サーバントリーダーシップとは?10の特性や事例・導入時の注意点を詳しく解説!
⇒【マンガでわかる】「360度評価」のメリットやデメリット、失敗しないための導入方法が詳しく学べる資料を1分でダウンロード
リーダーシップのスタイルは時代と共に変化していますが、今注目されているのが「サーバントリーダーシップ」です。サーバントリーダーシップとは、リーダーがチームメンバーの成長と幸福を第一に考え、そのために奉仕するスタイルのことです。
本記事では、サーバントリーダーシップの概要、その特性、導入のメリット・デメリット、具体的な導入事例や教育方法、そして導入時の注意点について詳しく解説します。
目次
サーバントリーダーシップとは
サーバントリーダーシップは、ロバート・K・グリーンリーフが提唱した考え方で、「まず部下に奉仕し、そこからチームを先導するリーダーシップ」を意味します。
グリーンリーフは、企業や組織がより効果的に機能するためには、リーダーが奉仕者としての役割を果たすべきだと考えました。
参考図書:https://www.servantleader.jp/book
従来のリーダーシップとの違い
サーバントリーダーシップは従来のリーダーシップとは大きく異なります。細かい点はいくつかありますが、部下への接し方にその違いが大きく現れるでしょう。
従来のリーダーシップは、リーダーがトップに立ち、指示を出し、メンバーを導くスタイルです。一方、サーバントリーダーシップは、部下との信頼関係を築き、部下の自主性を重んじるリーダーシップです。リーダーは指示や命令を出すのではなく、部下のやる気や意見を尊重し、メンバーの成長をサポートします。
関連記事:リーダーシップとは?定義や理論、求められる要素や評価方法について解説
注目されるようになった背景
近年、テクノロジーの進化や働き方改革が進み、従業員の働き方や職場環境に対する関心が高まっています。従来のトップダウン型のリーダーシップでは、リモートワークのような柔軟な働き方に対応しきれないことが多いですが、サーバントリーダーシップは、リーダーがメンバーを支援し、自己管理を促進するため、テクノロジーを活用した新しい働き方に適しています。
また、グローバル化が進む中で、企業は多様なバックグラウンドを持つ従業員を抱えています。サーバントリーダーシップは、リーダーが従業員の多様な価値観やニーズを尊重し、一人ひとりの強みを引き出すことを重視するため、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進にも有効とされています。
高い回答回収率、自動グラフ化機能による課題解決への即効性が期待できます。
- 目的に合わせたセミオーダーメイド設計
- 専任スタッフのサポートでとにかくカンタン手間いらず!
- 企業の持続的成長を目的とした改善サイクルを実現
サーバントリーダーシップの10の特性
サーバントリーダーシップは、NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会によって、以下10の属性に分けられています。
・傾聴
・共感
・癒し
・気づき
・説得
・概念化
・先見力
・執事役
・成長に関わる
・コミュニティ作り
参考:NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会 サーバントリーダーシップの10の属性
https://www.servantleader.jp/about/10s
それぞれどのような性質か、次で詳しく解説します。
傾聴
リーダーはメンバーの声に耳を傾け、理解し、受け入れることが重要です。傾聴は信頼関係を築く基礎となります。具体的なアクションとしては、定期的なフィードバックセッションを設け、メンバーが自由に意見を表明できる場を作ることが挙げられます。また、リーダーは相手の話だけではなく、自分の内面も観察し、内なる声を聞くことも求められます。
共感
相手の立場に立って、メンバーが感じる不安や困難を理解し、共感しようと努めることが重要です。共感することにより、チームの絆を深まるとされています。
癒し
癒しとは人や組織の中で欠けていることや傷ついていることを把握し、本来の力を取り戻させる力です。メンバーが安心して働ける環境を提供することも重要で、ストレスマネジメントの研修やメンタルヘルスサポートを導入することも効果的です。
気づき
気づきとは、客観的にものごとを観察し、本質的な問題や改善点に気づけることを意味します。気づきを高めることにより、自己成長や組織の発展が促進されます。
説得
相手にわかりやすく説明し、納得させられる力です。このときには既存の権力などを使わず、相手の話を聴きながら、双方の合意を得ることが求められます。例えば、新しいプロジェクトの導入時には、メンバーに対して十分な説明と納得を得るプロセスを踏むことが必要です。
概念化
概念化とはものごとの本質を把握できる能力です。概念化することで、組織の方向性を明確にします。ビジョンやミッションを明確にし、全メンバーに共有することが重要です。
先見力
先見力とは過去の出来事から学習し、未来を予測する力です。100%の予測は難しくとも、起こりうる未来をいくつか予想し対策することも先見力の一つです。
リーダーは未来を見据えた判断を下す力が必要です。先見力を持つことで、組織が変化に対応できるようになります。市場トレンドの分析や予測を行い、組織の戦略に反映させることが効果的です。
執事役
執事役とは、大事なものを任せても安心だと思われる人物です。そのような信頼関係が作れることで、部下は安心して仕事を行えるようになります。例えば、メンバーの業務をサポートし、必要なリソースを提供することが求められます。
