モラハラとは?不機嫌な職場にしないための予防策と対処法をわかりやすく解説
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職場におけるモラルハラスメント(モラハラ)は、現代の企業にとって見過ごせない深刻な問題です。モラハラは被害者のみならず、周囲の同僚にも大きなストレスを与え、企業全体のパフォーマンスや信頼性にまで悪影響を及ぼします。
本記事では、モラハラのリスクとその対策方法について詳しく解説します。
目次
モラハラとは
モラルハラスメント(モラハラ)は、精神的な嫌がらせ行為を指します。具体的には、相手の心を傷つける言動や行為を繰り返すことで、被害者に長期間にわたるストレスや苦痛を与える行動です。パワハラやセクハラとは異なり、モラハラは明確な物理的な力や性的な行為を伴わないため、表面上は見えにくく、発見が難しいケースも多いです。しかし、その影響は深刻で、被害者のメンタルヘルスに多大な悪影響を及ぼし、企業全体の生産性や士気にも悪影響を与えるとされています。
パワハラの定義とモラハラとの違い
パワーハラスメントは厚生労働省によれば「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」とされています。
パワハラとモラハラの違いは、モラハラは職場内に限らず、家庭やその他の活動場所でも発生する可能性がありますが、パワハラは立場の上下が存在する職場に限定されて起こるハラスメントとも言えます。
厚生労働省「労働者の皆さまへ ハラスメント防止のためのハンドブック」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000474782.pdf
セクハラの定義とモラハラとの違い
セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、厚生労働省によると「『労働者』の意に反する『性的な言動』により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること」と定義されています。
セクハラは身体的なもののほか、精神的な嫌がらせの中でも「性的なものによる」嫌がらせに限定されます。
厚生労働省「労働者の皆さまへ ハラスメント防止のためのハンドブック」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000474782.pdf
モラハラが注目された背景
1998年にフランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌの著書「モラル・ハラスメント〜人を傷つけずにはいられない」にて提唱され、注目を浴びるようになりました。
現在では、離婚の原因や退職の原因などで上位にランキングされるようになり、職場環境、家庭、結婚など多くの場面で意識されるようになったハラスメントです。
職場におけるモラハラの具体的な行為
職場でのモラハラは様々な形で現れますが、以下のような例が挙げられます。
精神的苦痛を与える行為
人格否定や相手の外見を中傷する発言など、精神的な苦痛を与える行為はモラハラに当たります。
- オープンスペースや他の従業員の前で叱責する
- あいさつや話しかけを無視する
- 「お前はダメだ」「こんな簡単なこともできないのか」といった否定的な言葉を投げかける
他の従業員の前で叱責することで、被害者は次第に自己肯定感を失い、職場においても自分の価値を感じられなくなります。また他の従業員に対しても恐怖感を与えることがあり、このような行為は職場の士気を低下させ、働く環境そのものを不快なものにします。
無視が繰り返されることで、被害者は自分が職場で存在していないかのように感じ、強い孤独感を抱くようになります。
人間関係の切り離し行為
一人のメンバーだけを意図的にグループから排除し、ランチや会議に誘わないなど、被害者を職場内で孤立させる行為もモラハラに当たります。こうした孤立が長期間続くと、被害者は自信を喪失し、職場でのパフォーマンスも低下します。
プライベートへの過度な介入
上司が部下の私生活に踏み込みすぎ、「結婚はまだ?」など、個人的な質問を繰り返すことや、休日にプライベートな電話をかけるなどもモラハラに該当します。
これらが度を越すと、被害者は監視されているように感じ、職場においてもストレスを抱えるようになります。また、職場の外でも監視されていると感じるようになります。
意図的に仕事の進行を妨害する行為
業務の妨害行為もモラハラの一種に該当します。
- 必要な情報を提供しない
- 無理な納期を設定する
- 1人ではこなせない量の仕事を任せる
- 仕事を任せない
こうした行為は、仕事の成果物に悪影響を与え、被害者を精神的に追い詰めます。
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職場におけるモラハラの特徴
