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人事考課の正しい目標設定方法とは?職種別の例文も合わせて解説

人事考課

人事考課の目標設定は、企業の成長と社員の意欲を上げるための重要な取り組みです。

しかし、効果的な目標を設定するのは簡単ではありません。

正しい目標設定方法を知らないと、社員のモチベーション低下や、企業の方向性とずれた努力をしてしまうといったリスクがあります。

この記事では、人事考課における正しい目標設定の方法について、基本的な考え方から職種別の具体例まで詳しく解説します。

目次

人事考課における目標設定とは

人事考課における目標設定とは、社員が一定期間内に達成すべき具体的な成果や行動を定めることです。

目標設定の基本的な要素は、次の通りです。

【人事考課の目標設定の要素】
・期間:通常6ヶ月や1年単位で設定
・内容:数値目標や行動目標など、明確な基準を設ける
・評価方法:達成度をどう測るかを決める

効果的な目標設定のポイントは、次の通りです。

【効果的な目標設定】
・具体的であること
・達成可能であること
・測定可能であること
・期限が明確であること
・企業全体の目標と整合性があること

これらは詳しく後述していきます。

人事考課の一般的な目標設定の流れは、次の通りです。

【目標設定の流れ】
①:企業全体の目標確認
②:部門ごとの目標設定
③:個人の目標設定
④:上司と部下での擦り合わせ
⑤:最終目標の決定

適切な目標設定は社員の成長意欲を高め、企業の業績向上にもつながります。

人事考課で目標設定を行うメリット

人事考課で目標設定をすると、企業にも社員にも多くのメリットがあります。

以下では、人事考課で目標設定をすることで得られる主なメリットを詳しく説明していきます。

【人事考課で目標設定を行うメリット】
・社員の成長と能力向上を後押しする
・社員のやる気と組織の活力を高める
・客観的な基準で成果を測り評価の納得性を上げる
・全社目標と個人目標の方向性を一致させる

社員の成長と能力向上を後押しする

人事考課ではっきりとした目標があれば、社員は自分が何をすべきかが分かり、能力を高める努力をするようになります。

目標設定が社員の成長を促す理由は、主に以下の3点です。

【社員の成長に繋がる理由】
・目標があると、必要な技能や知識が具体的に見えてくる
・目標達成に向けて計画を立て実行することで、自分で仕事を管理する力が身につく
・目標に向かって頑張る中で、新しい課題や学ぶ機会が見つかる

例えば、営業の社員が「半年間で新しいお客様を10社増やす」という目標を立てた場合、次のような成長が期待できます。

【目標設定による成長】
・商品説明が上手になる
・商品についての知識が深まる
・時間の使い方が上手になる

目標を達成しようと、社員は自分から学んだり経験を積んだりするようになります。

そのため、企業が研修を用意しなくても、社員が自ら能力を高めようとします。

ただし、目標が高すぎるとやる気が下がってしまう可能性があるため、社員の今の能力を考えて、頑張れば達成できそうな目標を立てることが大切です。

社員のやる気と組織の活力を高める

はっきりとした目標があると、社員は自分の役割や期待されていることを理解しやすくなります。

これによって仕事への意欲が高くなり、組織全体の雰囲気も良くなっていきます。

目標設定が社員のやる気と組織の活力を高める理由は、次の通りです。

【目標設定が社員のやる気を高める理由】
・達成感:目標を達成することで、自信とやりがいが生まれる
・方向性:目標があることで、何に力を注げばいいかが分かる
・公平感:目標を基に評価されることで、努力が認められやすくなる

