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人事考課とは?評価基準や項目、人事評価との違いや効果的な評価手法を解説

人事考課は、企業が社員の業績や能力を正確に評価し、処遇につなげるための重要な制度です。

しかし、人事考課を正しく行うためには多くの課題があり、効果的に運用するためには十分な知識と準備が必要です。

この記事では、人事考課の基本的な考え方から評価基準、効果的な手法まで、人事担当者が押さえるべきポイントを解説します。

人事考課とは

人事考課は、企業が社員の仕事ぶりを評価する重要な仕組みです。

社員の業績、能力、態度などを総合的に判断し、給与や昇進に反映させる役割があります。

以下では、人事考課の基本的な内容や特徴、そして人事評価との違いについて解説します。

企業が決めた基準で社員を評価する仕組み

人事考課とは、企業が独自に設けた基準に基づいて、社員の仕事ぶりや能力、態度を総合的に評価する仕組みです。

人事考課の主な特徴は以下の通りです。

特徴内容
実施頻度多くの企業で年1〜2回程度
評価の観点仕事の成果、能力、態度など複数の面から評価
評価の段階通常5段階程度で評価

評価基準は、一般的に次の3つに分かれます。また、詳細は「人事考課の評価基準と項目」の章で解説しています。

①業績考課:数字で表せる成果を評価
②能力考課:仕事に必要な技能や知識を評価
③情意考課:仕事への取り組み姿勢を評価

給料やボーナス、昇進を決める際の判断材料となる

人事考課は、社員の処遇を決めるための重要な判断材料です。

企業は人事考課の結果をもとに、給料やボーナスの額、昇進について決定することが多くなっています。

人事考課の結果が処遇に反映される主な項目は以下の通りです。

処遇項目反映のされ方
給料基本給の昇給率や手当の増減に影響
ボーナス支給額の増減に直結
昇進・昇格上位職への登用や等級の上昇の判断材料

人事考課が反映されるまでの流れは、次の通りです。

①評価結果の集計:各評価項目の点数を合計
②総合評価の決定:点数に基づいてS、A、B、C、Dなどのランクを付ける
③処遇への反映:ランクに応じて昇給率やボーナス係数を決定


また、近年では、これまでの「年功序列型」から「成果主義型」の評価へとシフトする企業が増えています。こうした変化に対応するため、人事考課制度も柔軟に変化させていく必要があります。

人事考課と人事評価の違い

人事考課と人事評価は、多くの企業で同じ意味で使われることがありますが、厳密には異なる考え方となっています。

主な違いは以下の通りです。

項目人事考課人事評価
定義従業員の処遇を目的に能力などを査定従業員の業務や業績について判断
目的給与・賞与・昇進の査定能力開発・育成、適材適所の配置

人事考課と人事評価の関係性の特徴は、「人事評価は人事考課を含む広い考え方」ということです。

企業によって定義や使い分けが異なる場合があるため、制度設計の際は自社の方針に合わせて明確に区別することが重要です。

人事考課の目的

人事考課には、企業と社員のお互いにとって重要な目的があります。

適切に実施された人事考課は、評価を通じて社員のモチベーション向上や組織の活性化につながるだけでなく、企業の成長のための基盤にもなります。

以下では、人事考課の主な目的について詳しく見ていきましょう。

公平で納得感のある人事査定を行う

公平で納得感のある人事査定を行うことで、社員のモチベーションアップや組織の活性化につながります。

主に公平な人事査定を行うためのポイントは、次の通りです。

・明確な評価基準の設定
・評価者訓練の実施
・多面的な評価の実施
・評価結果のフィードバック

公平な査定を行うためには、評価基準を明確にしたうえで、社員に事前に周知することが重要です。例えば、営業職の場合、売上目標の達成度や新規顧客獲得数などの具体的な数値目標を設定し、それらの達成度合いを評価基準とすることで、客観的な評価が可能になります。

また、評価者の主観による偏った評価を防ぐため、評価者訓練を実施することも効果的です。評価者訓練では、評価基準の内容や評価方法の統一、よくある評価エラーとその対処法などを学びます。