モラハラは目に見えにくい形で行われるため、加害者も被害者もその存在に気づきにくいことが特徴です。以下に、モラハラの加害者と被害者になりやすい人物像を示します。
モラハラの加害者になりやすい人の特徴
モラハラの加害者なりやすい人の具体的な特徴を挙げます。
- 自己主張や自己愛が強い
- 承認欲求が強い
- 共感力が低く、価値観を一方的に押し付ける
- 正しさの主張が強い
- 他人をコントロールしようとする欲求が強い
モラハラの被害者になりやすい人の特徴
モラハラの被害者となりやすいタイプは以下のような特徴があります。
- 自己肯定感が低い
- 断ることが苦手
- 無理して人間関係の円満を優先する
- 周囲に対して遠慮がち
- 自分を押し殺してしまう
職場でのモラハラは本人も気づきにくい
職場でのモラハラは、被害者自身が自覚しにくいケースも多々あります。特に、長期間にわたって繰り返される場合、被害者はその行為が正常な指導の一部であると錯覚してしまうことがあります。そのため、周囲のサポートや定期的なチェックが不可欠です。
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職場のモラハラを放置するリスク
職場においてモラハラが発生し、それを放置した場合、企業にとって様々な重大なリスクが生じます。ここでは、特に重要な5つのリスクを挙げ、紹介します。
企業のブランド力の低下
モラハラが職場で黙認されると、企業の評判が急速に悪化します。現代では、SNSや口コミサイトでの拡散が容易なため、従業員が社外で不満を表明することも珍しくありません。このようなケースは、ブランド力の低下に直結し、長期的な売上や市場での競争力に悪影響を及ぼします。
従業員のモチベーション低下
モラハラの被害者だけでなく、それを見聞きしている周囲の同僚もその影響を受け、職場全体のモチベーションが低下します。モラハラが見過ごされている職場では、従業員は「自分もいつ被害者になるかわからない」という不安を抱きます。これが生産性の低下を引き起こし、チーム全体のパフォーマンスが著しく悪化する原因となります。モチベーション低下による業績への影響を防ぐためにも、モラハラ対策が急務となります。
離職率の上昇
モラハラが放置される職場では、従業員が耐えきれずに退職するケースが増加します。特に、優秀な人材ほど、働きやすい環境を求めて他社へ移る傾向があります。離職率の上昇は、単に人材の質の低下を招くだけでなく、新しい従業員の採用・育成にかかるコストも膨らみます。さらに、新入社員の定着率が低い場合、企業の成長が阻害されるリスクも伴います。
関連記事:離職率が高い企業に共通する特徴とは?原因と対策を徹底解説
訴訟リスクの増加
モラハラが深刻化した場合、被害者から訴訟を起こされるリスクが高まります。もし訴訟や労働審判に発展すれば、企業は多額の賠償金や和解金の支払いを余儀なくされる可能性があります。また、訴訟が長期化すれば、法務費用やブランドイメージの悪化など、さらなる経済的損失を被ります。
メンタルヘルスの悪化
モラハラによるストレスが原因で、従業員のメンタルヘルスが悪化するリスクも高まります。うつ病や不安障害などの健康問題が増加し、結果として病欠者や長期休職者が増える可能性があります。こうした事態は、職場の生産性低下につながり、保険費用の負担増加も招きます。企業としては、メンタルヘルスケアを強化し、モラハラを未然に防ぐことが重要です。
職場でのモラハラを予防するための対策
モラハラが注目され、多くのメディアにてさまざまな事例が紹介されるようになった今でも、自分がモラハラ加害者である、または被害者であることを自覚できる人は、ほとんどないと言って良いほど少ない状況です。
モラハラを未然に防ぐためには、組織としての事前対策が欠かせません。ここでは、効果的な3つの施策について解説します。
定期的なハラスメント研修の実施
ハラスメント研修は、モラハラを未然に防ぐために不可欠な施策です。どのような行為がモラハラに該当するか、またそれにより職場環境にどのような悪影響を及ぼすかの理解を深めるため、定期的にハラスメント研修を実施します。
研修を継続的に行うことで、社員のハラスメントに対する意識が定着し、適切な行動が習慣化されます。また、最新の事例や法規制を取り入れた知識をアップデートし続けることができます。
定期的な従業員アンケートの実施
定期的な従業員アンケートを通じて、職場の現状や問題点を把握することも重要です。ハラスメントの有無を尋ねるだけでなく、職場のコミュニケーションやチームワークに関する質問も加え、潜在的なモラハラの兆候を早期に発見することが重要です。
相談窓口の設置
モラハラを受けた場合に相談できるように、相談窓口を設けます。従業員が安心して相談できるように、匿名でも相談できる環境を整えます。窓口に相談したら加害者に相談したことを知られてしまい、さらに激しいモラハラを受けた、という事象は多くの企業で発生しています。そのため秘密の保持を徹底し、解決のための対応も慎重にすることが大切です。
相談手段は、対面だけでなく、メールや電話、オンラインチャットなど複数の方法を用意することで、多くの従業員が利用しやすくなります。