人の成長に関わる
人の成長に向けて深くコミットできるかどうかが、サーバントリーダーシップには求められます。部下の特性や強みを把握し、その力を発揮できるようアドバイスをすることが大切です。
コミュニティ作り
同じ会社や組織の中で、お互いが助け合い成長できるコミュニティを作ることが大切です。サーバントリーダーとして適切な行動ができていれば、メンバーも他のメンバーやリーダーに対して奉仕する環境が整います。
サーバントリーダーシップ導入のメリット
サーバントリーダーシップの導入は、長期的に見ると、多くのメリットがあります。具体的には以下のものがあります。
・従業員が自律して行動する
・顧客満足度の向上につながる
・離職率が下がる
・チームの関係性がよくなる
次で詳しく解説します。
従業員が自律して行動する
従業員に自律した行動が促せることがサーバントリーダーシップのメリットです。
サーバントリーダーシップでは、部下の自律性を尊重し、主体的な行動を求めます。そのため、上手く機能すれば、自律心が育ち、自分から行動できる社員が育ち、組織全体のパフォーマンスが向上します。
また、自律できるようになった結果、社員がそれぞれの強みを発揮しやすくなる点もメリットです。
顧客満足度の向上につながる
サーバントリーダーシップは顧客満足度にも影響します。サーバントリーダーシップで求められる傾聴は顧客へのニーズ調査にも役立つスキルです。
VUCA時代には顧客のニーズを適切に分析し、顧客の声を聞き柔軟に対応できるかどうかが求められます。個人の主体性が育まれ、周囲とも良好な関係を作るのに役立つリーダーシップです。そのため、組織全体の対応力が高まることが期待されます。
離職率が下がる
サーバントリーダーシップを導入することで、従業員のエンゲージメントが向上し、社員の離職率低下に役立ちます。社員が主体的に行動し、組織内での信頼関係が構築されることで、従業員満足度が高まり、長く働きたいと感じる職場環境が作られます。
参考記事:従業員エンゲージメントとは?向上させるための施策や事例を詳しく解説
チームの関係性がよくなる
サーバントリーダーシップでは、従業員の主体性を重視し、それぞれが意見を発信することを重視しています。また、上司が部下に奉仕することで、発信しやすい雰囲気づくりにもつながるでしょう。
その結果、従業員間での信頼関係が育まれるため、コミュニケーションが取りやすくなり、チームの関係性がよくなります。
⇒初めての360度評価導入でも安心!専任担当のサポートでカンタン導入・運用~改善も手間いらず。
サーバントリーダーシップ導入のデメリット
サーバントリーダーシップは、導入に多くのメリットがありますが、デメリットもあります。具体的には以下の点です。
・運用時には時間がかかりやすい
・メンバーの主体性がないと機能しない
・リーダーの負担増加
これらのデメリットがあるため、従業員の主体性や運用の手間を考えておく必要があります。
運用時には時間がかかりやすい
サーバントリーダーシップは運用時に時間がかかりやすい点がデメリットです。
サーバントリーダーシップを実践するときには、一人一人の話を丁寧に聞き、双方に合意を得てから進める必要があります。そのため、意見が割れた場合には、意見のすり合わせに時間がかかる点が課題です。リーダーとメンバーの間に信頼関係を築くには、持続的な努力が必要です。
メンバーの主体性がないと機能しない
サーバントリーダーシップはメンバーの主体性を求めるため、主体性がないメンバーがいると機能しません。例えば、メンバーが積極的に意見を出さない場合、リーダーはフィードバックセッションを設けて、意見を引き出す努力をする必要があります。
リーダーの負担増加
サーバントリーダーはメンバーの成長を支援するために、日常的なサポートやフィードバックを行うことが求められます。このため、リーダー自身が過労やストレスに陥りやすくなり、リーダーシップの質を維持することが難しくなることがあります。特に、リーダーが多忙な場合、部下への対応が不十分になり、リーダーシップの効果が低下するリスクがあります。
サーバントリーダーシップの導入事例
サーバントリーダーシップは、すでにいくつかの企業で取り入れられ、成果を出しています。ここではどのような企業で導入されているか、具体例を紹介します。
スターバックス
スターバックスはサーバントリーダーシップを取り入れた企業の一つです。「ポジションやタイトルに関係なく、個性や強みを生かしていきいきと活躍している」ことを大切にしていることを明言しています。例えば、バリスタが自分の判断で顧客に最適なサービスを提供できるように、定期的なトレーニングプログラムを実施しています。
10〜20代の若手従業員がイキイキと働けるよう、制度やプロジェクトを推進しています。
参考:Starbucks Youth Leadership
ダイエー
ダイエーは経営業績の悪化により、従来の支配型のリーダーシップからサーバントリーダーシップへの転換を図った企業です。
2005年にダイエーの社長に就任した樋口泰行氏は、全従業員から生鮮食品の鮮度改善に向けたプロジェクトチームを発足させました。希望者を募集し、年齢や性別、ポジションに関係なく意見を言わせる環境を作りながら、コミュニティづくりを行ったことが大きな特徴です。
その結果、生鮮食品の鮮度を回復させ、顧客からの信頼も回復させることに成功しました。
参考:PRESIDENT Online あなたはサーバント・リーダーか、支配型リーダーか?
