インポスター症候群とは?特徴・原因・対処法、企業がとるべき予防策をくわしく解説
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近年、多くの企業で「インポスター症候群」という心理的な傾向が取り上げられており、職場の生産性や従業員のメンタルヘルスに悪影響を与えることが指摘されています。
インポスター症候群は病気ではありませんが、この傾向を理解し、従業員の評価やメンタルケアに取り組むことで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
本記事では、インポスター症候群の原因、特徴、対策を具体的に紹介します。
目次
インポスター症候群とは?
「インポスター(imposter)」という言葉は、もともと「詐欺師」や「偽物」を指す意味があり、成功を収めているにもかかわらず、自分の実力を過小評価しまう傾向を指します。
インポスター症候群は、心理学者ポーリン・クランスとスザンヌ・アイムズが1978年に提唱した概念で、この傾向を持つ人はビジネスで成果を上げても「自分の力ではなく、運や周囲のおかげ」と感じ、自信を持てない状態に陥りがちです。
特に職場では、他者からの評価に不安を感じ、自己不信に繋がることが多く、この症候群に悩む従業員が正当な評価を得るための支援策が重要です。
インポスター症候群の背景
インポスター症候群は、競争的な職場環境や、評価基準が成果に偏る企業文化から生まれることが多いです。特に成果主義が強い企業では、従業員が自分の仕事の価値を他者の評価に依存する傾向が強まりがちです。
人事担当者や上司は、こうした背景を理解した上で、職場環境を見直し、従業員が安心して自己評価を行える文化を作ることが重要です従業員一人一人の成果だけでなく、成長プロセスにも焦点を当てた評価制度を取り入れることが、健全な職場づくりに繋がります。
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インポスター症候群の特徴
インポスター症候群は、下記のような特徴があります。
- 自己否定的な思考
- チャレンジを避ける
- 完璧主義
- 他者との比較しがち
- 評価への過剰な不安
それぞれどのような傾向なのか、次で紹介します。
自己否定的な思考
自己否定的な思考は、インポスター症候群の最も顕著な特徴の一つです。成功を偶然の産物だと感じ、自分の能力を過小評価してしまいます。また、どんなに成果を出しても「これは偶然だ」「自分は運が良かっただけ」と考え、自分の努力や能力を認めません。
人事担当者は従業員が自身の努力や成果を正当に認識できるような評価の機会を増やすことが大切です。具体的には、成功事例を社内で公に称賛する機会を増やすことで、従業員が自分の成果を客観的に確認できる環境を整えることが効果的です。
チャレンジを恐れる
インポスター症候群に悩む人は、失敗を恐れて新しいことへの挑戦を避ける傾向があります。彼らは、自分が成功しているのは偶然や他人の助けによるものと感じ、自分の能力に自信が持てないため、新しいタスクや責任を避けることがあります。
「自分にはできない」といった思考が根底にあり、結果として成長機会を逃してしまうことが少なくありません。このため、企業内でのキャリアアップやスキル向上の機会にも積極的になれず、組織全体のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
人事担当者や上司は、こうした従業員に対して失敗を恐れず挑戦することを奨励し、サポートする姿勢が求められます。
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完璧主義
完璧主義はインポスター症候群に深く関連しています。従業員は全てを完璧にこなさなければならないと感じ、小さなミスでも自分を厳しく責めることが多いです。このような場合、人事担当者は失敗を学びの一部と捉え、フィードバックを通じて成長を促す姿勢を奨励することが有効です。例えば、プロジェクト終了時に振り返りの場を設け、失敗から得た教訓を共有する文化を築くことで、完璧主義からの解放をサポートできます。
他者と比較しがち
自分と他者を常に比較することは、自己評価の低下を引き起こしやすいとされています。従業員が他の同僚と比べて自分を過小評価することが続くと、インポスター症候群を悪化させる原因となります。
他者との比較ではなく、個々の進歩や成長を評価する制度を設けることが重要です。例えば、従業員一人一人の目標設定を明確にし、その進捗に焦点を当てた評価システムを導入することで、個々の成長に目を向けやすくなります。
評価への過剰な不安
インポスター症候群の人は、他者からの評価に対して非常に敏感です。「自分は能力が不足しているのではないか」と不安になり、その不安が仕事の質に影響を与えることがあります。この問題を軽減するために、人事部門はフィードバックの質と頻度を見直すことが効果的です。具体的には、ポジティブなフィードバックを増やし、定期的なパフォーマンスレビューを通じて、従業員が自分の実力を正当に評価できる機会を設けることが挙げられます。
インポスター症候群の原因