個人・チーム・組織全体のやる気には、主に次のような形で現れる場合があります。

対象効果
個人自主性の向上、スキルアップへの意欲増加
チームコミュニケーションの活性化、協力体制の強化
組織全体生産性の向上

社員一人ひとりがやりがいを感じることで組織全体が活気に溢れ、企業の業績向上にもつながります。

客観的な基準で成果を測り評価の納得性を上げる

目標設定を行うと、成果を測る物差しがはっきりします。これにより、評価がより公平になり、社員の納得度も上がります。

例えば、営業部門で「今年の新規顧客を50社増やす」という目標を立てたとします。こうすれば、年末に実際に増えた顧客数を数えるだけで、目標達成度が分かります。

「頑張った」「それなりに働いた」といったあいまいな基準ではなく、数字という客観的な基準で評価できるのです。

ただし、数字だけにこだわりすぎるのは危険で、次のような問題が起こる可能性があります。

部門数字だけの目標起こりうる問題
営業売上高のみ利益率の低下
製造生産量のみ品質の悪化
開発開発速度のみバグの増加

そのため、数字以外の要素も含めた総合的な目標設定が重要です。

全社目標と個人目標の方向性を一致させる

企業全体の目標と社員個人の目標をつなげると、みんなで同じ方向に向かって頑張れるようになります。

全社目標と個人目標をつなげるメリットは次の通りです。

【メリット】
・自分の仕事が会社にどう役立つかが分かる
・部署をまたいで協力しやすくなる
・会社全体の進む方向がぶれにくい
・頑張りを正しく評価しやすくなる

目標をうまくつなげるコツは、よく話し合うことです。

経営陣の考えを現場に伝え、現場の意見を経営に届ける。この双方向のやりとりが大切です。

人事考課で用いられる主な評価手法

人事考課では、社員の頑張りや成果を正しく評価するために、様々な評価方法が使われています。

こういった評価方法にはそれぞれ特徴があり、企業の状況や目的に合わせて選ぶことが大切です。

以下では、よく使われる主な評価方法について説明していきます。

【人事考課で用いられる主な評価手法】
・360度評価で多角的な視点から公平な評価を行う
・目標管理制度(MBO)で目標達成度を評価する
・コンピテンシー評価で職務遂行能力を測定する

360度評価で多角的な視点から公平な評価を行う

360度評価は、従来の上司による一方向の評価とは異なり、多角的な視点を取り入れた評価方法です。

この手法では、上司だけでなく、同僚、部下、さらには取引先など、様々な立場の人から評価を受けます。

360度評価の特徴は以下の通りです。

【360度評価の特徴】
・多面的な評価:一人の社員を様々な角度から評価できる
・客観性の向上:複数の評価者の意見を集約するため、個人の偏見が軽減される
・新たな気づき:自己評価と他者評価のギャップから新たな発見がある

例えば、上司からは「目標達成率が高い」と評価される一方で、同僚からは「チームワークに課題がある」といった評価が得られる可能性があります。

こういった評価を合わせることで、その社員の強みと弱みがより明確になります。

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目標管理制度(MBO)で目標達成度を評価する

目標管理制度(MBO)は、社員が自ら目標を設定し、その達成度を評価する方法です。

この手法では、社員の主体性を大切にしながら、企業全体の目標達成にも貢献できるのが特徴です。

MBOには以下のようなメリットがあります。

【目標管理制度(MBO)のメリット】
・社員が自主的に動くようになる
・企業の目標と個人の目標が一致しやすくなる
・評価が公平になりやすい
・上司と部下のコミュニケーションが増える

ただし、MBOを上手く使うには次のような注意点もあります。

よくある問題対策
目標が簡単すぎる少し背伸びする目標を立てるよう促す
数字ばかりの目標になる数字以外の目標も入れる
短期的な成果にこだわりすぎる長い目で見た目標も立てる

MBOをうまく進めるポイントは以下の通りです。

【MBOのポイント】
・具体的で測りやすい目標を立てる
・こまめに進み具合を確認し、必要なら軌道修正する
・公平で建設的な評価とフィードバックを行う
・目標達成のためのサポート体制を整える

