競業避止義務とは?意味や期間、契約書のポイントをわかりやすく解説
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多様なキャリア形成が広がる昨今、転職などにおける情報保護にも注目が集まっています。
今回は、その中でも競業避止義務について解説していきます。
法律に関する話題と、実際に書類に記載すべき内容もありますので、最後まで読んでいってください。
目次
競業避止義務とは?
競業避止義務の意味
競業避止義務とは、会社取締役や社員が自分が所属する企業や組織と競合する会社などに転職したり、自分から競業他社となる会社を設立したりするなどの競業行為を行うことを禁ずる義務のことです。
企業では様々な機密事項があり、個人情報をはじめ、守秘義務が必要なものもあります。さらにその企業独自の技術、ノウハウといった財産に溢れています。
こういったものの流出や、利用を防ぐ目的で競業避止義務は生じてきます。
社員は在職中は労働契約により信義誠実の原則に基づいた義務として、競業避止義務を負うものとされています。
ただし、一般社員と役員などで範囲や内容は異なり、退職を以って終了となる場合も、退職後一定期間を設けられる場合もあります。
競業他社におけるトラブル
研究開発職や教育、デザイン・アートなどを含むクリエイティブな業界などでは、競業によるトラブルが多く報告されています。
理美容業界では、「ベテラン社員が若手と顧客を引き連れて、近隣に新しくサロンをオープンした」
教育業界においては、「アルバイトの講師が生徒を引き連れて、近隣に塾を開いた」などという話は10年ほど前まではよくありました。
そのほか、協会ビジネスをメインにしている企業では、資格取得ノウハウを持ち出しされて、類似の資格取得の協会ビジネスが発生するといったケースもあります。
こういった場合、ノウハウの持ち出し、顧客情報の持ち出し、人材の持ち出しといったことが起こり、さまざまな権利侵害とともに訴訟問題にまで発展するケースもあります。
その他に、競業他社への転職により、開発中の技術についての情報がライバルの会社に伝わってしまった、というケースや、顧客情報を不正に使われてしまったというトラブルもあります。
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競業避止義務契約とは?
ここでは、競業避止義務契約について解説します。
機密保持契約における競業避止義務
在職中の秘密保持義務は、労働者の誠実義務の一つです。
就業規則への明記がなくても在職中には秘密保持義務を負っていることになります。
また、在職中に企業から従業員に与えた資料類は全て会社からの支給物ではなく、会社からの貸与物である、としておくのが良いでしょう。
社員自身が持っている情報だけでなく、資料類も競業行為においては情報の流出となってしまいます。特にテキスト、マニュアル、顧客情報に関する書類の管理については注意を払うよう、日頃の注意喚起が大切です。
法律に定められているもの
役職によって違う競業避止義務
競業避止義務は役職によって違いがあります。
特に取締役の場合は株主総会の決議にて選任され、企業から経営などを委任されており、就業規則などの他に、会社法第356条(競業及び利益相反取引の制限)、第365条(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)によって定められた義務があります。
退職後の競業避止義務
競業行為は「在職中の違反行為」と「退職後の業務」が対象となることがほとんどです。
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競業避止義務の有効性
競業避止義務の有効性について、経済産業省の「競業避止義務契約の有効性について」によれば、判断するポイントが6つあります。
・守るべき企業の利益があるかどうか
不正競争防止法によって明確に法的保護の対象とされる営業秘密はもちろんのこと、これに準じて扱うことが望ましい情報やノウハウも企業側が競業避止義務契約などを導入しても守るべきものと判断しているかがポイントです。
・従業員の地位
従業員が競業避止義務を課すことが必要な従業員であったかどうかで有効性が判断されます。役職者が該当する場合、ここでは形式的な役職者ではなく具体的にその立場に相応しいかも確認されます。
・地域的な限定があるか
業務の性質に照らし合わせ合理的な絞り込みがなされているかどうかという点が問題とされます。販売業などで近隣地域での競業での出店はこちらに当たりますが、業務内容、情報内容により確認がされます。
・競業避止義務の存続期間
1年以内という期間では、肯定的に有効の判断がされるケースが多くあります。最近では、2年間は否定的に捉えられることもありますが、合理的に理由が認められる場合はその限りではなく、有効の判例もあります。
・禁止される競業行為の範囲
禁止される競業行為の範囲についても、企業側の守るべき利益との整合性が問われます。一般的・抽象的に競業への転職や、開業などを禁ずる規定は合理性が認められないと判断されやすいですが、禁止対象となる活動内容や従事する職種などが検定されているケースでは、有効性を肯定的に判断されることも多いようです。
・代償措置が講じられているか
競業避止義務を課すことへの対価となる代償措置があるケースは少ないのですが、明確に定義されたわけではなく、代償措置と呼べるものが存在することについては肯定的は判断がされることが少なくないようです。
※経済産業省「競業避止義務契約の有効性について」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/reference5.pdf
競業避止義務について企業がすべきこと
競業避止義務について企業がすべきことを解説します。
誓約を結ばせるタイミング
競業避止義務は、一般的に入社時の誓約や就業規則に含まれる競業禁止特約によって定められます。
誓約書の提出により誓約を結ぶことになりますが、時期は雇用契約を結ぶ入社日が良いでしょう。選考期間を終えて、採用通知後の入社の意向確認の際に、ある程度の守秘義務などがあることは伝えておくと良いでしょう。
競業避止義務の規定を機能させる3つのステップ
・過去の裁判例の確認
自社の業種、職種、事業内容における競業避止義務に関連する裁判例を確認し、トラブルの想定し、対策マニュアルを作成しておくと良いでしょう。
・雇用契約や就業規則に規定、周知
競業避止義務、秘密保持、情報保護については雇用契約時の説明、就業規則での規定、さらに定期的な研修などで、周知と学び直しの機会を用意しましょう。
・誓約の徹底
誓約書の提出の徹底と、社員の退職時に誓約内容の確認を必ず行いましょう。
入社時に限らず、退職時にも誓約を結ばせる企業が多くあります。
誓約書の記載内容例
競業避止義務契約、または誓約書については下記の内容を書面に盛り込むと良いでしょう。
・秘密保持の誓約
・秘密情報の帰属
・競業避止義務
(期間、地域なども必要に応じ指定)
・引き抜き行為の禁止
・誹謗中傷行為の禁止
・資料等の返還
(資料などは会社からの貸与物であることも明記・周知が必要)
・設備・備品の私的利用禁止
・損害賠償
・署名・押印欄
単に書類を書いて提出させる、では、社員への自覚と理解を促すことは難しいものです。
誓約書への記入、提出時は必ず、内容の読み合わせと、説明もするようにしましょう。
合わせて、働く上で発生する労働者の誠実義務についても説明を加えておくと良いでしょう。
競業避止義務の誓約書を従業員は拒否できる?
競業避止義務で制約を受ける範囲には転職先、開業も含まれることがあります。
法律で職業選択の自由が認められていますので、労働者側は誓約書への署名・押印を拒否することも可能です。
しかし、企業を守ることは、社員の雇用を守ることでもありますので、拒否することはできても、拒否されるのは会社側としては望ましくないものです。
競業避止義務の必要性を理解していただき、快く誓約を結べるように丁寧に説明をし、相互理解と納得を深めることが大切です。
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競業避止義務のまとめ
今回は、競業避止義務について解説しました。
特に社員の退職時の重要な対応の一つにもなるお話なので、競業避止義務の有効性を中心に理解を深めていただくと良いと思います。
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