社員のやる気を高めて組織を活発化させる

人事考課の内容によって、社員のモチベーションを高めることができます。

モチベーション向上につながる人事考課のポイントは、次の通りです。

・明確な目標設定
・適切なフィードバック
・公平な評価と考課結果の処遇への反映
・成長機会の提供

例えば、MBO(目標管理制度)を導入し、社員自身が目標を設定することで、主体的に業務を進めてもらうことができます。

また、評価結果を昇給や昇進に適切に反映させることで、社員それぞれの努力が報われる仕組みを作ることができます。ただし、評価と処遇が連動するルールは透明性を保つようにしましょう。

会社の理念や方針を社員と共有する

人事考課では、企業の理念や方針を社員と効果的に共有することができます。

企業の理念や方針を人事考課に反映させる主な目的は、以下の通りです。

・企業が目指す方向性を全社員に浸透させる
・日常業務と企業のビジョンを結びつける
・社員の行動基準を明確にする
・企業文化を醸成し、組織の一体感を高める

具体的には、人事考課の評価項目や基準に企業の理念や方針を組み込むことで、これらの目的達成に繋げることができます。

例えば、「顧客満足度の向上」を企業方針とする場合、顧客対応の質や顧客からのフィードバックを評価項目に含めることで、社員の意識を顧客志向に向けることができます。

また、人事考課の面談時に企業の理念や方針について上司と部下で対話する機会を作ることも重要です。こういった対話によって次のような効果があります。

・個人の業務と企業全体の目標との関連性を認識させる
・社員の意見や提案を聞き、双方向のコミュニケーションを促進する

人事考課を通じて企業の理念や方針を社員と共有することで、組織全体の方向性が統一されます。

人事考課の評価基準と項目

人事考課を適切に行うためには、明確な評価基準と項目を設定する必要があります。

一般的に、人事考課は「業績考課」「能力考課」「情意考課」の3つの方法で行われます。

これらの基準は、社員の成果、スキル、態度を多角的に評価するために使用され、職種や役職に応じて評価基準を調整することで、より効果的な評価ができるようになります。

以下では、各評価基準の特徴や具体的な評価項目、そして職種別の評価基準の設定方法について詳しく解説していきます。

「業績考課」は数字で見える成果や達成度を評価する

業績考課は、社員が達成した具体的な成果や、目標に対する達成度を数値化して評価します。

この方法は、誰が見ても分かりやすい評価基準となるため、公平性が高いのが特徴です。

業績考課の主なポイントは、次の通りです。

・数値目標を設定する
・達成度を確認する
・期間ごとに比較する
・部門や職種に応じた指標を選ぶ

例えば、業績考課で一般的に使用される評価指標には、次のようなものがあります。

部門評価指標の例
営業売上高、新規顧客獲得数、商談成約率
製造生産量、不良品率、納期遵守率
カスタマーサポート問題解決率、顧客満足度、対応時間
人事採用達成率、離職率、研修実施回数

注意点として、業績考課だけでは評価が偏る可能性があります。

というのも、短期的な数字を追いかけてしまうことで、長期的な成長や顧客満足度が犠牲になってしまうケースもあります。そのため、能力考課や情意考課と組み合わせて、総合的に評価することが重要です。

「能力考課」はスキルや将来性を見極める

能力考課は、社員の仕事に必要なスキルや知識、そして将来性を評価する項目です。

業績考課が短期的な成果を見るのに対し、能力考課は中長期的な視点で社員が成長する可能性を評価します。

能力考課の主なポイントは、次の通りです。

・職務遂行能力を評価する
・知識やスキルの習得度合いを確認する
・潜在能力や将来性を見極める
・職位や役割に応じた評価基準を設定する

例えば、能力考課で一般的に使用される評価指標には、次のようなものがあります。

能力の種類具体例
保有能力専門知識、技術スキル、資格
発揮能力問題解決力、リーダーシップ、コミュニケーション力
潜在能力学習意欲、適応力、創造性

注意点として、能力考課は業績考課に比べて主観的になりやすい傾向があります。

例えば、「コミュニケーション能力が高い」という評価は、評価者によって基準が異なる可能性があります。そのため、できるだけ具体的な行動例を基準に設定することが重要です。

