キャリアブレイクの実態と企業の人事が取るべき対応策
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現代の働き方は多様化しており、キャリアブレイクを取る人が増えています。人事担当者にとって、この動向は採用戦略や人材マネジメントの重要なテーマとなっています。本記事では、キャリアブレイクの実態と、企業がどのように対応すべきかを解説します。
近年、キャリアブレイクは単なる休職や退職ではなく、個人のキャリア形成の一環として捉えられています。特に、リスキリングやライフイベントへの適応としての活用が増加傾向にあり、企業側の対応が求められています。本記事では、キャリアブレイクの定義、影響、企業の対応策について詳しく解説します。
目次
キャリアブレイクを取る理由とその影響
キャリアブレイクを取る理由は人それぞれですが、共通する点も多くあります。近年では、単なる休養だけでなく、キャリアのリセットや自己成長の機会としての活用が増えています。企業側もこれらの理由を理解し、適切な対応を講じることが重要です。
キャリアブレイクを取る主な理由
キャリアブレイクを取る理由は多岐にわたります。近年では、単なる休養だけでなく、キャリアのリセットや自己成長の機会として活用されるケースも増えています。代表的な理由を見ていきましょう。
育児・介護
家族のケアを優先するために、一時的に仕事を離れるケースが増えています。特に、共働き世帯の増加に伴い、育児や介護の負担を分担する必要性が高まっています。また、育児休業制度や介護休業制度を活用するケースも増えていますが、長期の休職後の復職が難しくなることも課題です。
リスキリング・学び直し
キャリアアップや転職を目的に、新しいスキルを習得するための学び直しが増加しています。特にデジタルスキルやマネジメントスキルの向上を目指す人が多く、MBAや専門資格の取得を目指すケースもあります。日本でも政府が推奨するリスキリング支援が広がり、キャリアブレイクを利用して学習する人が増えています。
健康・メンタルヘルスの回復
長時間労働やプレッシャーの影響で、心身の健康を損なう人も少なくありません。精神的な回復を目的としたキャリアブレイクは、バーンアウトの防止や長期的な生産性向上につながる重要な選択肢となっています。特に、メンタルヘルス問題が社会的にも認知されるようになり、キャリアブレイクの意義が見直されています。
ワークライフバランスの見直し
仕事中心の生活から一度離れ、自分の価値観や将来の方向性を見つめ直す人も増えています。特に、フリーランスや副業を経験し、自分に合った働き方を模索するケースが増加しています。多様な働き方が認められる社会では、キャリアブレイクを経て新たな働き方を選択する人が増えています。
キャリアブレイクのメリット
キャリアブレイクには、個人の成長や新たな経験を積む機会として多くのメリットがあります。企業にとっても、復職後の人材価値を高める要因となるため、前向きな視点で捉えることが重要です。
スキル向上とキャリアの幅の拡大
キャリアブレイク期間中に学び直しやリスキリングを行うことで、新たなスキルを獲得する機会が生まれます。例えば、語学やITスキルを習得したり、専門資格を取得したりすることで、復職後のキャリアの選択肢が広がります。
リフレッシュとメンタルヘルスの向上
長期間働き続けることで蓄積されるストレスや疲労を解消し、心身の健康を取り戻すことができます。これにより、復職後のパフォーマンス向上や職場でのモチベーション向上が期待できます。
視野の拡大と新たな価値観の獲得
異業種への挑戦や海外留学、ボランティア活動など、普段の業務では得られない新しい経験を積むことで、柔軟な思考力や適応力が養われます。これにより、問題解決能力やチームワークの向上にもつながります。
人間関係の見直しと新たなネットワークの構築
仕事を離れることで、家族や友人との関係を深める時間が増えます。また、新たな環境に身を置くことで、異業種や異分野の人々とのネットワークが広がり、将来的なキャリアの可能性が広がることもあります。
キャリアブレイクのデメリット
一方で、キャリアブレイクにはリスクやデメリットも存在します。これらを理解し、適切な対策を講じることが重要です。
