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安全配慮義務とは?労働基準法で定められた企業の責任をわかりやすく解説

2024.11.19 その他

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多くの人が驚いた夢の国で起きた安全配慮義務違反についての裁判。
最近、注目されている「安全配慮義務」とは何か?何が必要か?について今回は解説していきます。
活気あふれる職場環境づくりでは欠かせない取り組みとなりますので、最後まで、是非お読みください。

安全配慮義務とは?

労働契約法で定められている義務

労働契約法第5条に「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とあります。

なぜ安全配慮義務ができたのか?

昭和50年2月25日最高裁小法廷判決が出された「陸上自衛隊事件」、昭和59年4月10日最高裁小法廷判決が出された「川義事件」の労働者が職務中に死亡した事件・事故での判例をきっかけに、安全配慮義務の規定が明文化されました。
平成20年3月より労働契約法が施行されるにあたり出された厚生労働省の「労働契約法のあらまし」から見ると、趣旨として使用者は労働者を指定した場所に配置し、使用者側の設備などを用いて労働に従事することから、労働契約の内容として具体的な定めがなくとも、労働契約に伴い信義則条当然として、使用者は労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っていると認められるところのものですが、民法等の規定からは明らかになっていませんでした。ここから、労働契約法第5条にて規定したものとされています。
厚生労働省「労働契約法のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/13.pdf

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安全配慮義務はなぜ必要なのか?

安全配慮義務の必要性は単に法律で定められたから、というものではありません。
会社が存続し、発展していくために欠かせない要素に大きく関わっている取り組みだからです。
具体的には、「社員の定着と流出防止」「生産性の向上」「企業ブランディング」が挙げられます。
設備、業務の動線、人間関係上の環境などで、物理的にも心理的にも安全性高い職場で働くことができれば、社員の流出を防ぎ、定着を促すことができます。
人材の動きが安定すれば、効率良く成果を上げていくことができます。また、社員が心身ともに健全であることも、業務のパフォーマンスを向上させます。
さらに、働きやすい職場を実現することは、外部への大きなアピールにもなります。
特に昨今の新卒採用時の就活生のチェックするポイントの一つに職場環境・安全性があげられるようにもなりました。

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安全配慮義務の範囲は?

ここでは安全配慮義務の範囲について解説します。

健康配慮義務

従業員の健康管理については、従業員個々に任せっぱなしにせず、会社側の働きかけで細かくチェックしていく必要が叫ばれるようになりました。
特に下記の三つについては、事業規模に関わらず経過の管理も含めて重要視されています。
・健康診断
・労働時間管理
・メンタルヘルス対策

「健康診断」は、年に1回、深夜業務を含む有害業務に携わる場合は半年に1回の実施が事業者には義務付けられています
従業員の健康状態を確認することで、健康上の面で不適切な配置転換や働かせ方をしていないかを確認します。また、健康状態で指摘があった場合は、産業医などが適切な指導、改善を促し、健康的に働き続けられるようにサポートします。
「労働時間管理」は、昨今の過重労働による労災事故防止の観点でも大変に重要なものになります。リモートワークが増えた中で、勤務時間の管理が曖昧になりやすくなっていますので、会社の運営状況に応じ、適切な労働時間の管理を会社側がしていかなくてはなりません。
「メンタルヘルス対策」は 、2015年にストレスチェックが義務化されたことから、一気に注目されるようになりました。昨今の変化が激しい社会情勢の中で、常に従業員は多くのストレスにさらされています。
過密な労働、職場の人間関係などでメンタルヘルス不調を訴える従業員が増える傾向が増しています。これに対しての対策が事業者には求められています。

職場(作業)環境配慮義務

これまでは職場環境への配慮は、労働安全衛生法に基づき定められている労働安全衛生規則にあるような、物理的な環境への対策が中心でした。
しかし、ここ10年ほどの間に労働者の精神面での安全や健康へも配慮する必要とする声が強くなってきています
その一つが「ハラスメント対策」です。
働き方、人材、企業の方向性、と様々な方面で多様化が進む中、差別やハラスメントへの配慮と対策、防止のための教育は会社運営では欠かせなくなりました。

関連する企業、派遣に対しても発生する義務とは

会社運営は自社だけでは成り立ちません。取引先企業、下請け業者、協力体制にある企業などの繋がりの中で、互いに受発注、作業連絡、作業工程などの取り決めをしておくことは、双方の社員の過重労働を防止し、双方に業績の向上をもたらします。
また、派遣社員として受け入れているメンバーについても、最終的な管理責任は派遣元ですが、自社のメンバーと同様に配慮することで、差別を感じさせずに気分良く働ける環境となるでしょう。

安全配慮義務の違反とは?