「情意考課」は仕事への姿勢や意欲を評価する

情意考課は、社員の仕事に対する態度や意欲、行動を評価する項目です。

数字で表しにくい面を評価するため、企業の価値観や方針を反映させやすい特徴があります。

情意考課の主なポイントは、次の通りです。

・仕事への取り組み姿勢を評価する
・チームワークや協調性を確認する
・企業理念や方針と整合性が取れているかを確認する
・将来成長する可能性の判断材料にする

例えば、情意考課で評価される項目には、次のようなものがあります。

評価項目内容
規律性ルールや時間を守る姿勢
責任性自分の仕事を最後まで遂行する態度
協調性チームでの協力や人間関係の構築力
積極性自ら進んで仕事に取り組む姿勢

注意点として、情意考課も評価者の主観が入りやすい傾向があります。

例えば、「積極性がある」という評価は、評価者によって基準が異なる可能性があります。

また、情意考課の結果だけで処遇を決めると、公平性に欠ける可能性があるため、業績考課や能力考課とバランスよく組み合わせて総合的に評価しましょう。

職種や役職に合わせた評価基準の決め方

職種や役職によって求められる能力や成果は異なるため、それぞれに適した評価基準を設定することが重要です。

適切な基準を設けることで、公平で効果的な人事考課ができるようになります。

下記が、職種別の評価基準の一例です。

職種評価項目例
営業職売上達成率、新規顧客獲得数、商談成約率
技術職技術力、問題解決能力、特許出願数
事務職事務処理速度、正確性、業務改善提案数
管理職リーダーシップ、部下育成力、予算管理能力

役職別では、下記の評価ポイントを参考にしてみてください。

役職主な評価ポイント
一般社員基本的なスキルや業務遂行能力
主任・係長チームマネジメント力、業務効率化能力
課長部門戦略立案力、目標達成のための組織運営力
部長以上経営視点での判断力、全社的な成果への貢献度

評価基準を決める際は、下記の手順を踏みましょう。

①職務内容の分析:各職種・役職の主な責任と期待される成果を明確にする
②必要な能力の洗い出し:職務遂行に必要なスキルや能力を洗い出す
③評価項目の設定:具体的で測定可能な評価項目を決める
④評価ウェイトの決定:各項目の重要度に応じて配点を決める

企業の状況や市場環境の変化に応じて、求められる能力や成果も変わってくるため、評価基準は定期的に見直すようにしましょう。

人事考課で活用できる効果的な評価手法

人事考課を効果的に実施するためには、適切な評価手法を選ぶことが重要です。

近年、従来の評価方法に加えて、より客観的で多面的な評価を行うための新しい手法も注目されています。

以下では、人事考課で活用できる代表的な評価手法について解説します。

目標管理制度(MBO)、360度評価、コンピテンシー評価、そしてOKRなど、それぞれの特徴や活用方法を理解することで、自社に合った評価手法を選択できるようになります。

目標管理制度(MBO)

目標管理制度(MBO:Management by Objectives)は、社員が自分自身で目標を設定し、その達成度を評価する人事考課の手法です。

MBOを活用することで、社員の主体性を引き出しながら、企業の目標達成に向けて効果的に取り組むことができます。

MBOの主なポイントは、次の通りです。

・社員自身で目標設定を行う
・上司と目標を擦り合わせる
・定期的に進捗確認を行う
・目標達成度によって評価する

MBOは、下記のような流れで進めましょう。

段階内容
1. 目標設定社員が自ら目標を設定し、上司と相談して最終決定
2. 実行日々の業務で目標達成に向けて取り組む
3. 中間フォロー定期的に進捗を確認し、必要に応じて目標を調整
4. 評価期末に目標の達成度を評価