MBOは、社員の成長と企業の成長を同時に実現できる可能性のある評価方法です。

ただし、形だけの運用にならないよう、常に目的を意識しながら取り組むことが大切です。

コンピテンシー評価で職務遂行能力を測定する

コンピテンシー評価は、社員の仕事の進め方や能力を測る方法です。

この評価では、成果を上げている社員に共通する行動や特徴を基準にします。単に結果だけでなく、仕事の過程で見せる能力や行動も評価の対象になります。

コンピテンシー評価は、次のような流れで進めます。

【コンピテンシー評価の流れ】
①:優秀な社員の行動パターンを分析
②:その特徴から評価項目を作る
③:各社員の行動を項目に照らして評価
④:評価結果を本人に伝える
⑤:能力を伸ばす計画を立てる

例えば、営業職の場合、「お客様のニーズを理解する力」「提案する力」「粘り強さ」などが評価項目になることがあります。

新規のお客様を獲得できた場合、その結果だけでなく、どうやってお客様の要望を引き出したのか、どんな提案をしたのかといった過程も評価します。

ただし、導入する際には以下のような点にも注意しましょう。

気をつけること対策
評価項目を決めるのに時間がかかる外部の専門家に相談する
評価する人の主観が入りやすい評価する人への研修を行う
環境の変化に対応しにくい定期的に評価項目を見直す

コンピテンシー評価をうまく進めるポイントは、以下の通りです。

【コンピテンシー評価のポイント】
・企業の目指す方向に合った評価項目を作る
・具体的で分かりやすい行動指標を作る
・評価する人にしっかり説明し、訓練する
・定期的に評価項目を見直し、更新する

人事考課の目標設定で押さえるべきポイント

人事考課で目標を設定するときは、重要なポイントを押さえておくことで社員がやる気を持って取り組めることや、分かりやすい目標を立てることができるようになります。

また、企業全体の目標とも合わせやすくなるので、会社の成長にもつながります。

以下では、目標設定で特に気をつけたい点について、詳しく説明していきます。

【人事考課の目標設定で押さえるべきポイント】
・具体的で測定可能な目標を設定する
・会社の目標と個人の目標を結びつける
・達成可能かつ少し背伸びする目標レベルを設定する
・目標達成の期限を明確にする

具体的で測定可能な目標を設定する

人事考課では、具体的で測定可能な目標を設定することが重要です。曖昧な目標では、達成度を正確に評価できず、社員のやる気も下がりかねません。

具体的で測定可能な目標を立てるポイントは、以下の通りです。

【具体的な目標を立てるポイント】
・数字で表せる指標を使う
・いつまでに達成するか期限を決める
・どんな行動をとるか明確にする

以下の表は、曖昧な目標と具体的で測定可能な目標の例です。

職種曖昧な目標具体的で測定可能な目標
営業職売上を増やす3ヶ月の売上を去年より10%増やす
カスタマーサポートお客様の満足度を上げる毎月アンケートを行い、5段階評価で4.5以上を保つ
一般社員仕事の能力を高める半年以内に〇〇の資格を取得する
管理職仕事の効率を上げる月次報告書の作成時間を8時間から6時間に減らす
チームリーダーチームの雰囲気を良くする週1回のミーティングで全員が1つ以上の提案をする

具体的で測定可能な目標設定のメリットと注意点は、次のような点です。

【メリット】
・社員が何をすべきか分かりやすい
・進み具合を確認しやすい
・公平に評価できる
・目標達成の計画を立てやすい
・目標を達成したときの喜びが大きい

【注意点】
・数字ばかりを追いかけると、質が落ちる可能性がある
・短い期間の成果だけに注目すると、長い目で見た成長を見逃すかもしれない

こういった問題を避けるために、量と質の両方の目標を立てるようにしましょう。

会社の目標と個人の目標を結びつける

企業の目標と個人の目標を結びつけることによって、従業員一人ひとりの頑張りが企業全体の成長につながります。

目標を結びつける際のポイントは以下の通りです。

【目標を結びつけるポイント】
・企業の目標をはっきり伝える
・部門ごとの役割を明確にする
・個人の得意分野や興味を考える
・目標のつながりを見える化する
・定期的に進み具合を確認して調整する