⇒万全のセキュリティ・専任担当者の徹底サポートで担当者の負担軽減!年間80万人以上が利用、顧客満足度91.1%の「CBASE 360°」
サーバントリーダーシップ導入時の注意点
サーバントリーダーシップを導入する場合、ただ制度として導入してもうまく機能しません。ここではサーバントリーダーシップを導入する際の注意点について解説します。
サーバントリーダーシップと単なる優しさの違い
サーバントリーダーシップは優しいリーダーとは異なります。例えば、困った部下に対して業務を代わりにやるなどするのは、サーバントリーダーシップとは異なるものです。
そのような行動は、部下の主体性を損ない成長の機会を奪ってしまいます。サーバントリーダーシップではメンバーに積極的に関わりつつ、将来性や成長を考え、相手に任せ、組織全体が成長できることを目指します。
経営陣をはじめとした意識改革が重要
サーバントリーダーシップをを導入するためには、経営陣の意識改革が不可欠です。経営陣がサーバントリーダーシップの理念を理解し、自ら実践することで、組織全体にその文化を根付かせることができます。経営陣が中間管理職などに対して、奉仕の精神を持って積極的に関わらなければ、その考え方が中間層から下に伝わりません。
効果的な組織改革の実施
サーバントリーダーシップを効果的に導入するためには、組織の構造や文化を改革することが必要です。多くの日本の組織はピラミッド型の組織になっていますが、ピラミッド型の組織のままでサーバントリーダーシップの考えは適用できません。従業員が自主的にプロジェクトを進めるためのフラットな組織構造や、メンバー同士の信頼関係を築くためのコミュニケーション施策が求められます。
サーバントリーダーシップの評価方法の確立
サーバントリーダーシップの導入効果を測定するためには、適切な評価方法が必要です。360度評価を取り入れることで、リーダーが自身の強みと改善点を客観的に理解し、成長の機会を見つけやすくなります。これにより、リーダーシップの質を高め、組織全体のパフォーマンス向上につなげることができます。
サーバントリーダーシップとコミュニケーションの重要性
サーバントリーダーシップは、オープンなコミュニケーションが重要です。リーダーはメンバーの声に耳を傾け、共感を持って接することが求められます。リーダーとメンバーの間に信頼関係を築くためには、定期的なフィードバックセッションやミーティングを実施し、意見交換を促進することが重要です。
これらの注意点を踏まえることで、サーバントリーダーシップを効果的に導入し、組織の成長と成功を促進することができます。
サーバントリーダー人材を育成するステップ
サーバントリーダーシップを実践できる人材を育成するためには、以下のステップが有効です。
1.理論と実践の教育
2. 360度評価の導入
3. 実践の場の提供
次で詳しく解説します。
理論と実践の教育
サーバントリーダーシップの基本原則を理解するための教育プログラムを提供します。例えば、NPO法人日本サーバントリーダーシップ協会が主催する研修や、関連書籍を用いた学習が有効です。
参考図書:https://www.servantleader.jp/book
360度評価の導入
360度評価は、従業員の評価をより多面的なものにする手法です。従来の評価方法とは異なり、上司からの評価だけではなく、同僚、部下、他の部署の社員など、評価対象者に関わるあらゆる立場の人が評価を行うことが特徴です。
多角的な評価を通じてリーダーは自己認識を深め、強みと改善点を明確に把握することができるため、サーバントリーダーシップの育成に非常に効果的です。これにより、リーダーが自身の強みと改善点を客観的に理解し、成長の機会を見つけやすくなります。
360度評価を活用したリーダーの育成については、下記資料もぜひお役立てください。
→これから始める「次世代リーダー育成」施策ガイドブック
実践の場の提供
リーダーシップを実践する機会を定期的に設けます。例えば、プロジェクトリーダーやチームリーダーとしての役割を与え、サーバントリーダーシップを実践する場を提供します。
これらの方法を組み合わせることで、サーバントリーダーシップを実践できる人材を効果的に育成することが可能です。
まとめ
サーバントリーダーシップは、従業員の成長や幸福を重視し、持続可能な経営を実現するための重要なリーダーシップスタイルです。従来のトップダウン型リーダーシップと異なり、リーダーがメンバーを支援し、共感を持って接することで、チーム全体のパフォーマンス向上や従業員のエンゲージメント向上を促進します。
サーバントリーダーシップ導入には、組織の課題を可視化できる「組織診断」や従業員の客観的な評価が可能な360度評価「CBASE 360°」が役立ちます。
サーバントリーダーシップの導入を検討している企業の方は、制度導入のサポートにこれらのサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
「CBASE 360°」は、株式会社シーベースが提供するHRクラウドシステムです。経営を導く戦略人事を目指す人事向けのお役立ち情報をコラムでご紹介します。