MBOには、下記のようなメリットがあります。

・社員の主体性と意欲が向上する
・企業目標と個人目標の整合性が取れる
・公平で客観的な評価が行える
・コミュニケーションが活性化する

一方で、下記のような注意点もあります。

・短期的な成果に偏りがちになる
・目標設定に時間がかかる

こういった課題を無くすためには、長期的な視点を含めた目標設定や、部門間での目標の設定なども検討してみましょう。

360度評価

360度評価は、従来の上司による一方向の評価ではなく、上司、同僚、部下、さらには取引先など、さまざまな角度から評価を行う手法です。

この方法を使うことで、より公平で多面的な評価が可能になります。

360度評価の一般的な流れは、次の通りです。

段階内容
1. 評価項目の設定評価する能力や行動を明確にする
2. 評価者の選定上司、同僚、部下など評価者を決める
3. 評価の実施各評価者が評価シートに記入する
4. 結果の集計・分析評価結果をまとめ、傾向を分析する
5. フィードバック結果を本人に伝え、今後の改善点を話し合う

360度評価には、次のようなメリットがあります。

・客観的で公平な評価ができるようになる
・評価される側に気づきと成長の機会になる
・組織内のコミュニケーションが活性化する

一方で、下記のような注意点もあるため、事前に対策を取っておきましょう。

・評価に時間と手間がかかる
・評価者の匿名性の確保が難しい
・評価結果の解釈や活用に専門性が必要
・評価疲れや形だけの制度になってしまうリスク

これらの課題に対処するためには、評価項目を絞り込んだり、評価の頻度を適切に設定したりすることが大切です。また、結果の取り扱いには十分に配慮しましょう。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価は、高い成果を上げている社員に共通する行動特性を基準として、社員の能力や行動を評価する手法です。

この評価方法を導入することで、企業の求める人材像を明確にし、より効果的な人材育成が可能になります。

コンピテンシー評価の一般的な流れは、次の通りです。

段階内容
1. コンピテンシーの分析高業績者の行動特性を分析
2. 評価基準の設定抽出したコンピテンシーをもとに評価項目を決定
3. 評価の実施設定した基準に基づいて評価
4. フィードバック結果を本人に伝え、改善点を共有
5. 能力開発評価結果をもとに育成計画を立案

コンピテンシー評価には、次のようなメリットがあります。

・成果につながる行動が明確になる
・客観的な評価基準の設定ができる
・社員の成長につながる
・企業文化や価値観が浸透する

一方で、下記のような注意点もあります。

・コンピテンシーの抽出に時間と労力がかかる
・環境変化に応じた見直しが必要
・評価者の理解と訓練が重要
・数値化しにくい能力の評価が難しい場合がある

これらの課題に対処するためには、定期的にコンピテンシーを見直したり、評価者への十分な研修を行いましょう。

OKRを用いた目標設定と評価

OKR(Objectives and Key Results)は、目標設定と評価を効果的に行うための手法です。

企業全体の目標から個人の目標まで、一貫性を持って設定し、その達成度を評価します。

具体的には、OKRは以下のような作りになっています。

要素内容
Objectives(目標)達成したい定性的な目標
Key Results(重要な結果)目標達成を測る定量的な指標

OKRの設定と評価の流れは、以下の通りです。

①:企業全体のOKRを設定
②:部門ごとのOKRを設定
③:個人のOKRを設定
④:定期的(週1回など)に進捗を確認
⑤:期間終了時に達成度を評価
⑥:結果を分析し、次期のOKR設定に活用

OKRには、下記のようなメリットがあります。

・企業の方向性と個人の目標の整合性が取れる
・前向きな目標設定が成長につながる
・進捗の可視化によってモチベーションが上がる
・部門間の連携が強化される

OKRを使用した評価では、目標達成のプロセスや、挑戦的な目標へのチャレンジ精神も重視されます。そのため、数値目標を達成できなかった場合でも、その過程での学びや成長を評価することが大切です。

人事考課表の書き方のポイント

人事考課表は、評価の記録と内容の共有においてとても重要な役割を持っています。

適切に作られた考課表は社員を成長させるためにも効果的ですが、正しく作成するには一定のスキルが必要であることや、それだけでなく注意点もあります。

以下では、効果的な人事考課表の書き方について、具体的なポイントを解説します。

具体的な出来事をもとに書く

人事考課表を作成する際は、具体的な出来事をもとに記述することが重要です。

抽象的な表現ではなく、実際に起こった事実に基づいて評価を行うことで、より公平で納得感のある評価につながります。

例えば、下記が記述例です。

悪い例良い例
営業成績が良かった6月の新規顧客獲得キャンペーンで、目標20社に対し、30社の新規契約を獲得した
チームワークが優れているプロジェクトにおいて、メンバー間の意見対立を調整し、納期内に成果物を完成させた
顧客対応が丁寧クレーム対応時に、顧客の要望を的確に把握し、24時間以内に解決策を提示した。