以下のように、目標の種類によって結びつけ方も変わります。

目標の種類企業の目標個人の目標
数値目標年間売上10%増加月間売上20万円増加
品質目標お客様満足度90%達成担当顧客の満足度95%達成
効率化目標生産性20%向上業務処理時間15%短縮
育成目標社内資格取得者50%増加半年以内に〇〇資格取得

目標のつながりを確認するため、以下の内容を意識しましょう。

【意識するポイント】
・企業の目標を理解しているか
・部門の目標が企業目標に役立っているか
・個人の目標が部門目標に役立っているか
・目標が具体的で測れるか
・目標達成のための行動計画があるか
・目標の進み具合を定期的に確認する機会があるか

達成可能かつ少し背伸びする目標レベルを設定する

「達成できそうだけど、少し頑張らないといけない」レベルの目標を立てることも重要です。

簡単すぎる目標だと成長の機会を逃してしまいますし、逆に難しすぎるとやる気が下がってしまいます。

適切な目標レベルを決めるときのポイントは次の通りです。

【目標レベルの確認方法】
・今の実力をしっかり把握する
・今までの実績を参考にする
・伸びしろを考える
・本人のやる気を確認する
・企業が期待していることと合わせる

例えば、営業職なら「去年の売上が1,000万円だった人に、今年は1,100万円を目指してもらう」というようなイメージです。10%増やすのは、頑張ればできそうだけど、少し背伸びが必要な水準と言えるでしょう。

目標設定基準は、以下を参考にしてみてください。

今の状態達成できそうな目標少し頑張る目標
月の売上800万円月の売上850万円月の売上900万円
お客様満足度80%お客様満足度85%お客様満足度90%
仕事処理1時間仕事処理50分仕事処理45分

ただし、人それぞれ能力や経験が違うので、適切な目標レベルも人によって変わります。新入社員とベテラン社員では、同じ数字でも難しさが全然違うこともあります。

そのため、一人ひとりの状況に合わせて決めることが大切です。

目標達成の期限を明確にする

目標達成の期限が不明確だと、目標の達成が先延ばしになりがちで、結果として効果的な人材育成や業績向上に繋がりにくくなります。

次のような、期限設定のポイントを意識しましょう。

【期限設定のポイント】
・企業の事業計画も考慮した期限を設定する
・目標の難易度に応じて適切な期間を設定する
・短期、中期、長期のバランスを考慮する
・進捗確認のタイミングを設定する
・社員との対話を通じて現実的な期限を決める

これらのポイントを踏まえ、具体的な目標設定の例を挙げてみます。

部門適切でない目標改善された目標
営業売上を増加させる今年度末までに売上を前年比15%増加させる
人事研修を充実させる6ヶ月以内に全社員が新しいオンライン研修を受講完了する
総務コスト削減を行う四半期ごとに経費を3%削減し、年間で12%の削減を達成する

特に四半期ごとの中間目標を設定することで、進捗管理がしやすくなっています。これにより、目標達成に向けて計画的に取り組むことが可能になります。

人事考課における効果的な目標設定の流れ

人事考課で効果的な目標設定をするには、一定の流れに沿って進めるのが良いでしょう。

この流れを知っておくと、上司と部下がお互いに納得できる目標を立てやすくなります。

また、目標に向かって頑張る途中で進み具合を確認したり、最後にしっかり振り返ったりすることで、次の目標設定にも活かせます。

以下では、目標設定から評価までの基本的な流れを簡単に紹介します。

【人事考課における効果的な目標設定の流れ】
①:期初面談で上司と部下が納得いく目標を設定する
②:四半期ごとに進捗を確認し、必要に応じて目標を調整する
③:期末評価で成果を振り返り、次期の目標に反映させる

