セミナーレポート

360度フィードバックで進化する 人材育成と組織風土改革~SUBARU、SOMPOホールディングス、古河電気工業の実践事例に学ぶ~

2024年10月、360度フィードバックによる人材育成や組織風土の変革についての知見を共有する場として「CBASE SUMMIT 24’」を開催しました。360度フィードバックを活用いただいている企業のご担当者様をお招きし、弊社代表の深井幹雄が各社のリアルな成功事例や課題をお聞きしました。

写真左から、深井幹雄(株式会社シーベース)、近藤小百合様(株式会社SUBARU)、山本健二様(SOMPOホールディングス株式会社)、關俊也様(古河電気工業株式会社)

管理職の「気づき」を生み出し、マネジメントを変革

はじめに、各社の導入時の課題感や活用の目的について伺いました。

2014年に360度フィードバックを導入した株式会社SUBARU(以下、SUBARU)様。導入時の狙いはリーダー層の人財育成とマネジメント機能の強化でした。初めは部長クラスを対象とし、翌年に課長クラスまで展開。5年ほど運用した後、係長クラスへと一気に対象を拡大しました。対象を拡大したのは、若年層にもマネジメントを意識してもらい、育成にスピード感を持たせるため。現在は4,000名を対象に、年1回の頻度で360度フィードバックを行っています。

一方、SOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPO)様は2021年に打ち出したパーパス経営の実現のために、昔ながらのマネジメントスタイルから脱却することを目的として360度フィードバックを導入されました。SOMPO様では会社のパーパスだけでなく、個人の価値観である「MYパーパス」を尊重し育んでいくことを重視しています。会社のパーパスとMYパーパスをうまくつなげるカギとなるのは管理職の意識です。360度フィードバックを通じて、管理職が周囲からの客観的な評価を受け止め、気づきを得ることを狙っています。

古河電気工業株式会社(以下、古河電工)様は、部長・課長層に自身のリーダシップを振り返る機会として360度フィードバックを導入されました。2020年当時、思うように業績が上がらない中、人と組織のあり方を改めて見直した結果、リーダー層のあるべき姿について規定がなかったことに気づいたといいます。そこでリーダーの心得をまとめた「フルカワセブン」を策定。フルカワセブンに即した行動ができているかを振り返る材料として、360度フィードバックを実施しています。

評価のためではなく、あくまで人事施策の1つとして活用

弊社の調査では、360度フィードバックの導入目的のうち人事評価に関するものは全体の4割という結果がありますが、今回登壇いただいた3社ではいずれも人事評価には直接反映させていないとの回答でした。

SUBARU様では、対象の役員・管理職・係長層に、メンバーとの関わりや周囲への働きかけについて360度フィードバックの結果を参考にしてほしいと伝えているそうです。なぜなら上司が部下を評価する場合、成果の評価はしやすいですが、プロセスの部分は見えにくいという課題があるからです。

「マネージャー層が気づきを得て、行動改善され、その結果として組織風土を変えていくことを目的として導入した」というSOMPO様では、「誠実・自律・多様性」の3つの価値観を掲げています。ここでいう「多様性」は多様な意見や想いをお互いに受け止めるという意味ですが、この部分を支える仕組みとして360度フィードバックを取り入れている側面もあるといいます。

古河電工様も、360度フィードバックの結果を人事評価には使用しないことを明確に伝えています。評価に活用するとなると評価する側もされる側も身構えてしまい、現場が混沌としてしまう可能性があるからです。「あくまで上司が自身の気づきを得るためのツール」として360度フィードバックを活用されているとのことでした。

ハラスメントリスクを早期発見し、個人と企業を守る

360度フィードバックの結果から、ハラスメントの予兆が見えたり、傾向がつかめたりすることがあるというアンケート結果もあります。ハラスメントは企業にとっても従業員にとっても大きなリスクとなりますが、ハラスメントをしてしまう側は無意識であることが多く、それ故に改善が難しいのです。

SOMPO様は「強いリーダーシップスタイルに対する部下の受け取り方はさまざま」とした上で、ハラスメントに発展させないために予兆を把握することが重要だといいます。ハラスメント対策の「入り口」は予防のための啓蒙活動であり、「出口」は抑制のための厳罰化ですが、その中間の対策として、問題がありそうな現場を見つけてどのように気づいてもらうか、という観点があります。この部分に360度フィードバックをうまく活用できるかどうかを今後の課題と捉えているそうです。