キャリアの空白期間による影響
キャリアブレイク中に業務から離れることで、最新の業界動向や技術の変化に適応しづらくなる可能性があります。特に、急速に進化する分野では、ブランクがあることで転職市場での競争力が低下するリスクがあります。
収入の不安定さと経済的リスク
キャリアブレイク期間中は収入が途絶えるため、生活費や将来の資金計画に影響を及ぼす可能性があります。特に、長期にわたるブレイクを取る場合、事前の貯蓄や経済的な準備が不可欠となります。
復職時の適応の難しさ
長期間仕事を離れることで、職場の環境や企業文化の変化についていけなくなるケースもあります。特に、新しいツールやシステムが導入されている場合、再適応に時間がかかることが予想されます。
企業がキャリアブレイク経験者を受け入れるメリット
キャリアブレイクを経験した人材は、業務から一時的に離れることで新たな視点を得ており、企業にとって貴重な人材となり得ます。近年では、企業がキャリアブレイク経験者を積極的に受け入れる動きも進んでいます。ここでは、企業側にとってのメリットを具体的に解説します。
多様な経験・スキルを持つ人材の活用
キャリアブレイク経験者は、新たなスキルや価値観を身につけていることが多く、企業にとって新たな視点をもたらす存在となります。特に、リスキリングを経て復帰する人材は、デジタルスキルやマネジメント能力を強化していることが多いため、企業の即戦力として活躍が期待できます。
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進
キャリアブレイクの受け入れは、多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に活用するD&Iの推進にもつながります。企業がキャリアブレイクを前向きに評価することで、採用の幅が広がり、組織の多様性が向上します。
キャリアブレイク後の復職時の課題
キャリアブレイク後の復職にはさまざまな課題が伴います。企業が適切なサポートを提供しないと、復職者の定着率が下がる可能性があります。
求人市場での評価(ブランクの影響)
キャリアブレイク期間が長いと、転職市場での評価が低くなる傾向があります。企業の採用担当者は、ブランクのある候補者に対してスキルやモチベーションの低下を懸念することが多く、採用プロセスが厳しくなることがあります。この問題を解決するためには、ブランク期間中の活動(学習、資格取得、ボランティア活動など)を評価に含める柔軟な採用基準の導入が求められます。
企業側の受け入れ態勢不足
多くの企業では、復職者をスムーズに受け入れる体制が整っていません。特に、復職者向けの研修やオンボーディングプログラムが不足していると、業務適応が遅れ、孤立感を感じやすくなります。復職者の業務復帰をスムーズにするためには、段階的な業務復帰プランを策定し、社内の理解を深めることが重要です。
スキルギャップの不安
技術革新や業務プロセスの変化により、キャリアブレイク期間中にスキルが陳腐化することがあります。特に、ITやデジタルマーケティング分野では、短期間で新しい技術やツールが登場するため、復職時にギャップを感じやすいです。このため、復職者向けのスキルアップ研修や、業務に適応するためのOJT(On-the-Job Training)を実施することが有効です。
キャリアパスの不透明さ
企業が復職者に対して明確なキャリアプランを提示しないと、復職後のモチベーション低下につながります。「元のポジションに戻れるのか」「新しい職務への適応が求められるのか」といった不安を払拭する必要があります。
キャリアブレイク後の企業ができる復職支援策
復職プログラムの整備
復職者がスムーズに業務に戻れるよう、社内研修やリスキリング講座を提供し、必要なスキルの再習得を支援する体制を整えます。特に、ITスキルやデータ分析などの研修は、どの業界でも有益です。研修期間を十分に設け、段階的に業務に慣れることができる仕組みを整えることが重要です。
柔軟な働き方の提供