①:期初面談で上司と部下が納得いく目標を設定する

期初面談は、上司と部下が話し合って、互いに納得できる目標を決める重要な機会です。

この面談を通じて、企業の方針と個人の希望をすり合わせて、具体的で達成可能な目標を設定する必要があります。

効果的な期初面談を行うためのポイントは、次の通りです。

【期初面談のポイント】
・事前準備を徹底する
・オープンな対話の雰囲気を作る
・SMARTの原則に基づいて目標を設定する
・目標の優先順位を明確にする
・目標達成に必要なサポートを確認する

まず、企業の経営方針や部門目標を共有することから始めましょう。これにより、個人の目標が組織全体の方向性と合っていることを確認できます。

次に、部下の強みや弱み、キャリアプランなどについて話し合います。これにより、個人の成長につながる目標設定が可能になります。

目標設定の際は、SMARTの原則を活用しましょう。SMARTとは以下の5つの要素を指します。

要素意味
Specific (具体的)明確で具体的な内容「営業成績を向上させる」ではなく「新規顧客獲得数を20件増やす」
Measurable (測定可能)達成度を数値で測れる「顧客満足度を80%以上に維持する」
Achievable (達成可能)努力すれば達成できる「売上を2倍にする」ではなく「売上を10%増加させる」
Relevant (関連性)企業目標と個人の成長に関連している「英語力を向上させる」(グローバル展開を目指す企業の場合)
Time-bound (期限付き)達成期限が明確「今年度末までに」「第2四半期中に」など

また、目標の数は多すぎないようにすることも大切です。

一般的に、3〜5個程度の目標設定が適切とされています。目標が多すぎると焦点が定まらず、達成が困難になる可能性があります。

②:四半期ごとに進捗を確認し、必要に応じて目標を調整する

目標設定後は、定期的な進捗確認を行いましょう。

可能であれば、四半期ごとに上司と部下が面談を行い、目標の達成状況を確認するのがおすすめです。

この中間面談は、進捗状況の把握だけでなく、必要に応じて目標を調整する機会にもなります。

中間面談では、次のような内容を確認しておきましょう。

【中間面談のポイント】
・目標の進捗状況
・目標達成に向けた課題
・環境の変化による目標への影響

まず、目標の進捗状況を確認します。例えば、「新規顧客獲得数を20件増やす」という目標に対して、現時点で何件獲得できているかを確認します。

数値化された目標であれば、達成率を計算することも可能です。

次に、目標達成に向けた課題を話し合いましょう。うまくいっている点や苦労している点について、具体的に共有することが大切です。

四半期ごとの進捗確認と目標調整を丁寧に行うことで、目標達成の確度が高くなります。

また、上司と部下のコミュニケーションを深める良い機会にもなるため、信頼関係の構築にも活かしましょう。

③:期末評価で成果を振り返り、次期の目標に反映させる

期末評価は、1年間や半年間の成果をまとめ、次の期間の目標設定につなげる機会です。

ここでは、目標の達成度だけでなく、そこに至るまでも含めて評価します。

期末評価で確認すべき主なポイントは、以下の通りです。

【期末評価のポイント】
・目標の達成状況
・目標達成に向けた取り組みの様子
・成果が企業にもたらした影響
・個人の成長や学び
・次期の目標設定に向けた課題

まず、目標の達成状況を確認します。数値目標なら達成率を計算し、数値化しにくい目標ならどの程度達成できたかを具体的に話し合いましょう。

次に、目標達成に向けた取り組みの様子も評価します。ここでは、目標達成のために行った工夫や努力、困ったことやそれをどう乗り越えたかなどを共有します。

そして、期末評価の結果は、以下のような形で次期の目標設定に反映させましょう。

評価結果次期目標への反映例
目標を大きく超えて達成より高い目標を設定、新たな挑戦的な目標を追加
目標をほぼ達成同じような目標を維持しつつ、質を高めることを目指す
目標未達成原因を分析し、達成できそうな目標に調整、必要なサポートを検討