具体的に書く際には、下記のような点には注意しましょう。

・個人情報やプライバシーに配慮する
・ネガティブな出来事も客観的に書く
・推測や憶測を避け、事実のみを記載する
・評価期間内の出来事に焦点を当てる

具体的な出来事をもとに人事考課表を作成することで、評価の質が上がり、被評価者の納得度も高まります。さらに、この次期の目標設定や育成計画の立案にも役立ちます。

数字や根拠を使用して評価する

人事考課表は数字や具体的な根拠を用いて評価することで、評価の客観性と公平性が高まり、被評価者の納得度も上がります。

数字や根拠を使用して評価するためのポイントは、次の通りです。

・具体的な数値目標を設定する
・達成度を数値化する
・比較可能なデータを活用する
・客観的な事実を記述する

下記が具体的な評価例です。

評価項目悪い例良い例
売上実績売上が良かった年間売上目標1億円に対し、1.2億円を達成(達成率120%)
業務効率効率的に働いた新しい業務プロセスを導入し、処理時間を前年比20%短縮
顧客満足度お客様から喜ばれた顧客満足度調査で5段階評価の4.8を獲得(前年4.5から向上)

一方で、下記のような点には注意しましょう。

・適切な指標を選択することが重要
・数字の正確性を確認する
・数字だけを見るのではなく、質的な面も考慮する
・部門や職種に応じた評価基準を設定する

こういった数字や根拠を使用して評価することで、より客観的で説得力のある人事考課が可能になります。

前向きなアドバイスを心がける

人事考課表は前向きなアドバイスを心がけることで、被評価者のモチベーションを高め、今後の成長に活かすことができます。

下記のポイントを意識しましょう。

・良い点を具体的に褒める
・改善点を成長の機会として伝える
・具体的な行動指針を示す
・将来への期待を伝える

具体的には、次のようなアドバイス例があります。

悪い例良い例
報告が遅い今後は週次報告を徹底し、情報共有の速度を上げましょう
プレゼンが下手聞き手を引き付けるプレゼン技術を磨くと、さらに成果が上がるでしょう
チームワークが悪い他部署との連携を強化すれば、プロジェクトの成功率が高まります

前向きなアドバイスを行うための効果的なテクニックとして、次のような方法があります。

・サンドイッチ法(良い点→改善点→良い点)を活用する
・「~すれば」という条件付きの表現を使用する
・本人の意見や考えを聞く機会を設ける
・短期的な目標と長期的なビジョンの両方を示す

前向きなアドバイスを心がけつつ、現実的な課題を曖昧にしないよう、バランスの取れた評価とアドバイスを行いましょう。

今後の期待と課題を明確に示す

今後の期待と課題を明確に示すことで、被評価者がどのように成長していくべきかが明確になり、モチベーション向上にも繋がります。

その際のポイントは、次の通りです。

・具体的な目標を設定する
・短期的、長期的視点の両方を持つ
・企業の方針と個人の成長を結びつける
・実現できる内容であるかを確認する
・本人の強みを活かした期待を示す

期待と課題の示し方の例は、次の通りです。

項目悪い例良い例
期待もっと頑張ってほしい次期は新規顧客獲得数を20%増やすことを期待します
課題コミュニケーション力が足りないチーム内での情報共有頻度を週1回に増やし、連携を強化しましょう

この際、ネガティブな表現は避けるようしましょう。

今後の課題が明確に分かることで、より主体的にキャリア開発に取り組むことができます。

それだけでなく、同時に企業にとっても計画的な人材育成が可能となり、組織全体の生産性の向上につながります。

人事考課で注意すべきポイント

人事考課は正しく実施されれば企業や個人の成長に繋がりますが、その一方で注意すべき点も多くあります。

公平性や客観性が無い評価は、社員のモチベーション低下や不満につながる可能性があります。

以下では、人事考課を行う上で特に気をつけるべきポイントについて解説します。注意点を理解して課題に対処することで、より信頼性の高い人事考課になります。

評価者の好みや感情が反映される可能性がある

人事考課において、評価者の個人的な好みや感情が評価に影響を与えてしまう可能性は常にあります。これは「評価者バイアス」と呼ばれ、公平で客観的な評価を妨げる要因となります。