インポスター症候群の原因はさまざまですが、心理的または文化的要因が影響されます。どのような原因があるのか知っておくことが、インポスター症候群を改善する上では大切です。
育成環境や社会的期待
インポスター症候群の原因の一つとして、幼少期からの育成環境や社会的期待が挙げられます。特に、子供時代に厳しい評価や完璧主義が求められる環境で育つと、「失敗は許されない」と感じるようになります。
特に日本の女性の場合、社会からの「女性らしさ」やジェンダーに関する期待がインポスター症候群を引き起こしやすく、職場での成功が「偶然」や「運」としか感じられなくなることが少なくありません。
職場での高い要求
職場での成果主義や高い要求もインポスター症候群を引き起こす大きな要因です。特に成果やパフォーマンスに重点を置く企業文化では、従業員が自分の仕事の価値を業績だけで評価しがちです。
上司や同僚からの期待が高くなるほど、従業員はその期待に応えられなければ「自分は無能だ」と感じるリスクが増えます。特に、昇進やプロジェクトリーダーとしての役割を任されたときに「自分にはその資格がない」といった不安を抱えることが多いです。
このような環境では、成功体験も「たまたま運が良かっただけ」として、自分の能力を正当に評価できなくなりがちです。
他者との比較
職場での他者との比較も、インポスター症候群を引き起こす重要な要素です。特に、同僚や上司と絶えず比較される環境では、周囲が優れていると感じ、自分の能力を低く評価することが増えます。SNSや職場でのパフォーマンス指標が可視化される現代では、他者の成功や業績が目に入りやすく、相対的に自己評価が下がりやすいです。自分がどれだけ成功しても、他者の成果を見て「自分はまだまだ足りない」と感じ、自己不信に陥ることがあります。特に競争が激しい環境では、同僚との比較が日常化し、自己評価を下げる要因となります。
人事担当者は、こうした比較文化を排除し、個々の成長を重視する評価制度を整えることが求められます。
インポスター症候群の対処法
インポスター症候群の人はネガティブな発言が増えてしまい、放置すると周囲に悪影響を与えます。ここでは、人事担当者として、インポスター症候群の人にどのように対処すればよいか解説します。
成功体験を記録する
インポスター症候群に悩む人は、自分の成功を偶然や他人の助けによるものだと感じがちです。これを克服するために、自分の成功体験や成果を記録し、振り返る習慣を持つことが有効です。具体的には、日々の業務で達成したことや、周囲から受けたポジティブなフィードバックをメモや日記として記録します。これにより、自分がどれだけの努力をし、その結果がどのように結びついているかを客観的に確認でき、自己評価を向上させる助けとなります。
記録することで、感情に流されずに自分の実績を再確認することができるため、自信を取り戻すことができます。
他者と比較しない
インポスター症候群を悪化させる要因の一つが、他者との比較です。自分と同僚や他人を比較することで、劣等感や不安が生まれやすくなります。このような比較を避け、代わりに自分の成長に焦点を当てることが重要です。例えば、過去の自分と今の自分を比較し、どれだけ成長したかを意識することで、自己肯定感が向上します。また、他人の成功に嫉妬するのではなく、他人から学び、自己改善の参考にする姿勢を持つことで、前向きな思考に転換することができます。こうした心構えが、自己評価の安定に繋がります。
ネガティブな考えをリフレームする
インポスター症候群の人は、失敗や批判を過度にネガティブに受け取りがちです。そのため、ネガティブな考えをリフレーム(再解釈)し、ポジティブな側面を見出す習慣をつけることが効果的です。例えば、「失敗したから無能だ」と考えるのではなく、「この経験から何を学べるか」に焦点を当てることで、自己成長の糧にできます。また、ミスや批判を個人攻撃として受け取るのではなく、改善のチャンスと捉えることで、自己評価を低下させずに前向きに取り組むことが可能です。リフレーミングは、自己肯定感の向上に重要なスキルです。
参考記事:リフレーミングとは?出来事をポジティブに変換する手法、具体例について、わかりやすく解説
インポスター症候群を予防するために企業がとるべき施策
フィードバック文化の醸成
企業内で定期的かつ建設的なフィードバックを行う文化を作ることは、インポスター症候群を防ぐために非常に重要です。フィードバックは、従業員が自分の成果や成長を客観的に認識する手助けとなります。
特に、ポジティブなフィードバックを定期的に行うことで、従業員が自分のスキルや努力を正当に評価できる環境を整えることができます。また、評価だけでなく、成長の過程や努力の部分も認めることで、失敗や不安を感じにくくなります。フィードバックを通じて従業員の自己肯定感を高めることが、長期的にインポスター症候群の予防につながります。
360度評価の導入
360度評価は、従業員の自己評価の歪みを是正するために非常に有効です。複数の視点から評価を受けることで、上司や同僚、部下からのフィードバックが総合され、偏った自己認識を修正する手助けになります。インポスター症候群に悩む従業員は、他者からの肯定的な意見を受け入れにくい場合がありますが、360度評価では多面的な評価が集まるため、自己評価が偏らず、事実に基づいた認識が可能となります。さらに、定期的な評価が行われることで、従業員は自分の成長を定期的に確認できるため、自己肯定感を持ち続けることができます。