期末評価では、上司からの一方的な評価だけでなく、部下の自己評価も大切です。

部下と上司の評価に違いがある場合は、なぜそのような違いがあるのかを話し合うことで、より理解が深まります。

人事考課における職種別の目標設定例

人事考課の目標設定は、職種によって大きく変わってきます。

営業職なら売上目標が中心になり、技術職ならスキルアップが重要になるでしょう。

以下では、代表的な職種ごとにどのような目標を立てると良いのか、具体例を交えて紹介します。

【人事考課における職種別の目標設定例】
・【営業職】数字目標と顧客満足度のバランス
・【事務・管理部門】仕事の効率アップと質の向上を目指す
・【技術職・エンジニア】スキルアップと成果物の評価をセットで行う
・【企画・マーケティング】数値目標と新しい取り組みを混ぜる
・【サービス業・接客職】お客様の満足度とリピーター増加を狙う
・【医療・福祉職】利用者の満足度と専門性アップの両立
・【公務員】業務の効率化と住民サービスの質を高める

【営業職】数字目標と顧客満足度のバランス

営業職の目標設定では、売上や新規顧客獲得などの数字目標が重視されがちです。

しかし、短期的な数字だけを追いかけると、お客様との関係が悪くなったり、長い目で見た成長が難しくなったりする可能性があります。

営業職の具体的な目標設定例を見てみましょう。

【数値目標の例】
・四半期ごとの売上目標:去年の同じ時期より10%増やす
・新規のお客様獲得:月に5社以上
・商談がまとまる確率:40%以上

【お客様満足度に関する目標例】
・お客様アンケートで平均4.5以上(5点満点)を維持する
・既存のお客様との契約更新率95%以上を達成する
・クレームの件数を去年より20%減らす

【スキル向上に関する目標例】
・3ヶ月に1回以上、商品の勉強会を開く
・年に2回以上、提案力を高めるセミナーに参加する
・業界の資格を取得する(具体的な資格名を書く)

【事務・管理部門】仕事の効率アップと質の向上を目指す

事務・管理部門の仕事は、数字で成果を測りにくい場合が多いです。

しかし、効率よく質の高い仕事をすることで、企業全体の生産性向上に貢献できるため、仕事の効率アップと質の向上を目指す目標設定が大切になります。

事務・管理部門の具体的な目標設定例を見てみましょう。

【業務プロセス改善の例】
・月次決算の締め作業を現在の7日間から5日間に短縮する
・新入社員の入社手続きをマニュアル化し、処理時間を30%削減する

【ミス削減の例】
・給与計算のミスを今年度中にゼロにする
・請求書の記載ミスを前年比50%削減する

【コスト削減の例】
・事務用品の発注を見直し、年間経費を10%削減する
・ペーパーレス化を進め、コピー用紙の使用量を前年比20%削減する

【コミュニケーション強化の例】
・月1回、他部署との情報交換会を開催する
・四半期に1回、全社向けの業務改善提案を行う

【技術職・エンジニア】スキルアップと成果物の評価をセットで行う

技術職やエンジニアの目標設定は、単純に数字だけでは評価しづらいところがあり、スキルアップと具体的な成果物を組み合わせることで、より適切な評価ができるようになります。