例えば、この評価者バイアスの一例として、次のような種類があります。

バイアスの種類具体例対策
ハロー効果営業成績が優秀なため、他の評価項目も高く評価してしまう評価項目ごとに独立して評価を行う
寛大化傾向部下との関係悪化を避けるため、甘い評価をつけてしまう評価基準を明確化し、複数の評価者で確認する
中心化傾向評価に自信がなく、中間的な評価ばかりつけてしまう具体的な事実や数値に基づいて評価する
直近効果直近の出来事に引きずられて全体の評価を決めてしまう評価期間全体を振り返り、バランスの取れた評価を心がける

こういった評価者バイアスの影響を減らすためには、以下のような取り組みも重要です。

取り組み内容期待される効果
評価シートの工夫各評価項目に具体的な行動指標を設定する主観的な評価を無くし、評価基準の明確にする
360度評価の導入多角的な視点から評価を行う偏りのない総合的な評価ができるようになる
定期的な評価者研修バイアスの種類と対策について学ぶ機会を設ける評価者の意識やスキルが上がる

評価者バイアスの影響を完全に無くすことは難しいですが、事前に対策を取ることが重要です。

わかりにくい評価基準では社員が納得しない

評価基準が不明確だと、社員の納得度が低下し、モチベーションの低下や不満につながります。

わかりにくい評価基準と改善案について、下記がその一例です。

わかりにくい基準改善案
顧客対応力が高い顧客満足度調査で4.5以上(5点満点)を獲得する
チームワークが良い月1回以上、他部署と共同でプロジェクトを推進する
業務効率が良い定型業務の処理時間を前年比10%短縮する

例えば、評価基準をわかりやすくするためのポイントには次のような方法があります。

・具体的な行動指標を設定する
・数値目標を活用する
・職種や役職に応じた基準の調整を行う
・定期的な見直しと更新を行う

評価基準を周知徹底させることも大切です。年度初めの全体会議で説明したり、評価期間中に進捗確認の機会を作ることで、社員の理解を深めて納得度を高めることができます。

評価する側の経験不足で間違った判断をする

評価者の経験不足は、人事考課の質を低下させることに繋がります。

適切な評価スキルや知識がないと、効果的な評価が難しくなり、社員の不満や組織の生産性を下げてしまう可能性があります。

発生する可能性がある問題例と、その対策は次の通りです。

問題例対策
評価項目の解釈ミス評価基準の詳細な説明資料を作成
感情的な評価具体的な事実や数値に基づく評価の徹底
不適切なフィードバックフィードバック研修の実施
ハロー効果の発生各評価項目を独立して評価する習慣づけ

評価者の経験やスキル不足による問題を防ぐためには、継続的な教育とサポートが必要です。

定期的な研修やフォローアップ、評価結果の検証によって、評価者のスキルを上げることで、より効果的な人事考課が行えるようになります。

人事考課のまとめ

人事考課は、企業と社員の成長のための重要な制度です。本記事の主なポイントを以下にまとめました。

項目内容
人事考課の基本・企業が定めた基準で社員を評価する仕組み
・主に年1〜2回実施
・給与、賞与、昇進の判断材料として活用
人事考課の目的・公平で納得感のある人事査定を行う
・社員のモチベーション向上と組織を活性化させる
・企業の理念や方針を共有する
評価の観点・数値化できる成果を見る「業績考課」
・スキルや将来性で見る「能力考課」
・仕事への姿勢や意欲を見る「情意考課」
効果的な手法・目標管理制度(MBO)
・360度評価
・コンピテンシー評価
・OKRを用いた目標設定と評価

状況の変化に応じて、評価制度を定期的に見直し、改善していくことも重要です。

ぜひこの記事の内容を活かし、自社に最適な人事考課制度を作ってみてください。


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