復職後の適応期間を設け、短時間勤務やリモートワークを活用できるようにすることで、復職者の負担を軽減し、職場復帰を促進します。フレックスタイム制度やワークシェアリングも有効な手段です。また、復職後しばらくは業務負荷を軽減し、慣れるまでの期間を設けることも企業にとって重要なサポートとなります。
メンター制度の導入
復職者が職場に馴染みやすくするために、経験豊富な社員がメンターとしてサポートする制度を導入します。定期的な面談を実施し、業務適応の進捗や悩みを共有する場を設けることが重要です。メンターとの対話を通じて、業務だけでなくキャリアについての相談もできる環境を整えることで、復職者の安心感が向上します。
キャリアブレイクをネガティブにしないための社内制度
キャリアブレイクを企業の成長戦略の一環として捉えることで、従業員の働きやすさ向上や人材の定着率向上につながります。企業が積極的にキャリアブレイクを受け入れることで、ダイバーシティ推進や柔軟な働き方の実現につながるでしょう。
キャリアブレイクを許容する企業文化の醸成
企業がキャリアブレイクを前向きに捉えるためには、組織全体の文化を変えていく必要があります。ブレイクを取ることがキャリアにプラスになると認識される環境を作ることで、従業員のモチベーション向上にもつながります。
休職者を前提とした人事制度設計
休職やブレイクを前提とした社内制度を整備することで、従業員が安心してキャリアブレイクを取れるようになります。具体的には、長期休暇の活用促進や、復職後のスムーズなポジション確保などが挙げられます。
社内の意識改革
キャリアブレイクに対する偏見をなくすために、上司や同僚に向けた研修を行い、キャリアブレイクのメリットを周知することが重要です。
キャリアブレイクを前提とした働き方改革
企業がキャリアブレイクを制度として整えることで、従業員の働き方の選択肢を増やすことができます。例えば、一定の勤続年数に応じてキャリアブレイクを取得できる制度を設けることで、社員のキャリア形成を支援することが可能です。
キャリアブレイクを活用した人事戦略
キャリアブレイク経験者を積極的に活用することで、企業の競争力を高めることができます。人材の流動化が進む中で、キャリアブレイクを経験した人材の価値を最大限に引き出す施策が求められます。
人材流動化時代における新たな採用戦略
労働市場の流動化が進む中、キャリアブレイク経験者の採用が企業にとって重要になっています。ブレイク期間に習得したスキルや経験を適切に評価することで、新たな価値を生み出すことが可能です。
企業は、従来の採用基準を見直し、キャリアブレイクをポジティブに捉える採用方針を導入する必要があります。また、メンター制度や研修を提供し、ブレイク後の適応をスムーズにすることが求められます。
「アルムナイ採用」の活用
キャリアブレイクを経験した元社員を再雇用する「アルムナイ採用」は、企業にとって即戦力を確保する有効な手段です。企業文化や業務に精通しているため、迅速な適応が可能で、採用コストの削減にもつながります。
成功のためには、元社員との関係を維持し、ネットワーキングイベントやキャリア支援制度を提供することが重要です。こうした取り組みにより、企業は必要な人材を確保し、組織の競争力を向上させることができます。
副業・兼業を活かした柔軟なキャリア設計支援
副業や兼業を経験した人材を受け入れることで、企業の成長を促進できます。副業で培ったスキルや知識は、業務の効率化や新規事業の推進に貢献します。
近年、副業を認める企業が増えており、特にデジタル分野やコンサルティング業界では、副業経験が本業にも活かされています。企業は、プロジェクト単位の雇用やリモートワークを導入し、副業経験者の能力を最大限に活かす体制を整えることが重要です。
まとめ
キャリアブレイクは、個人にとっては成長の機会であり、企業にとっては多様なスキルや視点を取り入れるチャンスとなります。従来のキャリア形成にとらわれず、柔軟な雇用制度や復職支援を整えることで、企業は優秀な人材を確保しやすくなります。
また、アルムナイ採用や副業経験者の活用を進めることで、組織の多様性が高まり、競争力の向上につながります。企業は、キャリアブレイクを前向きに捉え、成長戦略の一環として活用していくべきです。
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