技術職・エンジニアの具体的な目標設定例を見てみましょう。

【技術スキル向上の例】
・新しいプログラミング言語を習得し、実務で活用する
・半年以内に関連する技術資格を取得する

【プロジェクト成果の例】
・担当プロジェクトを期限内に完了し、顧客満足度90%以上を達成する
・開発工程を最適化し、プロジェクト所要時間を15%削減する

【品質管理の例】
・コードレビューを徹底し、バグの発生率を前年比20%削減する
・テスト自動化を推進し、テストカバレッジを80%以上に向上させる

【イノベーションへの貢献例】
・四半期に1回以上、新技術や改善案のプレゼンテーションを行う
・年間で1件以上の特許出願や技術論文の執筆を行う

【企画・マーケティング】数値目標と新しい取り組みを混ぜる

企画・マーケティング部門の目標設定は、数字で測れる内容と合わせて、新しいアイデアや取り組みも求められます。

そのため、数値目標と新しい取り組みをうまく混ぜて設定するのがポイントです。

企画・マーケティングの具体的な目標設定例を見てみましょう。

【数値目標の例】
・Webサイトの月間アクセス数を前年比20%増加させる
・新規顧客獲得数を四半期ごとに10%ずつ増やす

【新規プロジェクトの例】
・新商品のコンセプトを3つ以上提案し、1つを商品化する
・SNSを活用した新しいマーケティング施策を企画し、実行する

【顧客満足度向上の例】
・NPS(顧客推奨度)を現在の+30から+40に引き上げる
・カスタマーサポートの対応満足度を95%以上に維持する

【サービス業・接客職】お客様の満足度とリピーター増加を狙う

サービス業や接客職もお客様との直接のやりとりが多いので、数字だけでは測れない目標設定になることが多いです。

しかし、お客様の満足度を上げてリピーターを増やすことが、最終的には売上アップにつながります。そのため、この2つを軸に目標を立てるのがおすすめです。

サービス業・接客職の具体的な目標設定例を見てみましょう。

【お客様満足度向上の例】
・接客後のアンケート評価を5段階中平均4.5以上にする
・「また来たい」と答えるお客様の割合を90%以上に引き上げる

【リピーター率増加の例】
・月間リピーター率を現在の30%から35%に引き上げる
・新規顧客の2回目来店率を50%以上にする

【売上・客単価向上の例】
・担当エリアの売上を前年比5%増加させる
・おすすめ商品の提案を徹底し、客単価を10%アップさせる

【クレーム対応とサービス改善の例】
・クレーム件数を前年比20%削減する
・お客様の声をもとに、四半期ごとに1つ以上のサービス改善案を提案する

【医療・福祉職】利用者の満足度と専門性アップの両立

医療・福祉職では、利用者の満足度を上げるだけでなく、専門的なスキルを磨くことも必要です。

この2つをうまくバランスを取りながら目標を立てていくのがポイントです。

医療・福祉職の具体的な目標設定例を見てみましょう。

【利用者満足度向上の例】
・利用者アンケートの総合満足度を5段階中4.5以上にする
・苦情件数を前年比20%削減する

【専門的なスキルアップの例】
・認定看護師の資格を取得する
・新しい介護技術を3つ以上習得し、実践で活用する

【チームワーク強化の例】
・月1回のケースカンファレンスを主催し、情報共有を促進する
・他職種との連携プロジェクトを1つ以上立ち上げる

【業務効率化の例】
・記録作業の時間を20%削減し、利用者と接する時間を増やす
・業務マニュアルを見直し、新人でも分かりやすいものに改訂する

【公務員】業務の効率化と住民サービスの質を高める

公務員の目標設定では、利益を追求する企業と違い住民サービスの質を高めつつ、効率的な業務運営を行うことが求められます。

そのため、業務の効率化と住民サービスの質の向上、この2つを軸に目標を立てていくのがポイントです。

公務員の具体的な目標設定例を見てみましょう。

【業務効率化の例】
・窓口での待ち時間を現在の平均15分から10分に短縮する
・電子申請システムの利用率を30%から50%に引き上げる

【住民サービス向上の例】
・住民アンケートの満足度評価を5段階中4.0以上にする
・問い合わせ対応の平均所要時間を20%短縮する

【コスト削減の例】
・印刷コストを前年比10%削減する
・残業時間を部署全体で月平均20時間削減する

【法令遵守とコンプライアンスの例】
・個人情報取扱いに関する研修を全職員が年2回以上受講する
・内部監査での指摘事項を3ヶ月以内に100%改善する

人事考課における目標設定の注意点

人事考課で目標を設定するときの注意点を知っておくと、より効果的な目標設定ができ、社員のやる気を高めることができるだけでなく、公平な評価にもつながります。

以下では、目標設定をする際に特に気をつけたい点について詳しく解説します。

【人事考課における目標設定の注意点】
・あいまいな表現や主観的な目標は避ける
・部下まかせにせず、上司も一緒に考える
・目先の成果だけでなく、長い目で見た目標も大切