安全配慮義務の違反とは、会社側(使用者)が安全配慮義務を怠ったことで社員(労働者)に損害が生じてしまうことを指します。
・過重労働
・劣悪な労働環境
この二つは安全配慮義務の違反としてよくあげられるものです。
「過重労働」については、「過労死ライン」の言葉とともに、昨今、ニュースでも目にする機会が増えています。
「過労死ライン」とは、「2〜6ヶ月の平均残業時間が80時間」「1ヶ月の残業時間が100時間」のいずれかを超えてしまう場合があてはまります。
深刻な人手不足問題を抱える会社にとっては、人手が足りない分を社員の労働時間の積み増しで解消するしか術がなく、この積み重ねで違反に及んでしまうケースが目立ちます。特に最近では、感染症予防の観点により、一度に従事できる人員が制限されたり、自宅待機などで突発的に一定期間、出社が難しい社員が増えたり、と環境が厳しい方向へと向かいがちになっています。
「劣悪な労働環境」については、特に夏の職場では問題となります。
ここ数年、気象変動の影響もあり気温上昇の傾向にある中で、適切な温度管理ができていない環境での業務となってしまうケースが増えているようです。しかし、28度以上の環境で仕事をさせることは事務所衛生管理基準規則の努力義務にある室内環境の基準を超えていることになり、違反となってしまいます。

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安全配慮義務とパワハラ、精神疾患との関係と事例

安全への配慮がなく、社員への教育が行き届かず、職場環境も人間関係も問題を抱える職場では、社員のストレスから多くの問題が発生します。
ハラスメントの問題については、ハラスメントの定義、事例を十分に教育されておらず、職場のコミュニケーションが不足していると、本人が意識せず発した言葉や起こした行動でハラスメントが生じてしまいます。
特に教育が十分でない中で、業績向上のプレッシャーを中間管理職やリーダーポジションの人材にかけてしまうと、本人は鼓舞するつもりで発したものが部下にとってはパワハラとなってしまうことが多くなりがちです。また、このような環境では自分の優位性を利用してのいじめも発生しやすくなります。
さらにコミュニケーションの不足は、特定の社員の仕事の抱え込みも発生させてしまい、必要以上の過重労働を発生させてしまう可能性があり、心身の健康維持が困難になり、特にうつなどの精神疾患への原因となりかねません。
東京都労働相談情報センターによる「使用者の安全配慮義務」では、「安全配慮義務と健康配慮義務に関する判例」として、「アテスト(ニコン熊谷製作所)うつ病自殺事件」の事例が挙げられています。
東京都労働相談情報センター使用者の安全配慮義務」
https://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.lg.jp/mental/line_care/law/abor.html

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安全配慮義務として具体的にすべきことは?

安全衛生管理体制を整える

事業規模に合わせて、安全衛生管理体制を整えることが大切です。
衛生管理者、安全衛生推進者の設置、現場での作業主任者、作業責任者を設ける、産業医・産業保健指導の担当者の設置といったものが有効とされています。

メンタルヘルス対策を実施

労働者のメンタルヘルス不調を防止する一つの有効手段とされているのがワーク・ライフ・バランスの実現です。
2015年の義務化により実施されるようになっているストレスチェックも有効に活用し、職場環境・人間関係の環境整備、サポートも必要でしょう。

労働時間管理の徹底

リモートワークの普及に伴い、労働時間の管理は難しさを増しています。
見えない残業解消も含め、業務効率化を推進し、単純に労働時間の短縮をと呼びかけるのではなく、業務改善に取り組むことも大切です。

心身ともに快適に感じる職場環境づくり

体の健康と心の健康は密接に関係しています。
人の悩みの9割は人間関係ともいわれることもあり、会社内の人間関係について取り組みを考える企業も増えてきました。
相談窓口の設置、ハラスメントに関する教育の徹底、社員一人ひとりの特性を伸ばす企業風土づくりといった取り組みも重要となるでしょう。
特に、相談窓口については、相談しても「相談者側に非があると、話を受け付けてもらえない」「相談したが、何の対策もなければ、上に報告もされない」といった形だけの相談窓口が多くあり、このために対策や処置が遅れ、裁判沙汰にまで発展して企業イメージを大きくダウンさせる事例が増えています。相談窓口としての機能をしっかりと持たせた窓口の設置が必須です。

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コロナ禍における安全配慮義務の課題

新型コロナウイルスの影響により、働く環境が大きく変わった企業も多くあります。
出勤制限、分散出社、リモートワークといった勤務体系の変化のほか、パーテーション設置、換気システムの導入、消毒液・消毒作業など新しい生活様式に合わせるための取り組みが増えました。
このため、職員への負担が大きくなった職場が増え、過重労働の心配や、資格を持ったもの以外が対処できないことが発生したことにより職を失うケースも出てきました。
仕事が増えた人、減った人、それぞれへの配慮が必要でしょう。
そして、感染者・濃厚接触者となった社員への対応でも配慮が必要となります。
社内で差別、分断、孤立ということが発生しないよう配慮することも安全配慮義務の一つと言っても良いかもしれません。

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安全配慮義務のまとめ

今回は安全配慮義務について解説しました。物理的な安全対策の他に、メンタルにおける配慮も大切となっているのが、最近の特性です。
快適な職場環境で、適切な距離感を持った社員同士のコミュニケーションで働きやすい企業となることは、今や「求職者から選ばれる会社」という、企業ブランディングでは外せない項目かもしれませんね。


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HRコラム編集部

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