参考記事:【2024年最新】360度評価とは?メリットやデメリットを徹底解説
メンタルヘルスサポートの充実
メンタルヘルスケアの充実は、インポスター症候群の予防に効果的です。企業はカウンセリングサービスやメンタルヘルス専門家との連携を強化し、従業員が心理的な悩みを抱え込まずに相談できる体制を整える必要があります。特に、インポスター症候群の初期段階では、悩みを誰かに話すことで、早期に不安を軽減できることがあります。心理的支援の体制が整っていることで、従業員は安心して働ける環境を享受でき、自己評価の安定化にも繋がります。メンタルヘルスのサポートは、働きやすい職場作りの一環として重要な施策です。
挑戦を奨励する職場環境の構築
インポスター症候群を予防するためには、従業員が新しい挑戦に恐れずに取り組める環境を整えることが大切です。失敗を許容し、挑戦を奨励する職場環境を作ることで、従業員が成長する機会を増やし、自信を持てるようにします。具体的には、従業員が新しいプロジェクトや役割にチャレンジできる機会を提供し、失敗してもその経験をポジティブに評価する文化を醸成することが効果的です。また、成長の過程を評価するフィードバック体制を整えることで、従業員が挑戦に対して前向きな姿勢を持つことができます。
個々の成長を評価する制度の導入
インポスター症候群を防ぐためには、業績だけでなく、従業員の成長プロセスも評価する制度を導入することが重要です。短期的な成果のみで評価されると、自己評価が偏りやすくなりますが、スキルアップや努力の過程を重視した評価制度を整備することで、従業員は長期的な成長を実感でき、自己肯定感を高めることができます。定期的なフィードバックや1on1ミーティングを通じて成長を確認し合うことで、インポスター症候群のリスクを軽減し、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。
インポスター症候群のメンバーとの効果的な対話方法
インポスター症候群に苦しむ従業員とのコミュニケーションは、慎重かつ効果的に行う必要があります。彼らは自己評価が低く、他者からのフィードバックを正当に受け取れないことが多いため、適切なアプローチが求められます。上司や同僚がポジティブで建設的なフィードバックを通じて、メンバーが自信を持てるようにサポートすることが重要です。
また、フィードバックだけでなく、対話を通じて従業員が安心して自己表現できる環境を整えることが、インポスター症候群の改善に役立ちます。
ポジティブなフィードバック
インポスター症候群に悩む従業員には、ポジティブで具体的なフィードバックが効果的です。彼らは自分の成功を偶然や他人のおかげだと感じることが多いため、努力や成果に対して具体的に称賛し、自己評価を改善させることが重要です。
成功事例だけでなく、プロジェクトにおける努力や困難な状況にどう対処したかなど、プロセスにも焦点を当てたフィードバックを行うと、従業員は自分の能力をより理解しやすくなります。これにより、彼らは自己肯定感を高め、職場での自信を取り戻すことができます。
共感的な傾聴
共感的な傾聴は、インポスター症候群に悩む従業員が自分の感情を安心して表現できる環境を提供します。従業員が自分の不安や疑問を話す際、上司や同僚が真剣に耳を傾け、共感する姿勢を見せることで、彼らは安心感を得られます。話を聞く際には、相手の話に共感しつつ、相手が感じている問題を解決する手助けをする姿勢が大切です。例えば、「その気持ちはよくわかる」といった共感の表現を交えながら、問題に寄り添う姿勢を示すことで、従業員はサポートを受けていると感じ、心の負担が軽くなります。共感的な傾聴は、インポスター症候群の緩和に大いに役立ちます。
成長過程を評価する姿勢
インポスター症候群の従業員には、結果だけでなく成長過程を評価する姿勢が重要です。彼らは短期的な成果だけを重視する傾向があり、長期的な成長を見逃しがちです。そのため、上司や同僚が努力やスキルアップの過程を積極的に認めることが、自己評価の安定化に繋がります。たとえば、プロジェクトの進行中に新しいスキルを学んだり、困難な状況に対して柔軟に対応できたことを評価するなど、成長に焦点を当てることで、従業員は自分が継続的に成長していることを実感できます。これにより、彼らは自己肯定感を高め、インポスター症候群から抜け出しやすくなります。
まとめ
インポスター症候群は、職場においてパフォーマンスや従業員の健康に悪影響を及ぼす可能性が高い現象です。しかし、適切な対処法や人事担当者のサポートを通じて、従業員が自己評価を改善することは可能です。
特に360度評価を活用した多面的なフィードバックは、自己評価を事実に基づける有効な手段となります。企業全体でインポスター症候群を理解し、対応していくことが、組織の健全な成長に繋がるでしょう。
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