SUBARU様では、360度フィードバックの「コメント」をリスク発見に役立てているといいます。良い点、課題点の他に第3のコメント欄を設けており、記入した内容は対象者にはフィードバックされません。上司や人事にだけ知ってもらいたいコメントを記入する欄であり、ハラスメントに関することも記入しやすいよう工夫していますが、「対象者の方をもっと労ってほしい」といった優しいコメントが寄せられるケースもあるそうです。

ハラスメントリスクを感じるようなコメントが続いた場合、古河電工様ではHRBP(HRビジネスパートナー)と連携してチェックをしています。また、各事業部門にある企画部門から対象者の上司へ働きかけてもらったり、企画部門と相談した上で人事から上司へ直接働きかけるケースもあるといいます。いずれにしても、直属の上司が本人へ指導をしていくという対応をとっていました。

フィードバックを続けることで変わる「関係の質」

2020年から360度フィードバックを利用されている古河電工様は、エンゲージメントサーベイから「全体的に『関係の質』がずいぶん改善されていることが分かる」といいます。360度フィードバックのコメントにも、「対話が増えている」といった記述が増えているそうです。

一方で、3年、4年と続けている仕組みがマンネリ化してきて「フィードバックの内容が前回とあまり変わらない」という声も。別の施策を紐付けるなど、もう少し刺激を追加していかなければならないと感じているそうです。

SUBARU様においても、「自身のスタイルを振り返って気づきを得て、PDCAサイクルを回して活用している人がいる」としながらも、全体への効果を出すためにはまだ改善の余地があるといいます。SUBARU様では約4,000名を対象者としており、規模が大きいため実際の行動変容につながっているかどうかの後追いが課題になっています。

SOMPO様では、評価する側の習熟度の差をいかにして埋めるかが課題だといいます。若手からベテランまで、幅広いメンバーが回答するため、中には辛辣なコメントが寄せられることも。評価する側に対してどのようなフィードバックが望ましいかを教育し、価値のあるフィードバックがなされるようにしていきたいと考えているそうです。

視聴されている方からの質問

オンラインセミナーの最後には、視聴されている方々から届いた質問に答えていただきました。一部を紹介します。

まず、「自分都合の評価や、感情優位になってしまっている評価が見受けられます。回答者への教育はどのようにされているか、また不適切な評価の扱い方について教えてください」という質問。

3社に共通していたのは、評価を「受け取る側」に対して教育を行っている点でした。SOMPO様ではフィードバックのオリエンテーションを実施しており、古河電工様でも「いろいろな意見が寄せられることや、回答のすべてが事実ではないこと」などを前もって理解してもらうようにしているそうです。SUBARU様においては、回答者数をできるだけ多く確保することで、一部のわがままな回答によって結果が左右されないよう工夫しているとのこと。また、フィードバックに従業員が慣れることで、不適切な評価は自然と減っていくといいます。

「他人の弱みや課題点を指摘することに、難しさや抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか」という質問には、「日本人の気質として確かに遠慮してしまう部分はある」とした上で、だからこそ職場において360度フィードバックが機能するはずだという意見が挙がりました。

古河電工様ではコメント欄に良い点と良くない点を分けて書けるようにしており、総合的に判断してもらうことで前向きな気づきにつながると考えているそうです。また、SOMPO様は360度フィードバックの目的を丁寧にフォローすることで、「必要なもの」だと認識されるようになるとお話いただきました。

3社の皆様のお話から、360度フィードバックの効果を最大限に引き出すためには、運用の工夫や適切なフィードバック体制の構築が欠かせないことが明らかになりました。それとともに、忙しい日々の中であっても気づきを得る機会を持つことがいかに重要か分かるセミナーとなりました。

登壇者

株式会社SUBARU 人事部 人事制度グループ・風土改革グループ 兼務主査 近藤 小百合様
SOMPOホールディングス株式会社 人事部 部長 山本健二様
古河電気工業株式会社 戦略本部 人材・組織開発部 部長 關 俊也様
株式会社シーベース 代表取締役 深井幹雄(モデレーター)

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