あいまいな表現や主観的な目標は避ける

目標設定では、評価の際に解釈の違いが発生することがあるため、あいまいな表現や主観的な目標を使わないことが重要です。

具体的には、以下のような表現は避けましょう。

【避けるべき曖昧な表現】
・「頑張る」「努力する」といった抽象的な言葉
・「〇〇を向上させる」という具体性に欠ける表現
・「良い成果を出す」といった主観的な評価基準

こういった表現の代わりに、「売上を10%増加させる」「顧客満足度調査で平均4.5点以上を獲得する」といった表現を行うことが重要です。

部下まかせにせず、上司も一緒に考える

目標設定を部下任せにしてしまうと、企業の方針とずれたり、達成が難しすぎる目標になったりする恐れがあります。

そのため、上司も積極的に関わり、一緒に考えるようにしましょう。

上司と部下で話し合いながら目標を設定することで、以下のようなメリットがあります。

【上司と話し合うメリット】
・目標の意義や重要性を理解できる
・現実的で達成可能な目標になる
・モチベーションが高まる
・上司と部下の信頼関係が深まる

一方で、以下のような点には注意が必要です。

【上司と話し合う際の注意点】
・押し付けにならないよう配慮する
・部下の意見をしっかり聞く
・部下の成長を促す目標を心がける
・定期的にフォローアップする

目標設定の際に使える具体的な質問例を紹介します。

質問の目的質問例
部下の意向を知る「今年度、特に取り組みたいことは何ですか?」
現状を把握する「今の業務で難しいと感じる点はどこですか?」
具体的な目標を引き出す「その目標を数値で表すとしたら、どのくらいが適切だと思いますか?」
行動計画を考える「その目標を達成するために、どんなアクションが必要だと思いますか?」

目標設定の面談では、このような質問を織り交ぜながら、部下の考えを引き出していきましょう。

目先の成果だけでなく、長い目で見た目標も大切

目先の数字だけを追いかけると、持続的な成長や企業の将来につながる取り組みが疎かになる可能性があるため、短期的な成果と長期的な成長のバランスを取ることが重要です。

例えば、営業職の目標設定では、以下のように短期と長期の目標を組み合わせるといいでしょう。

【短期目標】
・四半期の売上目標を10%増加させる
・新規顧客を月に5社獲得する

【長期目標】
・1年以内に業界の専門資格を取得する
・半年かけて新しい商品提案の手法を開発する

長期目標を設定する際は、「なぜその目標が重要なのか」を明確にすることが大切です。

「2年以内に管理職になる」という目標であれば、「チーム全体の生産性を向上させ、部署の業績に貢献するため」といった理由を添えましょう。

まとめ

人事考課における目標設定は、企業と社員の成長に大きな影響を与える重要な取り組みです。

効果的な目標設定を行うことで、社員のモチベーション向上や企業の業績アップにつながります。

この記事の主なポイントをまとめると、次の通りです。

【人事考課での目標設定によるメリット】
・社員の成長と能力向上を促進
・組織の活性化につながる
・評価の納得性が高まる
・企業全体の目標と個人の目標を一致させやすい

【効果的な目標設定のためのポイント】
・具体的で測定可能な目標を立てる
・企業の目標と個人の目標を結びつける
・達成可能だが少し背伸びする目標レベルを設定
・目標達成の期限を明確にする

【目標設定から評価までの基本的な流れ】
・期初面談で上司と部下が納得いく目標を設定
・四半期ごとに進捗を確認し、必要に応じて目標を調整
・期末評価で成果を振り返り、次期の目標に反映

また、職種別の目標設定例や注意点についても紹介しました。

これらを参考に、自社の状況に合わせた効果的な目標設定を行いましょう。


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HRコラム編集部

「CBASE 360°」は、株式会社シーベースが提供するHRクラウドシステムです。経営を導く戦略人事を目指す人事向けのお役立ち情報をコラムでご紹介します。

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