでパフォーマンスが上がるとされています。
ただし、褒めるときには、形だけではなく、本心から伝えることが大切です。また、褒める上司や同僚に対して社員が敬意を感じていない場合には、効果を発揮しません。
肯定的な励ましを受ける
「褒めることがない」という場合には、無理に褒めるのではなく、肯定的に励ますことを心がけましょう。肯定的な励ましや感謝の言葉は相手のモチベーションを高める効果があります。
褒めるときと同様、本心から伝えることを心がけ、他人とは比較しないことが大切です。
内発的動機付けを行う
内発的動機がない社員の場合は、まず内発的動機付けを行い、自立を促す必要があります。特に自己効力感や自己肯定感が低い社員の場合、自発的な行動を促しても行動につながらないでしょう。
内発的動機付けをするためには、達成経験を積み、成果を出すことが重要です。できたことや努力を褒めるプロセスを得ることで、徐々に内発的動機が生まれ、自発的な行動を促しやすくなります。
関連記事:自己効力感とは?自己肯定感との違いや種類、高め方
過度なノルマや競争をさせない
過度なノルマや罰則はアンダーマイニング効果を引き起こすため、ノルマや競争は極力させないようにしましょう。競争やノルマは短期的にモチベーションを上げる効果はあってもすぐに効果がなくなります。
しかし、ノルマをただなくしても、モチベーションにはつながりません。自発的な目標設定ができるよう、人事評価制度の改革も考える必要があるでしょう。
アンダーマイニング効果対策の注意点
アンダーマイニング効果対策は、取り組み方を間違えると逆効果です。アンダーマイニング効果対策をするうえで、意識するべき注意点について解説します。
関係性ができていない場合には効果がない
アンダーマイニング効果対策は、対象の社員と関係性ができていない場合には、効果が期待できません。
その場合は、まずお互いの性格や個性を理解し、関係性を構築することから始める必要があります。
本心からアプローチする
アンダーマイニング効果に陥らないために、社員を褒めることは重要です。しかし、褒める場合でも本心から伝えなければ、逆効果になります。
結果だけではなく、取り組みの過程や行動を見るようにし、具体的に褒められることはないか、探してみましょう。
社員を過剰に監視しない
アンダーマイニング効果対策に取り組むときは、社員を監視するのではなく、見守るという姿勢が重要です。
たとえば、社員の仕事をサボっていないか監視し、見つけた場合には咎めるようなことが挙げられます。業務上必要な場合もありますが、「見張られている」と感じることで、アンダーマイニング効果に陥ってしまいかねません。
社員の状況は把握しつつも、必要に応じてアドバイスを行う程度にしておき、社員にある程度の自由を与えるようにしましょう。
アンダーマイニング効果のまとめ
アンダーマイニング効果は外発的動機付けによって、社員の自己決定感や有能感を損なうことで、社員のモチベーションを下げる現象です。このアンダーマイニングは日常だけではなく、会社の評価制度などの要因でも起こりえます。
そのため、組織の風土や制度がアンダーマイニング効果を起こしている場合には、それらを見直すことで、生産性向上につながるでしょう。
360度評価は上司や部下、同僚など複数人から評価する制度です。より客観的かつ信頼性が高い評価をもらえるため、アンダーマイニング効果にも陥りにくい評価制度を整えられます。
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