また、相談後のフォローアップ体制を整備し、問題解決の進捗状況を確認することが重要です。相談だけで終わらせず、定期的に状況をチェックすることで、問題が解決に向かっているかを確認し、再発防止に役立てることができます。
職場でモラハラが起きた場合の対処法
モラハラが発生した場合、企業の信頼性や従業員のメンタルヘルスに悪影響を与えないために、適切かつ迅速な対処が求められます。人事担当者や管理職は、以下のステップを踏んで、職場環境の健全化を図る必要があります。
- 事実確認を行う
- 就業規則に基づいた措置をとる
- メンタルケアや再発防止のためのフォローを行う
順を追って解説します。
事実確認を行う
モラハラが報告された場合、最初に行うことは事実確認です。
これは単なる聞き取り調査ではなく、被害者・加害者双方の話を慎重に聞くプロセスです。
加えて、ハラスメントが発生した日時、場所、状況、行為内容などの情報を集め、相談者以外から集めた情報との整合性を確認します。
ここで注意すべき点は、被害者が安全に話せる環境を整えること、相談者だけに偏らず中立的な立場を心がけることも重要です。モラハラはしばしば目に見えにくいため、信頼できるヒアリングシートのフォーマットを使用して、情報を体系的に整理することが有効です。
就業規則に基づいた措置を行う
事実確認が完了したら、次は就業規則や会社のハラスメント対策ポリシーに基づいて、適切な措置を講じます。措置として懲戒に値する場合は、就業規則に則り、行為者に対しけん責、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇などの処分をすることになりますが、加害者が認めない場合は法的機関に委ねられることもあります。
また、加害者に対する警告や懲戒処分だけでなく、再発防止のための教育プログラムを導入することも含まれます。例えば、加害者に対しては行動改善プログラムへの参加を義務付けることで、が自分の行動の問題点を認識し、将来的な問題を防ぐことができます。また、企業全体に向けてのハラスメント防止方針を明確にし、対処することが重要です。
メンタルケアや再発防止を行う
被害者へのメンタルケアだけではなく、加害者に対するサポートも重要です。
被害者に対しては、特に深刻なケースでは、専門のカウンセリングを提供し、精神的なサポートを強化します。また、再発防止策として、被害者と加害者を必要に応じて物理的に距離を保つようにすることが有効です。例えば、部署の異動や業務の再割り当てなどの柔軟な措置を講じることで、被害者が安全に働ける環境を確保します。
加害者には専門的なカウンセリングや、ハラスメント防止研修を受けさせることで、彼らが自分の行動の問題点を認識し、再発防止に向けたサポートを提供します。加害者に対しても、成長の機会としてサポートを行うことで、職場の再統合を目指します。
360度評価を活用したモラハラ防止の取り組み
360度評価とは
360度評価は、ハラスメントを防止するためにも有用なツールです。360度評価とは、従来の評価方法とは異なり、上司からの評価だけではなく、同僚、部下、他の部署の社員など、評価対象者に関わるあらゆる立場の人が評価を行うことが特徴です。
360度評価を活用したモラハラの検出
多方面からの意見を収集することで、従来の評価制度では見過ごされがちなモラハラを早期に検出することが可能です。360度評価の回答データから「パワハラを引き起こしやすいタイプ」と類似傾向を持つ方を抽出することができます。また、周囲からのコメントを通して、人事担当者がハラスメント行為を把握ことができます。
360度評価を活用したモラハラの防止
360度評価は、モラハラの予防にも効果的です。多様な視点からのフィードバックを得ることで、自身の言動が周囲にどのように受け取られているかを知る機会を得ます。具体的には、回答データやコメントから「本人が気づいていない自身の課題」がわかるため、ハラスメント行為の自覚がなかった場合にも行為者に気づきを促すことができます。
また、フィードバックを受けた上司が自分のコミュニケーションスタイルを見直し、改善策を実行することで、モラハラを未然に防ぐことができます。
360度評価を活用したハラスメント対策については、下記資料もぜひお役立てください。
→これから始める「パワハラ対策」施策ガイドブック
まとめ
今回はモラハラについて、発生した場合の対応策まで解説しました。
モラハラが発生した際の対処法には、被害者だけでなく加害者に対するサポートも含まれます。これにより、職場全体の信頼関係を再構築し、従業員が安心して働ける環境を作り出すことが可能になります。モラハラは、企業の健全な成長を阻害するリスクがある一方で、適切な対応と予防策によって、そのリスクを大幅に軽減することができます。人事担当者は、モラハラの検出と防止のための仕組みを整え、従業員が働きやすい環境を提供することが重要です。
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